水晶体脱臼
概要
水晶体を支える毛様小帯(チン小帯)の破綻により、虹彩後方の正常位置から水晶体が偏位した状態。ウサギでは慢性ぶどう膜炎 — 古典的にはEncephalitozoon cuniculiによる水晶体起因性ぶどう膜炎 — に続発して小帯が脆弱化することが多い。前方脱臼は水晶体が瞳孔を塞いで急性続発性緑内障を起こすため緊急であり、後方脱臼(硝子体内へ)は緊急性が低い。
主な症状
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臨床徴候
ウサギにおける水晶体脱臼の臨床徴候は罹患部位と病態の急性/慢性により異なる。急性外傷: 跛行(非荷重)・腫脹・疼痛・変形(骨折・脱臼)。慢性変性: 起立困難・運動不耐性・跛行(運動後悪化・寒冷で悪化)・関節腫脹(OA等)。発達性異常: 子犬期から軽度跛行(股関節・肘関節形成不全)。感染性: 発熱を伴う関節腫脹・疼痛(敗血症性関節炎)。
原因
慢性ぶどう膜炎による毛様小帯変性に続発する続発性水晶体脱臼(ウサギでは E. cuniculi 水晶体起因性ぶどう膜炎が最多原因)、慢性緑内障/牛眼による小帯の伸展、進行した白内障、外傷。原発性(遺伝性)水晶体脱臼はウサギではまれ。
病態生理
炎症または機械的伸展により、水晶体を毛様体に係留する毛様小帯が変性し、水晶体が亜脱臼または完全脱臼する。前方脱臼では水晶体が前房または瞳孔面へ移動して瞳孔ブロックを起こし、房水が排出隅角へ到達できず眼圧が急上昇、角膜浮腫を伴う有痛性の続発性緑内障を生じる。後方脱臼では水晶体が硝子体内へ落下し、一般に忍容性は良いが後の緑内障リスクは残る。ウサギでは E. cuniculi による水晶体起因性ぶどう膜炎が背景にあることが通常である。
診断
スリットランプで水晶体位置異常(前方脱臼:前房内水晶体、後方脱臼:硝子体腔内)を確認。前方脱臼では角膜浮腫・急性緑内障を伴うことが多い。眼圧測定(急性上昇)。散瞳後の眼底検査。超音波検査(Bモード)で水晶体の位置・硝子体変性を評価。E. cuniculi抗体価(phacoclastic uveitisによる毛様小帯融解が原因のことが多い)。対側眼の評価(両側性リスク)。鑑別:先天性、外傷性、E. cuniculi関連、緑内障続発。
治療
水晶体脱臼の治療: 前方脱臼(緊急 — 急性続発性緑内障を引き起こす): 嚢内水晶体摘出(ICLE)が第一選択。手術待ち: チモロール0.5%点眼q12h+ドルゾラミド2% q8h(眼圧低下)、プレドニゾロン1%点眼q6-8h。前方脱臼ではアトロピンは禁忌(水晶体を前方に押し瞳孔ブロック悪化)。メロキシカム0.5-1.0 mg/kg PO q24h。手術不可で疼痛あり/失明: 眼球摘出。後方脱臼(緊急性低い): アトロピン1%点眼q12-24h(瞳孔散大で水晶体を後方に維持)。チモロール0.5% q12h(予防的眼圧管理)。眼圧q2-4週でモニタリング。亜脱臼(部分的変位): 保存的管理、密なフォローアップ。原因: E. cuniculi関連慢性ぶどう膜炎が最多 — フェンベンダゾール20 mg/kg PO q24h×28日。経口ペニシリン系は絶対禁忌。参考文献: Williams (2007); Harcourt-Brown (2002); Varga (2014).
予防
予防には適切な飼育管理(適切な食事・清潔な環境・最適な温湿度);定期的な獣医師の健康診断;新規動物の検疫;ストレス軽減;種特異的予防措置が含まれる
予後
外傷の予後は損傷の重症度と合併症の有無に依存する。軽度外傷は適切な創傷管理で予後良好。重度外傷、多発骨折、脊髄損傷は予後慎重〜不良。早期治療と適切な疼痛管理が回復を促進する。
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