キノコ中毒
概要
有毒キノコ摂取による4種類の毒性症候群。最も危険:アマニタ属のアマトキシン含有種(タマゴテングタケ・シロタマゴテングタケ—致死率50〜90%)→電撃性肝不全。その他:ムスカリン型(SLUDGE)・イボテン酸/ムシモール型(CNS)・単純なGI刺激型(症例の大多数)。野生キノコ摂取は常に緊急事態として対処—フィールドでの種同定は信頼できない。
主な症状
※ 症状をクリックすると、その症状を示す犬の他の疾患を確認できます
臨床徴候
犬におけるキノコ中毒の臨床徴候は毒性物質の種類と曝露量により急性〜慢性まで多様。消化器症状(嘔吐・下痢・流涎・腹痛)が最も一般的な初期所見。神経毒では振戦・痙攣・運動失調・昏睡。肝毒では黄疸・凝固障害・肝性脳症。腎毒では乏尿・尿毒症徴候。血液毒では貧血・出血傾向・メトヘモグロビン血症。心血管毒では不整脈・低血圧・ショック。急性曝露では症状発現が迅速で、早期除染と支持療法が予後を決定する。
原因
庭・公園・森林に自生する野生キノコ—犬は匂いに引き寄せられ日和見的に摂取。日本の危険な種:タマゴテングタケ属(アマトキシン)・ツキヨタケ(GI刺激型、しばしば誤同定)・カエンタケ(多毒素含有)・ドクツルタケ。梅雨期・秋にキノコの発生が最多。菌類学者による確認なしに「安全な」野生キノコを同定することは不可。
病態生理
キノコの種類別:(1)アマトキシン型(タマゴテングタケ/シロタマゴテングタケ等):α-アマニチン→RNAポリメラーゼII阻害→肝細胞mRNA合成停止→小葉中心性〜びまん性肝壊死→急性肝不全。発症6〜12時間;肝不全24〜72時間;遅発性GI期6〜24時間。(2)ムスカリン型(イノシビ属・クリトシベ属):ムスカリン→M-AChR作動→SLUDGE徴候(流涎・流涙・排尿・排便・GI症状・嘔吐)+徐脈・縮瞳・気管支痙攣。発症15〜30分;致死的なことは稀。(3)イボテン酸/ムシモール型(ベニテングタケ等):イボテン酸→NMDA作動+ムシモール→GABA-A作動→CNS興奮→抑制・運動失調・けいれん;発症30〜120分。(4)GI刺激型(多数):粘膜直接刺激→嘔吐・下痢のみ;一般的に重篤でない。
診断
病歴聴取でキノコ摂取を確認。種類同定が最重要(写真・残存検体を保存)。肝毒性キノコ(Amanita属): ALT/AST/ALP著増、凝固障害(PT/APTT延長)、低血糖。摂取後6-24時間で症状。神経毒性キノコ(Inocybe/Clitocybe): 流涎、縮瞳、徐脈(ムスカリン症状)→アトロピン。消化器型(多くのキノコ): 嘔吐・下痢、通常6-24時間で自然回復。腎毒性型はBUN/Cre上昇。催吐+支持療法。
治療
アマトキシン型(最優先):消化管除染(アポモルヒネ→活性炭1〜3 g/kg 4〜6時間毎×24〜48h—アマトキシンは腸肝循環を受ける)。解毒剤/肝保護(全てにエビデンスあり):(1)シリビニン(静注製剤—日本未流通;経口シリマリン/ミルクシスル50〜100 mg/kg/日で代用)—肝臓のアマトキシン取り込みを阻害;(2)NAC 140 mg/kg IV負荷→70 mg/kg 6時間毎×7回(グルタチオン補充);(3)ペニシリンG 100,000 IU/kg/日 IV CRI(肝臓へのアマトキシン取り込みと競合);(4)SAMe 20 mg/kg/日 PO。積極的IV輸液(LRS 4〜6 mL/kg/h×48〜72h—強制利尿によるアマトキシン腎排泄促進)。支持療法:制吐薬・GI保護(オメプラゾール)・ブドウ糖CRI・FFP(凝固障害)。ムスカリン型:アトロピン0.04 mg/kg IV or IM(分泌物の乾燥を目標に調整—心拍数ではなく)。気管支痙攣に酸素/気管支拡張薬。CNS型(イボテン酸/ムシモール):ジアゼパム0.5〜1 mg/kg IV(けいれん);支持療法。GI刺激型:制吐薬・輸液・スクラルファート—通常12〜24時間で解消。
予防
庭・裏庭の野生キノコを定期的に除去。キノコが多い地域ではリードで管理。「置いて」コマンドのトレーニング。摂取したキノコの残留物(または写真)を獣医師に持参(廃棄しない)—種同定が治療を変える。最重要:民間の識別法(指輪・笠の色・加熱時の臭い)に頼らない—致死的なタマゴテングタケは食用種と酷似する。
予後
アマトキシン型(未治療):致死率50〜90%。積極的治療(活性炭+NAC+シリマリン+ペニシリン+強制利尿):特に肝不全前(最初の6〜12時間以内)に治療できれば生存可能。肝回復に数週間かかる場合あり;慢性肝線維症に移行する例もある。ムスカリン型:アトロピンで優良。CNS型:支持療法で良好。GI刺激型:優良。重要原則:未同定の野生キノコ摂取は全てアマトキシン含有として対処すること—過剰治療のコストは低く、アマトキシン中毒の過少治療コストは致命的。
関連する薬品
※ 薬品名をクリックすると詳細な投与量・副作用情報を確認できます
消化器の他の疾患(犬)
VetDictで犬の鑑別診断を行う
症状チェッカーを使う関連する疾患
VetDict は獣医師(DVM)が開発した臨床支援ツールです。