膵外分泌不全症(EPI)
概要
膵臓の消化酵素産生不足により、栄養吸収障害を引き起こします。
主な症状
原因
膵腺房萎縮(PAA、免疫介在性、最多):ジャーマンシェパードに好発(遺伝性)、ラフコリー。慢性膵炎の末期。膵腫瘍。若齢〜中齢犬に多い(PAA:1〜5歳)。血清TLI(trypsin-like immunoreactivity)<2.5μg/Lで確定診断。
病態生理
膵腺房細胞の90%以上が喪失→消化酵素(リパーゼ・アミラーゼ・プロテアーゼ)の著明な分泌低下→脂肪・蛋白質・炭水化物の消化不全→吸収不良→大量の黄色〜灰白色・脂肪光沢のある軟便(脂肪便)・体重減少・多食。小腸内細菌過増殖(SIBO)の合併が高率。コバラミン(VitB12)欠乏が予後に影響。
治療
【膵酵素補充療法(PERT)】生涯必須。粉末状膵酵素(パンクレアチン/パンクレリパーゼ)を毎食に混合。推奨量:1 tsp/10kg/食(製品により調整)。食前20分のプレインキュベーション(食事に混合して放置)が消化効率を向上。ブタ由来生膵臓の細切も有効だが入手困難。酵素は胃酸で一部失活→オメプラゾール(1 mg/kg PO q24h)併用で効率向上の報告あり。 【食事療法】低脂肪・高消化性食で開始(Hill's i/d Low Fat、Royal Canin Gastrointestinal Low Fat)。改善後は段階的に通常食へ移行可。中鎖脂肪酸(MCT)は膵リパーゼ非依存で吸収されるため有用。サイリウム(Psyllium/オオバコ)1-2 tsp/10kg/食 — 食物繊維として便の安定化に寄与。ただし過剰な食物繊維は酵素活性を阻害する可能性があるため適量を守る。 【プロバイオティクス・プレバイオティクス】プロバイオティクス(E. faecium SF68、S. boulardii)— EPI犬ではディスバイオーシスが高率に合併。プレバイオティクス(FOS、MOS)で腸内環境改善。 【コバラミン(VitB12)補充】吸収障害のため補充が必須。血清コバラミン<300 ng/Lで開始。シアノコバラミン 250-1500 μg SC q7d×6週→q14d→q28d。経口高用量補充(1 mg/日PO)も最近のエビデンスで有効。 【SIBO合併時】メトロニダゾール(10 mg/kg PO q12h×28日)またはチロシン(25 mg/kg PO q12h×6週)。 【診断】血清TLI<2.5 μg/Lで確定。好発:ジャーマンシェパード(膵腺房萎縮=PAA、免疫介在性)、ラフコリー。治療反応は良好だが生涯管理が必要。参考文献: Westermarck (2005) JAVMA, Batchelor (2007) JVIM, Volkmann (2017) JVIM.
予防
好発犬種の繁殖管理。確定診断後は膵酵素補充療法(パンクレアチン散を毎食混合)が生涯必要。コバラミン補充(注射)、低脂肪・高消化性食。
予後
栄養性疾患の多くは原因となる栄養不均衡の是正により良好な予後が期待できる。早期に適切な食事矯正とサプリメント補充が開始されれば、多くの臨床症状は可逆的である。しかし成長期の骨格変形や重度の神経障害など、長期の栄養欠乏により不可逆的な構造変化が生じた場合は完全な回復が困難である。継続的な栄養モニタリングと食事管理が再発防止に不可欠である。
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