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犬 (Dog) 感染症 緊急

誤嚥性肺炎

Aspiration Pneumonia / 誤嚥性肺炎

概要

口咽頭分泌物・胃内容物・食物の下気道への誤嚥による肺炎症および感染。高リスク疾患:巨大食道症(犬での最多原因)、喉頭麻痺、麻酔/鎮静、嘔吐、経鼻胃管の誤挿入、強制給餌、咽頭機能障害(重症筋無力症・多発性筋炎)。短頭種が高リスク。腹側肺葉が主に侵される(重力依存性)。細菌性肺炎・肺膿瘍・ARDS・敗血症に進行しうる。ARDS(急性呼吸窮迫症候群)が最重症合併症。

主な症状

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臨床徴候

犬における誤嚥性肺炎の臨床徴候は感染部位と病原体特性により多様だが、共通所見として発熱・元気消失・食欲不振・体重減少が認められる。局所感染では発赤・腫脹・疼痛・排膿を、全身感染では脱水・敗血症・多臓器不全に進展しうる。 呼吸器症状(咳・くしゃみ・鼻汁・呼吸困難)が前景となり、進行例では肺炎徴候を呈する。幼若・高齢・免疫抑制状態は重症化リスクが高く、早期介入が予後改善に直結する。

原因

巨大食道症(犬で最多)、喉頭麻痺、麻酔/鎮静、繰り返す嘔吐、強制給餌、咽頭機能障害(重症筋無力症・多発性筋炎)。短頭種が高リスク。

病態生理

下気道への誤嚥が2つの重複した傷害機序を引き起こす:(1)化学性肺炎(早期、数分〜数時間以内):胃酸(pH<2.5が最も有害)または口咽頭分泌物が気管支上皮・肺胞上皮(II型肺細胞)に直接化学的傷害→サーファクタント破壊→肺胞虚脱→V/Qミスマッチ→低酸素血症。ペプシン・胆汁酸塩が化学的傷害を増幅。固体誤嚥(食物)→気道閉塞+異物反応。(2)細菌性肺炎(二次性、誤嚥後12〜24時間):化学的傷害を受けた粘膜への口腔内常在菌(混合グラム陰性:E. coli・緑膿菌・クレブシエラ;グラム陽性:連鎖球菌・ブドウ球菌;嫌気性菌:バクテロイデス・フゾバクテリウム)定着→好中球性炎症→化膿性肺胞滲出液→肺実変。重症例:ARDSへの移行(IL-1・IL-6・TNF-α・好中球脱顆粒による汎発性肺胞傷害→非心原性肺水腫→難治性低酸素血症)。

診断

犬の誤嚥性肺炎の診断は胸部X線と臨床歴に基づく。胸部X線: 右中葉・右前葉の腹側に好発する肺胞パターン(重力依存性分布)。誤嚥のリスク因子の確認: 嘔吐歴、全身麻酔後、巨大食道症、喉頭麻痺、口蓋裂、経管栄養。気管洗浄液: 好中球増多、細菌の細胞内貪食、植物性異物(aspiration material)の検出。培養・感受性試験。CBC: 好中球増多・左方移動(または好中球減少 — 重症敗血症)。パルスオキシメトリー: SpO2モニタリング。鑑別: 細菌性肺炎(非誤嚥性)、心原性肺水腫。基礎疾患の検索: 食道疾患(造影X線/透視)、喉頭機能(喉頭鏡)、重症筋無力症(AChR抗体)。

治療

緊急処置:(1)酸素療法:フロービーまたは酸素ケージ(目標SpO2>95%);鼻カテーテルO2 50〜100 mL/kg/分;重篤:高流量経鼻O2または機械的換気(ARDS)。(2)体位:頭部を15〜30°挙上(再誤嚥リスク低減)。(3)上気道の吸引。(4)気管支拡張薬:アミノフィリン5〜10 mg/kg IV緩徐またはテルブタリン0.01 mg/kg SC。(5)抗菌薬(必須):アンピシリン-スルバクタム20〜40 mg/kg IV 8時間毎+エンロフロキサシン5 mg/kg IV 24時間毎+メトロニダゾール15 mg/kg IV 8時間毎(嫌気性菌カバー);BAL培養に基づき調整;4〜6週間継続(肺実変は長期治療を要する)。(6)輸液:過剰輸液回避(ARDSリスク)。(7)ネブライザー療法:生理食塩水10〜15分 6〜8時間毎+クーパージュ。(8)基礎疾患の治療:巨大食道症→直立給餌;喉頭麻痺→披裂軟骨外側化手術;重症筋無力症→ピリドスチグミン。急性期のグルコルチコイドは禁忌(感染リスク増加)。

予防

基礎疾患の管理(巨大食道症:ベイリーチェアによる直立給餌;喉頭麻痺:外科的矯正)。臥位または鎮静中の患者への強制給餌を避ける。麻酔回復時の頭部挙上。内視鏡/処置前の嚥下障害スクリーニング。

予後

軽症誤嚥性化学性肺炎:治療で予後良好(1〜2週で回復)。細菌性肺炎:軽症〜中等症で良好(3〜6週の抗菌薬治療)。ARDS:予後不良(機械的換気でも死亡率30〜50%)。基礎疾患(巨大食道症・喉頭麻痺)は再発リスクがあり、巨大食道症では再発性誤嚥性肺炎が主要死因。

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