急性出血性下痢症候群(AHDS/HGE)
概要
急性出血性下痢症候群(AHDS、旧称HGE)——突然発症の大量血性(ラズベリージャム様)下痢と著明な血液濃縮(PCV 55〜70%が多い)だが総タンパクは比較的正常。主に小型/超小型犬種(ヨークシャー・テリア、ミニチュア・プードル、ミニチュア・シュナウザー、シーズー、マルチーズ、ダックスフンド)の若〜中年齢成犬に好発。最も有力な病因菌:Clostridium perfringens netF毒素産生株。積極的な輸液療法のみで大多数が回復——単純性AHDSには抗菌薬は通常不要。
主な症状
原因
Clostridium perfringens(netF毒素陽性株)が最も有力な原因菌。ストレス、食餌性因子、免疫学的要因も関与。明確な原因は不明で特発性とされることが多い。小型犬に好発(体質的要因の関与が推察)。
病態生理
最有力仮説:Clostridium perfringens A型のnetF毒素(β2孔形成毒素)が腸管上皮バリアを急性傷害。netFは七量体孔形成毒素として腸絨毛細胞膜に挿入→膜破壊→細胞壊死→絨毛剥離→吸収能消失+大量の血液/血漿が腸管内腔へ漏出。体液喪失は最初は腸管内(内部第三腔への移動)——血液濃縮(PCV上昇)を引き起こすがTP(総タンパク)は当初比較的正常に保たれる(タンパクも消失するが水分に比べ遅い)。低血圧→腎前性高窒素血症→補正されなければAKI。粘膜バリア破壊による細菌転座(クロストリジウム、E. coli)→重症例では全身感染。小型犬好発:消化管過敏反応(過敏症様機序)の推測。
治療
積極的な輸液療法が主軸。(1)ショック蘇生:LRS 20〜30 mL/kg IV 15〜30分;PCV>60%でショック徴候あればヘタスターチ5〜10 mL/kg追加。1日総輸液量:維持量(50〜60 mL/kg/日)+継続的損失量。(2)電解質補正:KCl 20〜40 mEq/L添加(低カリウム血症;尿産生確認後)。(3)制吐薬:マロピタント1 mg/kg IV 24時間毎+オンダンセトロン0.5 mg/kg IV 8〜12時間毎。(4)鎮痛:ブトルファノール0.2〜0.4 mg/kg IV 6〜8時間毎。(5)抗菌薬:単純性AHDSには不要(臨床試験で有益性なし;耐性促進リスク)。適応:発熱持続・白血球減少・輸液抵抗性低血圧・敗血症徴候——アンピシリン+メトロニダゾール。(6)嘔吐コントロール後(12〜24時間)から少量ずつ経口水/低脂肪食を再開。(7)大多数が1〜3日の入院で回復。 [ECVN:Block] 【補助療法オプション — Equine & Canine Vet Nutrition (caninevet.jp)】 • For Antioxidant (アスタキサンチン+SOD+VitE+システイン): 抗酸化・慢性疾患免疫サポート • CPパウダー (プレバイオ+プロバイオ+サイリウム): 腸内細菌叢正常化・腸管バリア強化・腸腎連関 • Booster & Relax (アダプトゲン+Bビタミン複合体): ウイルス後回復・内分泌疾患エネルギー補給・高齢期慢性疲労 ※CPパウダー: 完全腸閉塞は禁忌
予防
急激な食餌変更の回避、ストレス軽減、定期的な寄生虫(ジアルジア等)コントロール。再発例では食餌管理を検討。
予後
積極的な早期輸液療法で予後優良(生存率>95%)。輸液療法なしでは重篤な低血圧が数時間以内に致死的になりうる。再発の可能性があるため、繰り返す場合は基礎疾患の検索が必要。
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