巨大食道症
概要
食道の拡張と運動機能低下により、吐き戻しと誤嚥のリスクが生じます。
主な症状
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臨床徴候
犬における巨大食道症の臨床徴候は罹患臓器と腫瘍の種類により多様。一般的所見: 進行性の腫瘤形成・体重減少・食欲不振・元気消失・貧血。体表腫瘤では触知可能な腫脹・疼痛を、内臓腫瘍では腹部膨満・嘔吐・下痢・呼吸困難・リンパ節腫大などの非特異的症状を呈する。傍腫瘍症候群として高カルシウム血症(リンパ腫・肛門周囲腺癌)や低血糖(インスリノーマ)を合併することがある。
原因
先天性(ワイヤーヘアードフォックステリア・ミニチュアシュナウザーで遺伝性、ジャーマンシェパード・グレートデーンに好発)。後天性:特発性(最多)、重症筋無力症(最も重要な鑑別)、甲状腺機能低下症、アジソン病、鉛中毒、食道炎後。
病態生理
食道の蠕動運動障害→食道の全般的拡張→食物の口腔側への逆流(吐出、regurgitation:嘔吐と異なり腹部の収縮を伴わない受動的排出)→誤嚥性肺炎(最も重大な合併症、主要な死因)。先天性(食道壁の神経叢発育不全)と後天性(重症筋無力症・甲状腺機能低下症・アジソン病等)に分類。
診断
犬の巨大食道症の診断は胸部X線検査で行う。単純X線: 食道のガス・液体・食物による拡張(側面像で気管背側に食道影、VD像で気管両側の拡張影)。造影X線(バリウム嚥下): 食道の運動性評価、食道狭窄・異物の除外。透視検査: 蠕動運動の動的評価。先天性(ミニチュアシュナウザー、ワイヤーフォックステリア、GSD、GSP — 4ヶ月齢前後に離乳食開始で発症)vs 後天性の鑑別。後天性の基礎疾患検索: 重症筋無力症(AChR抗体 — 最重要)、甲状腺機能低下症(T4/TSH)、アジソン病(ACTH刺激試験)、鉛中毒。AChR抗体陽性は後天性巨大食道症の25-40%。誤嚥性肺炎の合併評価(胸部X線で腹側肺野の陰影)。
治療
根治療法はなく管理が中心。直立位給餌(Bailey chair — 食後10-15分間直立位維持)が誤嚥性肺炎予防の最重要。食事形態の工夫:個体により最適な粘度が異なるため、液体/粥状/ミートボール状/固形を試す。少量頻回給餌(1日3-4回)。制吐薬:メトクロプラミド(0.2-0.5 mg/kg PO q8h)で食道運動促進。シルデナフィル(1 mg/kg PO q12h)がLES弛緩に有効との報告あり。基礎疾患の治療:重症筋無力症(ピリドスチグミン0.5-3 mg/kg PO q12h)、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能低下症。誤嚥性肺炎は最大の合併症 — 早期抗菌薬治療が重要。胃瘻チューブは重症例の栄養管理に。
予防
確実な予防法はない。後天性の場合は基礎疾患(重症筋無力症・甲状腺機能低下症)の検索と治療が必須。管理:立位給餌(Bailey chair、食後10〜15分保持)、高カロリー流動食、誤嚥性肺炎の早期発見・治療。
予後
予後は原因に依存する。先天性の一部は12-18ヶ月齢までに自然改善するが、多くは持続。MG関連は免疫抑制療法(ピリドスチグミン1-3 mg/kg PO q8-12h + 必要時プレドニゾロン)で改善可能。特発性MEは治癒困難で長期管理が必要:直立位給餌(Bailey chair)、少量頻回給餌、高カロリーミートボール食。誤嚥性肺炎の予防が生存期間の最大決定因子。全体の中央生存期間は約90日だが、適切な管理で数年の生存も可能 (Shelton GD. Vet Clin North Am Small Anim Pract 2002;32:765-787)。
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