悪性高体温症
概要
遺伝的異常リアノジン受容体(RyR1)→吸入麻酔薬・サクシニルコリン誘発→筋小胞体からCa2+制御不能放出→持続筋収縮→高体温・横紋筋融解・代謝性アシドーシス。ダントロレンが特効薬。
主な症状
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臨床徴候
犬における悪性高熱症の臨床徴候は罹患臓器と腫瘍の種類により多様。一般的所見: 進行性の腫瘤形成・体重減少・食欲不振・元気消失・貧血。体表腫瘤では触知可能な腫脹・疼痛を、内臓腫瘍では腹部膨満・嘔吐・下痢・呼吸困難・リンパ節腫大などの非特異的症状を呈する。傍腫瘍症候群として高カルシウム血症(リンパ腫・肛門周囲腺癌)や低血糖(インスリノーマ)を合併することがある。
原因
RyR1遺伝子変異(常染色体優性)。誘発剤:揮発性麻酔薬(ハロタン・イソフルラン・セボフルラン)、サクシニルコリン。素因犬種:グレイハウンド、ボーダーコリー、ラブラドール、ゴールデンレトリバー。運動誘発性MHも報告あり。
病態生理
遺伝的に異常なリアノジン受容体(RyR1)→吸入麻酔薬(ハロタン・セボフルラン等)またはサクシニルコリンにより筋小胞体からCa2+の制御不能な放出→持続的筋収縮→(1)代謝亢進→CO2・乳酸産生増加→代謝性・呼吸性アシドーシス、(2)横紋筋融解→高K血症→心停止、(3)体温の急激な上昇(>42degC)→多臓器不全。致死率は高いが、ダントロレンで救命可能。
診断
麻酔中(吸入麻酔薬/サクシニルコリン曝露後)の急速な体温上昇(>42°C)、筋硬直、頻脈、CO2産生著増(ETCO2>60mmHg)、代謝性/呼吸性アシドーシス。血液ガスで混合型アシドーシス。CK急速上昇(横紋筋融解)。高K、ミオグロビン尿。カフェイン・ハロタン筋収縮試験(生検筋)が確定だが実用的でない。RYR1遺伝子変異検査。グレイハウンド、ボーダーコリーで報告。ダントロレンが特異的治療。
治療
麻酔中の緊急事態。1. トリガー薬剤を即座に中止(TIVA:プロポフォールまたはケタミンに切替)。2. ダントロレン2-3 mg/kg IV(RyR1 Ca2+放出阻害の特異的解毒薬)→1 mg/kg q6-8h x 24h継続。麻酔室に常備必須(60 mgバイアルを滅菌水60 mLで溶解)。3. 100% O2で過換気(揮発性麻酔薬フラッシュアウト10 L/min x 3分)。4. 積極的冷却:冷生食IV・腋窩/鼠径/頸部に氷嚢・冷水浴→38.5degCで冷却停止。5. 重篤なアシドーシス(pH <7.1):炭酸水素Na 1-2 mEq/kg IV。6. 高K血症:グルコン酸Ca 10% 0.5-1 mL/kg IV+デキストロース50% 1 mL/kg+レギュラーインスリン0.1 IU/kg。7. 心電図:心室性不整脈にリドカイン2 mg/kg IV。8. 0.9% NaCl(LRS禁忌:K+含有)。手術は緊急でなければ中止。
予防
リスク犬種の麻酔前スクリーニング(RyR1遺伝子検査)。疑い症例:TIVA(プロポフォール/ケタミン)使用、サクシニルコリン・揮発性麻酔薬回避、非脱分極性NMB(ベクロニウム・アトラクリウム)使用。既知陽性犬:ダントロレン1-2 mg/kg IV(導入30分前)予防投与。
予後
慎重。ダントロレンなしで死亡率60-70%。迅速なダントロレン投与で生存率80-90%。生存例は腎機能(ミオグロビン尿)とDICのモニタリングが必要。繁殖犬は遺伝子検査による管理。
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