胸水貯留
概要
胸膜腔への液体貯留による呼吸障害。液体種類:漏出液(純粋:CHF、低アルブミン血症;修飾:乳び胸、腫瘍)、滲出液(膿胸、腫瘍、FIP)、血性(外傷、凝固障害、血胸、HSA破裂)、乳び(胸管損傷または胸リンパ管閉塞)。両側性胸水は通常全身性原因(CHF・低アルブミン血症・腫瘍)を示唆。片側性:感染(膿胸)・外傷・腫瘍。呼吸困難があれば診断より先に胸腔穿刺--緊急処置。
主な症状
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臨床徴候
犬における胸水貯留の臨床徴候は気道閉塞・換気障害の部位により異なる。上気道: いびき・吸気性ストライダー・運動不耐性・吸気性チアノーゼ(短頭種気道症候群)。気管: 短く乾性の発作的咳(gander-honk)・ストライダー(気管虚脱)。下気道: 慢性咳・呼気性呼吸困難・喘鳴・換気不全(喘息・COPD様病態)。突発的悪化はストレス・運動・気温変化で誘発される。
原因
CHF(左心性または両心性--最多原因)、低アルブミン血症(肝不全・PLE・ネフローゼ症候群)、膿胸(ノカルジア・アクチノミセス・大腸菌・バクテロイデス)、腫瘍(リンパ腫・HSA・中皮腫・原発性肺腫瘍)、乳び胸(胸管破裂・リンパ管拡張症・縦隔腫瘤・心疾患)、血胸(外傷・凝固障害・HSA破裂)、横隔膜ヘルニア。
病態生理
正常胸膜腔は1〜5 mLの液体--Starling力(静水圧vs膠質浸透圧バランス)とリンパ排液で維持。過剰液体貯留の機序:(1)静水圧増加(CHF--肺静脈圧上昇→肺毛細管/臓側胸膜からの液体漏出);(2)膠質浸透圧低下(低アルブミン血症<1.5 g/dL);(3)毛細管/リンパ管透過性亢進(炎症/感染--膿胸;腫瘍性滲出);(4)リンパ管閉塞(胸管損傷→乳び胸--トリグリセリド豊富な乳白色液体;縦隔腫瘍によるリンパ管圧迫);(5)直接出血(血胸:外傷・凝固障害・HSA破裂)。呼吸障害:液体が肺を圧迫→無気肺→V/Qミスマッチ→低酸素血症。大量胸水では縦隔偏位・気管偏位・奇異呼吸。乳び胸:慢性的な乳糜の胸腔内貯留→慢性リンパ球性胸膜炎→胸膜線維症・肺拘束--長期的合併症。膿胸:化膿性炎症→フィブリン性滲出→胸膜被覆形成→積極的なドレナージが必要。
診断
犬の胸水の診断は胸部X線と胸水分析に基づく。胸部X線: 肺葉間裂の液体ライン、肺野の不透明化(腹側/横隔膜面)、心陰影の不明瞭化。立位DV像で少量胸水も検出可能。胸部超音波: 胸水の検出感度が最も高い、穿刺部位のガイド、心嚢水との鑑別。胸水穿刺・分析: 比重、TP、有核細胞数、細胞診、培養。分類: 漏出液(TP<2.5)、変性漏出液、滲出液(TP>3.0、細胞>5,000/μL)、膿胸、乳び胸。乳び胸: TG>100 mg/dL、コレステロール/TG比<1。膿胸: 変性好中球、細菌。血胸: PCV>25%。原因検索: 心エコー(心不全)、胸部CT(腫瘍、リンパ管異常)、腹部超音波。心不全が犬の胸水の最多原因。
治療
緊急:重篤な呼吸困難では胸部X線より先に胸腔穿刺。(1)体位:胸骨臥位または立位(横臥は無気肺悪化)。(2)胸腔穿刺:第7〜9肋間腔、腹側1/3、18〜20Gバタフライカテーテルまたは静脈留置針;両側貯留は両側穿刺;抵抗が生じるまで排液。(3)処置中酸素補給。(4)液体検査:TP・アルブミン・トリグリセリド・細胞診・培養感受性試験。液体分類:純粋漏出(TP<2.5 g/dL:CHF・低アルブミン);修飾漏出(TP 2.5〜5 g/dL:CHF初期・乳び・腫瘍);滲出液(TP>3 g/dL:膿胸・腫瘍);乳び(TG>100 mg/dL;乳白色:胸管損傷・心疾患)。基礎疾患治療:CHFにはフロセミド+ピモベンダン;膿胸には胸腔チューブ洗浄+IV抗菌薬4〜6週間;乳び胸には低脂肪食+ルチン、外科的胸管結紮;腫瘍には種類別化学療法。
予防
素因となる疾患(心疾患・タンパク喪失性疾患)の管理。胸部外傷の回避。
予後
基礎疾患により大きく異なる。CHF関連:適切な心臓管理で良好(数ヶ月〜数年)。膿胸:積極的治療で良好(生存率80〜90%)。乳び胸:外科治療で50〜65%が改善;内科的管理のみでは再発多い。腫瘍性:多様(リンパ腫は化学療法で良好反応;中皮腫は不良);HSA関連:不良(急速に致死的)。
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