銅関連慢性肝炎(犬種特異的)
概要
肝細胞内への遺伝性銅蓄積により進行性肝炎を起こす、ベドリントンテリア、ラブラドール、その他に多発。
主な症状
原因
遺伝性犬種特異的遺伝子欠損:COMMD1欠失(ベドリントン常染色体劣性)、ATP7A/ATP7B変異(ラブラドール—保護的とリスク修飾アレル)、他の遺伝因子(ウェスティ、ドーベルマン、スカイテリア、ダルメシアン、コッカースパニエル)。食事銅>2-3 mg/1000 kcalが遺伝的感受性犬の蓄積に寄与。ほとんどの市販食は素因犬種にとって最適レベルを超える銅含有。
病態生理
銅関連慢性肝炎(CACH)は銅恒常性遺伝子の遺伝的欠損による過剰肝銅蓄積で発症。最も特性化された型はベドリントンテリア銅中毒症—COMMD1遺伝子の常染色体劣性欠失で胆道銅排泄失敗(ヒトWilson病ATP7B変異と類似だが異なる)。ベドリントンは生涯にわたって銅を漸増性蓄積し、ホモ接合罹患犬では2-7歳までに肝濃度5,000-10,000 ppm乾燥重量超過(正常<400 ppm)。他の素因確立犬種:ラブラドール(ATP7AとATP7B変異—Fieten 2018、米国ラブラドール集団の約15-25%罹患)、ウェスティ(可変)、ドーベルマン(銅蓄積を伴う混合慢性肝炎)、スカイテリア(重度)、ダルメシアン(銅関連)、アメリカン/イングリッシュコッカースパニエル(混合)。病態:銅は門脈血銅曝露によりまず門脈周囲肝細胞(zone 1)に蓄積、後に小葉中心性に拡散。過剰銅がFenton様反応でROSを生成し肝細胞膜、ミトコンドリア、DNAに酸化損傷—アポトーシス、壊死、慢性炎症を引き起こす。組織学的進行:銅蓄積→肝細胞空胞化→限局性壊死性炎症→架橋線維化→小結節性肝硬変→末期肝不全。臨床徴候は典型的に中年犬(3-10歳)の亜急性-慢性—PU/PD、体重減少、嘔吐、食欲不振、肝性脳症、腹水、進行例で黄疸。大量銅の循環内放出による急性溶血性危機の可能性(Coombs陰性溶血、メトヘモグロビン血症、急性肝不全)。
治療
集学的:銅キレート、食事銅制限、肝保護、抗線維化療法。定量銅分析(ゴールドスタンダード—正常<400 ppm乾燥重量、異常>600、重度>1500 ppm)とロダニン染色(顆粒状銅視認)併用の肝生検が診断確定と治療指針。PT/aPTT延長あればビタミンK1 5 mg/kg SC q12h x 2-3日で術前凝固検査対処。D-ペニシラミン10-15 mg/kg PO BID空腹時(食事1時間前)が第一選択銅キレート—銅尿として尿排泄に銅動員、肝銅正常化まで6-12ヶ月継続、有意な副作用(食欲不振、嘔吐、自己免疫症候群、皮膚炎)が忍容性制限。トリエンチン10-15 mg/kg PO BIDが忍容性優れる代替キレート、特にD-ペニシラミン副作用が使用制限する際に有用。テトラチオモリブデン酸(犬で実験的だがヒトWilson病で使用)が潜在的有用。銅正常化後の維持療法:亜鉛グルコン酸または亜鉛酢酸塩5-10 mg/kg PO BID-TID空腹時(腸細胞でメタロチオネイン誘導し食事銅結合)—血清亜鉛目標200-400 μg/dL、生涯継続。<2 mg/1000 kcalの厳格食事銅制限:Hill l/d、ロイヤルカナンHepatic、Purina HA Liver Care、または肝臓栄養士相談の手作り食。羊肉、内臓肉、貝類、チョコレート、マッシュルーム、ナッツ(高銅)回避。蒸留水または低銅水使用。肝保護:SAMe 20 mg/kg PO SID(グルタチオン補充、抗酸化)、シリマリン/シリビン50-250 mg/犬 PO SID、ウルソデオキシコール酸10-15 mg/kg PO SID、ビタミンE 10-15 IU/kg PO SID。抗線維化:シリビン/シリマリン(軽度)、低用量コルヒチン0.025-0.03 mg/kg PO SID(議論あり)。肝性脳症あれば治療(ラクツロース0.25-0.5 mL/kg PO TIDを1日2-3回軟便目標で滴定、低タンパク食、難治例にアンピシリンまたはネオマイシン)。門脈圧亢進/腹水管理(スピロノラクトン1-2 mg/kg PO BID+フロセミド1-2 mg/kg PO BID)。肝酵素を1-3ヶ月毎、肝生検で銅定量を治療6-12ヶ月で再検。ベドリントンのCOMMD1 DNA検査はOptiGen/CombiBreed、ラブラドールのATP7A/ATP7BはWisdom Panel/Embarkで利用可。 [ECVN:Block] 【補助療法オプション — Equine & Canine Vet Nutrition (caninevet.jp)】 • For Antioxidant (アスタキサンチン+SOD+VitE+システイン): 抗酸化・慢性疾患免疫サポート • MSM+アミノコンプリート (MSM+必須アミノ酸(BCAA中心)): 組織修復・筋肉維持・肝腎栄養サポート • NMNミトコンドリアアシスト (NMN+α-リポ酸+システイン+プロバイオティクス): 細胞エネルギー代謝・サーチュイン活性化・抗老化 ※MSM+アミノコンプリート: 重度肝・腎不全は蛋白負荷に留意
予防
遺伝スクリーニング:全ベドリントンを繁殖前にDNA検査(常染色体劣性—ホモ接合罹患、ヘテロ接合キャリアは発症しないがリスク伝達)。キャリアはクリア犬とのみ繁殖可。ラブラドールのATP7A/B遺伝子型判定で早期介入のための高リスク個体同定。素因犬種の2-3歳から年1回ALTスクリーニング、持続上昇あれば肝生検。素因犬種は無症候でも生涯銅制限食—蓄積率低減。銅強化サプリ/マルチビタミン回避。遺伝的高リスク犬の予防的亜鉛補充。
予後
診断時病期と犬種により可変。迅速キレートと食事管理ありの肝硬変前疾患—極めて良好(生存期間中央値5年以上、コンプライアンス良好なら通常寿命)。確立された肝硬変—慎重(1-3年)。肝性脳症または難治性腹水—極めて不良(数ヶ月)。ホモ接合COMMD1変異ベドリントンは介入なしで必発するが治療で進行予防可能。中等度遺伝リスクのラブラドールはスクリーニングと早期介入から最大の利益。生涯治療コミットメントと食事制限を飼い主に理解させる。
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