犬ヘルペスウイルス感染症
概要
新生子犬に致死的な出血性疾患を引き起こし、成犬では呼吸器・生殖器症状を示すウイルス感染症です。
主な症状
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臨床徴候
犬ヘルペスウイルス感染症の臨床徴候は感染部位と病原体特性により多様だが、共通所見として発熱・元気消失・食欲不振・体重減少が認められる。局所感染では発赤・腫脹・疼痛・排膿を、全身感染では脱水・敗血症・多臓器不全に進展しうる。幼若・高齢・免疫抑制状態は重症化リスクが高く、早期介入が予後改善に直結する。
原因
犬ヘルペスウイルス1型(CHV-1)。成犬間では性交・鼻汁による接触伝播。新生子犬は産道・母乳・同居犬から感染。成犬の感染率は高い(血清陽性率40〜100%)が臨床症状は稀。繁殖犬舎での新生子犬の連続死亡(fading puppy syndrome)で疑う。
病態生理
新生子犬(<3週齢):CHV-1の全身感染→多臓器(腎臓・肝臓・肺・脾臓)の出血性壊死→致死率ほぼ100%。低体温がウイルス増殖を促進(体温<37℃で最適複製)。成犬:上気道・生殖器の潜伏感染→軽度の鼻汁・陰部水疱のみ。妊娠犬の一次感染→流産・死産。
診断
新生子犬(<3週齢)の突然の衰弱、鳴き声、低体温、出血性下痢、無乳で疑診。剖検で腎臓・肝臓・肺の点状出血・壊死巣が特徴的。PCR(口腔・鼻腔スワブ、臓器)で確定。血清学: VN法で母犬の抗体価測定(感染歴確認)。成犬では不顕性~軽度上気道症状。妊娠犬の感染は流産・死産・胎児奇形の原因。成犬の潜伏感染は三叉神経節に持続。繁殖犬舎での新生子致死率は極めて高い(無治療で80-100%)。
治療
犬における犬ヘルペスウイルス感染症の治療: 特異的抗ウイルス薬は限定的—支持療法と二次感染予防が中心。① 輸液療法: 等張晶質液 60-80 mL/kg/日 IV(脱水補正+維持)。重症は90 mL/kg初期ボーラス。② 制吐剤(消化器症状時): マロピタント 1 mg/kg IV/SC q24h、オンダンセトロン 0.5 mg/kg IV q8h。③ 二次性細菌感染予防: アモキシシリン/クラブラン酸 12.5-25 mg/kg PO q12h、または ドキシサイクリン 5-10 mg/kg PO q12h(呼吸器症状時)。④ 食欲増進: カプロモレリン 3 mg/kg PO q24h、ミルタザピン 0.6 mg/kg PO q24h。⑤ 隔離(感染力が消失するまで)、ケージ消毒(次亜塩素酸1:32、エンベロープウイルスはエタノール70%でも可)。⑥ ワクチン未接種個体の同居動物にはコアワクチン接種を検討。AAHA/AAFP Vaccination Guidelines参照。
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予防
妊娠犬のワクチン接種(ヨーロッパではEurican Herpes 205が使用可、日本未承認)、新生子犬の環境温度管理(30〜32℃に維持→ウイルス複製を抑制)、分娩前3週間の母犬の他犬との接触制限。
予後
新生子犬(<3週齢)の全身性CHV感染は予後きわめて不良で致死率80-100%。治療は保温(38-39°C環境維持でウイルス増殖を抑制)と支持療法が中心。抗ウイルス薬(アシクロビル)の使用報告はあるが有効性は確立されていない。3週齢以降の感染は多くが無症候〜軽症で予後良好。成犬の潜伏感染は排除不能で、ストレス時に再活性化→ウイルス排出する。ヨーロッパではCHVワクチン(Eurican Herpes 205)が妊娠犬に使用可能 (Decaro N et al. Vet Microbiol 2008;127:1-18)。
関連する薬品
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