蛋白漏出性腸症(PLE)
概要
腸管からの重度のタンパク質喪失で、低アルブミン血症・浮腫・胸腹水を引き起こします。
主な症状
原因
腸リンパ管拡張症(最多、ヨークシャーテリアに好発)、IBD(リンパ球形質細胞性腸炎)、腸管リンパ腫。好発犬種:ヨークシャーテリア、ソフトコーテッドウィートンテリア、ノルウェージャンルンデフンド。確定診断には内視鏡生検が必要。
病態生理
腸管粘膜のリンパ管・毛細血管からのアルブミン・グロブリン漏出→低アルブミン血症(<2.0g/dL)→膠質浸透圧低下→腹水・胸水・末梢浮腫。腸リンパ管拡張症(最多)、IBD、腸管リンパ腫が基礎疾患。低Ca血症(アルブミン結合Ca喪失)、低コレステロール血症、リンパ球減少を伴うことが多い。血栓塞栓症のリスク(アンチトロンビンIII喪失)。
治療
【食事療法(治療の基盤)】超低脂肪食が最重要(脂肪<15% DM、理想は<10%)。処方食:Hill's i/d Low Fat、Royal Canin Gastrointestinal Low Fat。加水分解蛋白食(Hill's z/d)も選択肢。手作り食の場合は栄養士と連携。MCT(中鎖脂肪酸)オイル 1 mL/5kg PO q24h — リンパ管を経由せず直接門脈吸収でリンパ管負荷を軽減。サイリウム(Psyllium/オオバコ)1-2 tsp/10kg/食 — 水溶性食物繊維として大腸で短鎖脂肪酸に発酵、腸管バリア機能の維持に寄与。 【プロバイオティクス・プレバイオティクス】プロバイオティクス:E. faecium SF68(FortiFlora)、S. boulardii。プレバイオティクス:FOS、MOS — 腸内細菌叢の正常化支援。 【免疫抑制療法】プレドニゾロン(2 mg/kg PO q24h→反応後漸減)。クロラムブシル(4 mg/m2 PO q48h)またはシクロスポリン(5 mg/kg PO q12h)。ブデソニド(3 mg/m2 PO q24h)— ステロイド代替。 【重度低アルブミン血症(<1.5 g/dL)の管理】血漿輸血/人工膠質液。血栓予防(アンチトロンビンIII喪失による血栓塞栓リスク):クロピドグレル 2 mg/kg PO q24h+低分子ヘパリン。低Ca血症の補正(アルブミン結合Ca喪失)。 【コバラミン補充】250-1500 μg SC q7d。 【診断】内視鏡+全層生検で鑑別:腸リンパ管拡張症(最多)、IBD(リンパ球形質細胞性)、腸管リンパ腫。血清アルブミン、Ca、コレステロール、リンパ球数が診断補助。好発:ヨークシャーテリア、ソフトコーテッドウィートンテリア、ノルウェージャンルンデフンド。予後:食事反応例は良好。重度低アルブミン血症(<1.5 g/dL)は予後不良。アルブミン反応が最良の予後指標。参考文献: Dossin & Lavoue (2011) Vet Clin North Am, Simmerson (2014) JVIM.
予防
確実な予防法はない。好発犬種の定期的な血液検査(アルブミン値)。低脂肪食が腸リンパ管拡張症の管理に有効。
予後
予後は原疾患の種類、重症度、合併症の有無、治療開始の時期に依存する。急性胃腸炎の多くは支持療法により良好な転帰を示す。消化管閉塞や捻転では緊急外科手術の成否が予後を決定する。炎症性腸疾患など慢性消化器疾患は長期的な食事管理と薬物療法により良好にコントロールできるが、寛解と再燃を繰り返す場合がある。早期の栄養サポートが回復促進に重要である。
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