犬パルボウイルス感染症
概要
犬パルボウイルス2型(CPV-2)による高伝染性のウイルス疾患。腸管上皮の急速に分裂する細胞を標的とし、重度の出血性腸炎を引き起こす。ワクチン未接種の子犬(6週〜6ヶ月齢)で最も致死率が高い。ロットワイラー、ドーベルマン、アメリカン・ピット・ブル・テリアは品種感受性が高い。ウイルスは環境中に数ヶ月〜1年以上生存し、次亜塩素酸(1:32希釈)での消毒が必要。
主な症状
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臨床徴候
犬パルボウイルス感染症の臨床徴候は感染部位と病原体特性により多様だが、共通所見として発熱・元気消失・食欲不振・体重減少が認められる。局所感染では発赤・腫脹・疼痛・排膿を、全身感染では脱水・敗血症・多臓器不全に進展しうる。幼若・高齢・免疫抑制状態は重症化リスクが高く、早期介入が予後改善に直結する。
原因
犬パルボウイルス2型(CPV-2a, 2b, 2c亜型)。糞口経路で感染し、環境中で数ヶ月〜1年以上生存可能。ワクチン未接種、母体移行抗体の低下期、免疫抑制状態、過密環境(シェルターなど)が高リスク因子。
病態生理
CPV-2はトランスフェリン受容体1(TfR1)を介して急速分裂細胞に結合。口咽頭リンパ節での初期増殖→1〜5日目にウイルス血症→腸管陰窩上皮と骨髄への播種。陰窩破壊により絨毛構造が崩壊し:(1)吸収不良・分泌性下痢;(2)粘膜バリア消失→細菌転座(グラム陰性腸内細菌)→エンドトキシン血症→全身炎症反応症候群。骨髄抑制による白血球減少(リンパ球減少→好中球減少)が細菌排除を障害。タンパク漏出性腸症→低アルブミン血症→第三腔への水分貯留。嘔吐・下痢による低カリウム血症が腸管麻痺・不整脈を誘発。敗血症性ショックとDICが致死的転帰の最終経路。
診断
犬パルボウイルス感染症の診断は糞便抗原検査と臨床所見に基づく。糞便SNAP CPV検査(感度80%、特異度98%)が迅速診断の第一選択。ワクチン接種後5-12日は偽陽性の可能性あり。糞便PCR検査は感度最高で野外株とワクチン株の鑑別にはリアルタイムPCRを使用。CBC: 著明な白血球減少(<2,000/μL、特にリンパ球減少)が特徴的で予後指標。血液生化学: 低アルブミン血症、低血糖(子犬で重症)、電解質異常(低K、低Na)。腹部X線/超音波: 小腸拡張、液体貯留、腸壁菲薄化。6週-6ヶ月齢のワクチン未接種犬で出血性下痢・嘔吐・白血球減少の三徴は強く示唆。好発犬種: ロットワイラー、ドーベルマン、ジャーマンシェパード、ラブラドール。
治療
特異的抗ウイルス薬なし。積極的な支持療法が主軸。(1)輸液:乳酸リンゲル液または生理食塩水で脱水補正;尿産生確認後KCl 20 mEq/L添加。(2)抗菌薬:アンピシリン22 mg/kg IV 8時間毎+エンロフロキサシン5 mg/kg IV 24時間毎(4ヶ月未満はメトロニダゾール15 mg/kg IV 12時間毎)。(3)制吐薬:マロピタント1 mg/kg SC 24時間毎+オンダンセトロン0.5〜1 mg/kg IV 12時間毎。(4)膠質液:アルブミン<1.5 g/dLでヘタスターチまたはヒトアルブミン。(5)早期経腸栄養:入院4〜8時間後より経鼻胃管で少量開始(生存率改善)。(6)鎮痛:ブプレノルフィン0.02 mg/kg IV 6〜8時間毎。(7)組換えネコインターフェロンオメガ2.5 MU/kg IV 24時間毎×3日(EMA承認、死亡率低下)。
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予防
コアワクチン(MLV CPV-2):子犬3回接種(6週、9〜10週、12〜16週)後、1歳時追加接種、以後3年毎。ワクチン未接種犬のドッグパーク・シェルター立ち入り禁止。環境消毒は次亜塩素酸ナトリウム1:32希釈液(ほとんどの消毒薬に抵抗性)。
予後
積極的な入院治療で生存率70〜95%。無治療では死亡率約91%。不良予後因子:白血球数<500/μL、低アルブミン血症(<1.2 g/dL)、低体温(<37°C)、来院12時間以内の血便、エンドトキシン血症/DIC。入院期間は通常3〜7日。回復犬は長期免疫を獲得。
関連する薬品
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📚 参考文献
Based on articles retrieved from PubMed
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