前十字靭帯部分断裂
概要
前十字靭帯の部分断裂で、時間の経過とともに悪化する間欠的な後肢跛行を引き起こします。
主な症状
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臨床徴候
犬における前十字靭帯部分断裂の臨床徴候は罹患部位と病態の急性/慢性により異なる。急性外傷: 跛行(非荷重)・腫脹・疼痛・変形(骨折・脱臼)。慢性変性: 起立困難・運動不耐性・跛行(運動後悪化・寒冷で悪化)・関節腫脹(OA等)。発達性異常: 子犬期から軽度跛行(股関節・肘関節形成不全)。感染性: 発熱を伴う関節腫脹・疼痛(敗血症性関節炎)。
原因
犬では急性外傷よりも、慢性的な靭帯変性に伴う進行性の部分断裂から完全断裂に至る経過が大多数である(cranial cruciate ligament disease)。素因として遺伝・体格(ラブラドール、ロットワイラー、ニューファンドランド等の大型犬)、肥満、脛骨高平部角(TPA)の急峻、膝関節アライメント異常、免疫介在性関節炎が関与する。対側肢も高率に発症する。
病態生理
前十字靭帯は脛骨の前方変位・内旋・過伸展を制動する。靭帯の変性・断裂により脛骨が大腿骨に対し前方へ亜脱臼し(前方引き出し徴候・脛骨圧迫試験が陽性)、関節不安定性を生じる。荷重時の脛骨前方剪断力が病態の中心であり、不安定性は半月板(特に内側半月板)損傷と変形性関節症を続発させる。慢性経過では関節包の肥厚・骨棘形成・筋萎縮を呈する。剪断力を制御する外科的安定化(TPLO・TTA等)が治療の主体となる。
診断
整形外科検査で前方引き出し試験(cranial drawer test)で軽度の不安定性を確認。脛骨圧迫試験(tibial compression test)陽性。完全断裂より微妙な陽性所見。X線で関節液貯留、脂肪パッドの変位を確認。MRIで靭帯の部分断裂・信号変化を確認。関節液検査で非感染性炎症(単核球優位、WBC<5,000/μL)。進行性で最終的に完全断裂に至ることが多い。
治療
【前十字靱帯部分断裂の治療】■好発犬種: ラブラドール、ゴールデンレトリーバー、ロットワイラー、ニューファンドランド、スタッフォードシャーブルテリア。■診断: 整形外科検査(脛骨前方引き出し試験、脛骨圧迫試験)。X線(関節液貯留、骨棘)。MRI(靱帯繊維の部分損傷確認)。■外科的治療(推奨—特に大型犬): TPLO(脛骨高平部水平化骨切り術)—ゴールドスタンダード。TTA(脛骨粗面前進化術)。ラテラルスーチャー(小型犬・中型犬)。CBLO。術後半月板検査+必要に応じ処理。■術後リハビリ: 8-12週間の運動制限。段階的復帰プログラム。水中トレッドミル(推奨)。理学療法。■保存療法(小型犬・<15kg): 体重管理(最重要)。NSAIDs。関節保護サプリ。運動制限。■ドッグショーへの影響: 後肢跛行→歩様評価に直接影響。TPLO後の復帰: 術後4-6ヶ月でショーリング復帰可能(完全な歩様回復後)。対側断裂リスク30-50%(両後肢の観察が重要)。ショーラインの遺伝的素因→繁殖計画の考慮。体重管理がショーコンディション維持と関節保護の両立に重要。■サプリメント: グルコサミン+コンドロイチン。ω-3脂肪酸。緑イ貝。MSM。CBDオイル 2 mg/kg PO q12h(疼痛管理)。■参考文献: Slocum & Slocum 1993; Lafaver 2007; Bergh 2014。■予後: TPLO—90%以上が良好な機能回復。対側断裂の予防(体重管理+関節サプリ)が長期管理の鍵。
予防
犬における前十字靭帯部分断裂の予防は適正体重・適切な栄養・適度な運動が3本柱。発達性疾患(HD・ED・OCD・FCP)予防: 大型犬の成長期過剰カロリー回避、適切なカルシウム/リン比、過度な運動・階段使用回避。OA予防: 適正体重維持、関節サプリメント(グルコサミン・コンドロイチン・MSM)、低衝撃運動。骨折・外傷予防: 安全な飼育環境、リード散歩、滑床対策。代謝性骨疾患予防: 適切な栄養とUV-B(爬虫類・若齢動物)。
予後
犬における前十字靭帯部分断裂の予後は外科的整復(TPLO・TTA・側方制動術)で良好。
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