亜鉛中毒
概要
亜鉛含有金属物(硬貨・金具・亜鉛メッキ金属)の摂取による亜鉛中毒で、溶血性貧血・ヘモグロビン尿・多臓器不全を引き起こす。日本の1円硬貨(100%亜鉛)と米国の1982年以降のペニー(97.5%亜鉛)が一般的原因。胃酸が亜鉛を溶解→亜鉛イオン吸収→酸化的赤血球障害→血管内溶血→ヘモグロビン尿→AKI。重要:キレート療法前に異物を除去して亜鉛の継続的放出を止めなければならない。
主な症状
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臨床徴候
犬における亜鉛中毒の臨床徴候は毒性物質の種類と曝露量により急性〜慢性まで多様。消化器症状(嘔吐・下痢・流涎・腹痛)が最も一般的な初期所見。神経毒では振戦・痙攣・運動失調・昏睡。肝毒では黄疸・凝固障害・肝性脳症。腎毒では乏尿・尿毒症徴候。血液毒では貧血・出血傾向・メトヘモグロビン血症。心血管毒では不整脈・低血圧・ショック。急性曝露では症状発現が迅速で、早期除染と支持療法が予後を決定する。
原因
日本の1円硬貨(100%亜鉛)、1982年以降の米国ペニー(97.5%亜鉛)。金属部品:ボルト・ナット・ホチキス針・金属ファスナー。亜鉛メッキワイヤー/金網。酸化亜鉛軟膏。ボードゲームの駒・おもちゃ部品・アクセサリー。犬は遊んでいたり物を拾い食いする際に硬貨を最も多く摂取する。
病態生理
摂取した亜鉛含有物が胃酸で溶解→血清亜鉛上昇(正常:0.7〜2.0 μg/mL;毒性:>2.0 μg/mL)→赤血球の酸化的膜障害→ハインツ小体形成+赤血球溶解→血管内溶血→貧血・ヘモグロビン尿・ヘモグロビン血症(茶色/赤色血漿)。亜鉛直接毒性による肝細胞障害。膵臓障害(腺房細胞障害)。ヘモグロビン沈殿による腎尿細管障害。GI粘膜腐食→摂取部位の出血性胃腸炎。
診断
亜鉛中毒の診断は亜鉛含有異物の摂取歴と溶血性貧血から疑う。腹部X線で金属異物(硬貨、ナット、亜鉛メッキ製品)を検出。血中亜鉛濃度測定(正常: 0.7-2.0 ppm、中毒: >3-5 ppm)。CBC:再生性溶血性貧血(Heinz小体、球状赤血球)、網状赤血球増加。生化学:ビリルビン上昇、ヘモグロビン尿、肝酵素上昇、膵炎合併(リパーゼ/cPLI上昇)。直接クームス試験は通常陰性。鑑別:IMHA、タマネギ中毒、バベシア症、銅中毒。治療:異物の内視鏡的/外科的摘出が最優先。輸血・支持療法。
治療
ステップ1—異物除去(キレート療法の前に):胃内なら内視鏡的回収;内視鏡が失敗または腸内なら外科的胃腸切開;催吐後または幽門通過後でも—腸内の硬貨は引き続き毒性を示す。下剤(硫酸マグネシウム250 mg/kg PO)で小さな異物の腸内通過を促進。ステップ2—キレート療法:CaNa2EDTA 25〜35 mg/kg IV(5%ブドウ糖希釈)6時間毎×5日(腎臓の亜鉛排泄を促進);またはD-ペニシラミン15 mg/kg PO BID×7〜14日(経口代替、効果はやや劣る)。溶血性貧血管理:PCV<20%または貧血症状(頻脈・虚脱・蒼白MM)なら濃厚赤血球輸血;IV輸液(0.9% NaCl、3〜5 mL/kg/h)利尿と腎保護(ヘモグロビン洗浄);炭酸水素ナトリウム(1 mEq/kg IV)で尿をアルカリ化(尿細管内ヘモグロビン沈殿防止)。GI保護:オメプラゾール1 mg/kg IV。制吐:マロピタント1 mg/kg SC。肝保護:ALT上昇時にSAMe 20 mg/kg/日。最低48〜72時間入院。
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予防
全ての硬貨と小さな金属物品をペットがアクセスできない場所に保管。定期的に床の落とした硬貨を確認(特に1円硬貨)。建設/金具材料の周辺での犬の監視。酸化亜鉛軟膏の使用確認—舐められない部位のみに塗布するかエリザベスカラーを使用。
予後
溶血と腎障害の程度によって異なる。24時間以内の異物除去+キレート療法による軽度〜中等度の溶血:良好。重篤な溶血(PCV<15%)または確立したAKI:慎重。重要:異物の同定遅延(初期X線での異物の見落とし)は予後を著しく悪化させる。迅速な亜鉛異物除去+EDTAキレートにより大部分の犬が1〜2週間で完全回復する。膵臓障害は一般的に改善する。ヘモグロビン尿による腎障害:利尿が維持されれば通常可逆的。
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