犬ジステンパー
概要
犬ジステンパーウイルス(CDV、パラミクソウイルス科モルビリウイルス属)による多臓器感染症。二相性発熱を示し、呼吸器→消化器→神経系と段階的に進行。ワクチン未接種の3〜6ヶ月齢子犬で致死率が最も高い。フェレット・アライグマ・キツネにも感染。神経症状は急性期回復後、数週〜数ヶ月後に出現することがある。
主な症状
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臨床徴候
犬ジステンパーの臨床徴候は感染部位と病原体特性により多様だが、共通所見として発熱・元気消失・食欲不振・体重減少が認められる。局所感染では発赤・腫脹・疼痛・排膿を、全身感染では脱水・敗血症・多臓器不全に進展しうる。幼若・高齢・免疫抑制状態は重症化リスクが高く、早期介入が予後改善に直結する。
原因
犬ジステンパーウイルス(CDV)。飛沫感染・直接接触で伝播。ワクチン未接種犬、免疫不全犬、3〜6ヶ月齢の子犬が高リスク。フェレット等の野生動物も感受性あり。
病態生理
CDVは飛沫感染後、扁桃/咽頭リンパ節で初期増殖→1次ウイルス血症(2〜4日目)→脾臓・リンパ節・骨髄での複製→高度なリンパ球減少(免疫抑制)。2次ウイルス血症(7〜14日目):ヘマグルチニン(H)がSLAM/CD150受容体(免疫細胞)とネクチン4(上皮細胞)に結合し上皮細胞に播種。神経期:感染リンパ球がBBBを通過→オリゴデンドロサイト感染→脱髄→多巣性脳脊髄炎。病理学的特徴:アストロサイト・神経細胞内の核内および細胞質内封入体。
診断
犬ジステンパーの診断はPCR検査と臨床所見の組み合わせに基づく。結膜スワブ・尿沈渣・CSFからのRT-PCR検査が確定診断の標準。血清学: IgM抗体(急性期マーカー、感染後1-3週で陽性)。ワクチン接種歴がある場合はIgM/IgGペア血清で4倍以上の抗体価上昇を確認。CBC: リンパ球減少(初期)、好中球減少。CSF分析: 蛋白上昇・単核球性細胞増多(脳炎期)。胸部X線: 間質性肺炎パターン。封入体検出: リンパ球・赤血球内のウイルス封入体(Lentz小体)は特異的だが感度低い。MRI: 脱髄性病変(T2高信号)。臨床的三相: 呼吸器症状→消化器症状→神経症状(ミオクローヌス、てんかん発作、小脳失調)の進行パターン。
治療
特異的抗ウイルス薬なし。支持療法が主軸。(1)二次性細菌性肺炎:アンピシリン22 mg/kg IV 8時間毎+エンロフロキサシン5〜10 mg/kg IV 24時間毎。(2)ネブライザー+クーパージュ。(3)輸液+マロピタント1 mg/kg IV 24時間毎。(4)神経症状:フェノバルビタール2〜4 mg/kg PO/IV 12時間毎;急性発作にジアゼパム0.5 mg/kg IV;神経炎症抑制にプレドニゾロン0.5〜1 mg/kg/日(論議あり)。(5)リバビリン(オフラベル実験的)10 mg/kg PO 8時間毎。(6)N-アセチルシステイン70 mg/kg IV 6時間毎(粘液溶解・肝保護)。(7)眼:人工涙液+局所抗菌薬。(8)食欲廃絶48時間超:経鼻チューブ栄養。
予防
コアワクチン(MLV CDVワクチン)を子犬期に3回接種後、1歳時追加接種、以後3年毎。感染犬との接触遮断。CDV流行地域での野生動物との接触回避。
予後
呼吸器・消化器症状のみの場合は予後比較的良好。神経症状出現後は予後不良〜絶望的(回復50%のみ、後遺症多数)。老犬ジステンパー脳炎は不可逆的に致死的。急性期回復後も神経症状が後発する可能性あり。重篤な進行性神経疾患では安楽死を検討。
関連する薬品
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