回虫症(トキソカラ)
概要
子犬に多い腸管寄生虫で、腹部膨満を引き起こし、人獣共通感染のリスクがあります。
主な症状
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臨床徴候
犬における回虫症(トキソカラ)の臨床徴候は寄生虫種・寄生部位・寄生数により異なる。消化管寄生では下痢・嘔吐・体重減少・腹部膨満、外部寄生では掻痒・脱毛・皮膚炎、心血管寄生では咳・運動不耐性・腹水、血液寄生では貧血・発熱・元気消失を呈する。幼若・栄養不良個体では重症化しやすく、慢性経過では発育不良が顕著となる。
原因
Toxocara canis。経胎盤・経乳・糞口感染。虫卵は環境中で数年生存。子犬は出生時に既に感染していることが多い。人への感染(内臓/眼幼虫移行症)のリスクあり。
病態生理
経口感染→L2幼虫が腸管壁穿通→肝臓→肺(咳嗽の原因)→嚥下→小腸で成虫化。体内移行型(成犬では組織内休眠幼虫として存在)。大量感染→腸閉塞・腸穿孔のリスク。経胎盤感染で新生子犬に先天性感染。人獣共通(幼虫移行症)。
診断
糞便検査(浮遊法: 硫酸亜鉛/飽和食塩水)でToxocara canis虫卵を検出(亜球形、75-90μm、暗色厚殻)。子犬: 腹部膨満、発育不良、嘔吐(成虫嘔出あり)、下痢、被毛粗剛。重度感染で腸閉塞・腸穿孔のリスク。肺移行期に咳嗽。CBC: 好酸球増加。経胎盤・経乳感染で生後2-3週から感染。人畜共通感染症(幼虫移行症: VLM/OLM)としての公衆衛生的意義。
治療
【駆虫薬(成虫に有効。組織内の移行幼虫には無効なため反復投与が必須)】パモ酸ピランテル 5-10 mg/kg PO、2-3週間後に再投与(安全域が広く幼犬・妊娠犬でも使いやすい)。フェンベンダゾール 50 mg/kg PO q24h × 3-5日。ミルベマイシンオキシム 0.5-1 mg/kg PO 月1回——日本で広く普及し、犬回虫・犬鉤虫・犬鞭虫の駆除とフィラリア予防を兼ねられるため通年の定期駆虫として実用的(ミルベマイシン配合のフィラリア予防薬・内外部寄生虫合剤も同様に用いられる)。【日本国内で入手可能な代表的製剤】プロコックス®経口懸濁液(エランコ、エモデプシド+トルトラズリル): 製剤 0.5 mL/kg を単回経口(=エモデプシド 0.45 mg/kg+トルトラズリル 9 mg/kg)。犬回虫・犬鉤虫・犬鞭虫に加えコクシジウム(イソスポラ属)も同時に駆除できるため、下痢を伴う子犬の混合感染で有用。2週齢以上かつ体重400 g以上から使用可(2週齢未満・0.4 kg未満には投与しない)。【子犬の駆虫スケジュール】2週齢から2週間隔で8週齢まで、その後6ヶ月齢まで月1回。経胎盤・経乳感染がほぼ必発のため、糞便検査が陰性でも定期駆虫を行う。【母犬】妊娠40日目〜分娩後14日にフェンベンダゾール 25-50 mg/kg PO q24h で幼虫の移行を抑制。【環境対策】糞便の毎日の除去(虫卵は数週間で感染性となり土壌中で数年生存する)。熱湯・スチーム洗浄。砂場は使用しないときは覆う。【支持療法】重度感染の子犬では貧血・低蛋白血症・腸閉塞に対する輸液と栄養管理。駆虫後の虫体崩壊による一過性の消化器症状に注意。【人獣共通感染症】犬回虫は幼虫移行症(内臓・眼・神経)の原因となり特に小児で重要。手洗い指導と砂場・公園での感染源対策を必ず併せて説明する。(Elanco Japan プロコックス製品情報; CAPC/ESCCAP 駆虫ガイドライン)
予防
子犬は2週齢から2週間隔で8週齢まで駆虫、その後月1回の広域駆虫薬。妊娠犬のフェンベンダゾール投与(分娩前40日〜分娩後14日)。環境の糞便除去。
予後
犬における回虫症(トキソカラ)の予後は寄生虫種・寄生数・宿主免疫状態・治療反応性により異なる。早期発見と適切な駆虫薬投与により多くの寄生虫症は良好な予後だが、重度感染・心血管寄生虫・血液寄生虫では治療反応が遅延する。再感染予防のための環境管理・媒介動物制御の継続が長期予後を左右する。免疫不全状態では治療抵抗性となるため、基礎疾患管理も並行する。
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