炎症性腸疾患(IBD)
概要
消化管の慢性炎症により、持続する消化器症状を引き起こします。
主な症状
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臨床徴候
犬における炎症性腸疾患(IBD)の臨床徴候は消化管病変の部位と病態により異なる。上部消化管: 嘔吐・吐血・食欲不振。小腸: 下痢(小腸性: 量多・回数少・体重減少を伴う)・嘔吐・腹痛。大腸: 下痢(大腸性: 量少・回数多・粘液・血便・テネスムス)。急性腹症: 強い腹痛・嘔吐・ショック徴候・腹部触診で腫瘤や緊張感(GDV・腸捻転・腸閉塞)は緊急評価が必要。
原因
正確な原因は不明。遺伝的素因・腸内細菌叢異常・食物抗原に対する免疫異常が複合。確定診断には内視鏡生検が必須(リンパ腫との鑑別が重要)。好発:ジャーマンシェパード、バセンジー、シャーペイ。
病態生理
腸管粘膜の免疫調節障害→常在腸内細菌叢に対する過剰な免疫応答→リンパ球・形質細胞浸潤(リンパ球形質細胞性が最多)→粘膜障害・絨毛萎縮→吸収不良。蛋白漏出性腸症(PLE)を合併する場合は低アルブミン血症。
診断
犬のIBD診断は内視鏡下消化管生検による病理組織診断で確定する。WSAVA基準に準拠した組織学的評価。診断前の除外: 糞便検査(寄生虫)、食事反応性腸症(除去食試験2-4週間)、抗菌薬反応性腸症(チロシン/メトロニダゾール試験)。血液検査: 低アルブミン血症(蛋白漏出性腸症 — PLE)、コバラミン低値(回腸吸収不良)、葉酸低値(近位小腸障害)。腹部超音波: 腸壁肥厚、層構造の消失、腸管リンパ節腫大。内視鏡: 上部消化管内視鏡+回腸鏡+大腸鏡で多部位生検(各部位6検体以上)。組織型分類: リンパ球形質細胞性(最多)、好酸球性、肉芽腫性。CCECAI/CIBDAIスコアリングで臨床活動性評価。腸管リンパ腫との鑑別: クローナリティ検査(PARR)、免疫組織化学が重要。
治療
【段階的治療】第1段階:食事療法(新奇蛋白食/加水分解蛋白食×6-8週)。サイリウム 1-2 tsp/10kg/食 — 短鎖脂肪酸で粘膜修復促進。第2段階:メトロニダゾール 10-15 mg/kg PO q12h(免疫調節+抗菌)。第3段階:プレドニゾロン 1-2 mg/kg PO q12h→8-12週漸減。ブデソニド 3 mg/m2 PO q24h(局所作用、全身性副作用少)。難治例:クロラムブシル 4-6 mg/m2 PO q14d、アザチオプリン 2 mg/kg PO q24-48h、シクロスポリン 5 mg/kg PO q12h。【プロバイオティクス】E. faecium SF68(FortiFlora)、S. boulardii、FOS・MOS。【コバラミン】低値時は250-1500 μg SC q7d。FMT(糞便移植)も検討。
予防
確実な予防法はないが、良質な消化性の高い食事、プロバイオティクス・プレバイオティクス、ストレス軽減が有用。サイリウム(Psyllium)の定期投与も腸管健康維持に寄与。
予後
適切な管理で予後良好。生涯の食事管理が通常必要。PLEへの進展に注意。CCECAI/CIBDAIスコアで治療反応を評価。
関連する薬品
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