バベシア症
概要
マダニ媒介性の赤血球内原虫感染症。犬の原因種:Babesia canis(ヨーロッパ--Dermacentorマダニ)、B. gibsoni(アジア・地中海--Haemaphysalisマダニ)、B. vogeli(熱帯/亜熱帯--Rhipicepalus)、B. conradae(米西部)、B. rossi(アフリカ--最も病原性強い)。日本:B. gibsoniが主病原(Haemaphysalis longicornisマダニ媒介;咬傷・輸血・胎盤経由での犬間伝播も)。好発品種:アメリカン・ピット・ブル・テリア・スタッフォードシャー・ブル・テリア(B. gibsoni--咬傷伝播)。臨床スペクトラム:無症状キャリアから重篤な溶血性クリシス・多臓器不全まで。典型的発症:急性溶血性貧血・発熱・脾腫・ヘモグロビン尿(赤/褐色尿)。合併症:IMHA様・DIC・急性腎障害・SIRS。
主な症状
原因
バベシア原虫(マダニ媒介)。日本ではB. gibsoniがHaemaphysalis longicornisマダニと犬の咬傷(ピット・ブル型品種)で伝播。B. vogeliは世界的にRhipicephalus sanguineus(コイタマダニ)で媒介。直接伝播:闘犬での咬傷(B. gibsoni)・輸血・胎盤経由(B. gibsoniで記録あり)。
病態生理
マダニ吸血中にバベシアスポロゾイトが注入(B. canisの伝播には>24時間の吸着が必要;B. gibsoniは咬傷でより速く伝播)。赤血球内サイクル:メロゾイトが赤血球に侵入→栄養体が赤血球内で二分裂→メロゾイト四分体(マルタ十字または対状梨形体)形成→赤血球破裂→新たなメロゾイトが放出され新赤血球に再感染。溶血の機序:(1)血管内:寄生虫による赤血球膜の直接破壊→ヘモグロビン遊離→ヘモグロビン血症+ヘモグロビン尿症;(2)血管外:寄生虫抗原+宿主免疫グロブリンによる感染赤血球のオプソニン化→脾臓/肝臓でのマクロファージ食作用;(3)免疫介在性成分:B. gibsoni感染で抗赤血球抗体誘導(症例の50〜80%でクームス試験陽性)--寄生虫感染に重なった真のIMHA--抗寄生虫薬単独での治療難治性の説明。脾腫:脾臓が赤血球食作用と髄外造血の主要部位。重症疾患:サイトカインストーム(TNF-alpha・IL-1・IL-6)→血管内皮傷害→SIRS→DIC→多臓器不全。脳バベシア症(B. rossi/canis):脳微小血管での赤血球鬱滞→大脳低酸素→発作・昏睡。
治療
B. gibsoni(日本)--最重要:(1)アトバコン13.3 mg/kg PO q8h(食事と同時--脂肪が吸収促進;B. gibsoniの第一選択--寄生虫のシトクロムbc1複合体阻害)+アジスロマイシン10 mg/kg PO q24h×10日(相乗効果)。この組み合わせで約50〜70%がPCR陰性化(再発多い--月1回のPCRモニタリング推奨)。(2)代替(アトバコン入手困難時):イミドカルブ5.0〜6.6 mg/kg IMまたはSC、14日後に反復(B. canisに最も有効;コリン作動性副作用予防のためアトロピン0.05 mg/kg SC前投薬)。(3)クリンダマイシン12.5 mg/kg PO q12h×7〜10日(B. gibsoniへの補助療法)。B. canis(ヨーロッパ):イミドカルブ6.6 mg/kg SC単回で治癒することが多い。支持療法:PCV<15%または急性溶血クリシスに輸血(新鮮全血または濃厚赤血球10〜15 mL/kg);輸液(LRS);IMHA成分(クームス陽性)にはプレドニゾロン1〜2 mg/kg/日(抗寄生虫薬開始後に投与);DICにはFFP+ヘパリン;エールリヒア重複感染にドキシサイクリン;月1回イソオキサゾリン系ノミマダニ駆除薬。 [ECVN:Block] 【補助療法オプション — Equine & Canine Vet Nutrition (caninevet.jp)】 • For Antioxidant (アスタキサンチン+SOD+VitE+システイン): 抗酸化・慢性疾患免疫サポート • NMNミトコンドリアアシスト (NMN+α-リポ酸+システイン+プロバイオティクス): 細胞エネルギー代謝・サーチュイン活性化・抗老化 • Booster & Relax (アダプトゲン+Bビタミン複合体): ウイルス後回復・内分泌疾患エネルギー補給・高齢期慢性疲労
予防
通年マダニ予防(月1回イソオキサゾリン系--フルラネル/サロラネル;屋外犬にはパーメトリン外用)。マダニ生息地への立ち入り回避。輸血ドナーのPCRスクリーニング。闘犬防止。去勢手術(徘徊防止)。繁殖犬の検査(胎盤経由伝播)。
予後
B. canis+イミドカルブ:>90%の臨床的治癒(PCR陽性が持続するキャリア状態は残存)。B. gibsoni+アトバコン/アジスロマイシン:50〜70%がPCR陰性化(再発多い;長期キャリア状態)。重症(脳バベシア・DIC・AKI):治療にもかかわらず死亡率20〜50%。治療後クームス陽性犬:ストレス/免疫抑制で再発リスク。治療後1・3・6ヶ月のPCRモニタリング推奨。
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