肉芽腫性髄膜脳炎(GME)
概要
血管周囲性肉芽腫性炎症を特徴とする非感染性CNS炎症性疾患。犬の原因不明髄膜脳炎(MUE)スペクトラムの一部--壊死性髄膜脳炎(NME:パグ脳炎)・壊死性白質脳炎(NLE)を含む。好発品種:小型犬(プードル・マルチーズ・パグ・チワワ・ヨークシャー・テリア・ダックスフント・ビションフリゼ)。性差:雌が2倍多い。年齢:通常2〜8歳。3つの臨床形態:(1)播種性GME:多巣性症状(最多)、急性/亜急性進行;(2)限局性GME:単発颅内腫瘤病変(腫瘍を模倣);(3)視神経型GME:急性失明・乳頭浮腫・エピソード性進行。治療なしでは急速進行--数週間で致死的。
主な症状
原因
原因不明(特発性自己免疫)。品種・性差素因は遺伝的成分を示唆。提唱されたトリガー:ウイルス感染(CDV分子模倣)、未知CNS抗原に対する異常免疫反応。CSF/脳組織から感染性病原体は分離されていない。
病態生理
GMEは原因不明の無菌性肉芽腫性炎症過程。提唱される機序:(1)自己免疫性T細胞介在性:血管周囲浸潤は主にT細胞(主にCD8+細胞傷害性T細胞)とマクロファージ(肉芽腫形成)から構成。BBBの破綻によりT細胞がCNSに侵入。感染性トリガー(ウイルス--CDV等)との分子模倣が提唱されているが抗原は未同定。(2)病的肉芽腫形成:活性化マクロファージが未知のCNS抗原を包囲→ウィルヒョウ=ロビン腔の血管周囲カフに集合→脳実質内の肉芽腫性病変に合体。(3)補体と自然免疫:一部の症例で血管壁のIgG沈着+補体活性化。(4)遺伝的感受性:品種素因(小型犬)→MHCクラスII対立遺伝子の可能性。組織傷害:拡大する肉芽腫による直接的機械的圧迫、サイトカイン(TNF-alpha・IL-1・IL-6)介在性神経傷害、BBB破綻による浮腫、白質脱髄。限局性GME:単発大型肉芽腫(2〜3 cm)が脳腫瘍を模倣--腫瘤効果+周囲浮腫でICP上昇。NME/NLE区別:NME(パグ・マルチーズ・チワワ)=灰白質壊死+肉芽腫性炎症;NLE(フレンチ・ブルドッグ・ヨークシャー・テリア)=白質壊死。全形態:血管周囲リンパ球/組織球性カフィング。
治療
免疫抑制(主軸):(1)プレドニゾロン2〜4 mg/kg/日PO(初期)--炎症の急速抑制(数日以内に反応);臨床反応に基づいて3〜6ヶ月かけてテーパー;再発予防には長期維持低用量(0.5 mg/kg EOD)が多くの場合必要。(2)シクロスポリン5〜10 mg/kg/日PO(修飾シクロスポリン/アトピカ):カルシニューリン阻害薬--IL-2とT細胞活性化を遮断;プレドニゾロンとの併用(ステロイド節減);トラフレベル監視(目標200〜400 ng/mL)。(3)シタラビン(Ara-C)50 mg/m2 SC q12h×4回、3〜4週毎反復:シトシンヌクレオシドアナログ--BBB通過・急速分裂免疫細胞のDNA合成阻害;組み合わせプロトコルで生存改善の強力なエビデンス;第一選択組み合わせ:プレドニゾロン+シタラビン。(4)プロカルバジン25〜50 mg/m2 PO/日:アルキル化剤;BBB通過;シタラビン失敗時または維持療法。(5)ミコフェノール酸モフェチル10 mg/kg PO q12h。(6)ロムスチン(CCNU)60〜70 mg/m2 PO q6〜8週:脂溶性アルキル化剤--優秀なBBB通過。急性重症(ICP危機):マニトール0.5〜1.0 g/kg IV 20分かけて;デキサメタゾン0.2 mg/kg IV。限局性(外科オプション):単発病変の腫瘍減量術+免疫抑制。放射線:全脳照射(18〜24 Gy/3分割)で一部の限局性GMEに1年生存改善。
予防
確立された予防法なし。遺伝子検査なし。好発犬種では免疫抑制因子(ストレス・併発疾患)を回避。
予後
播種性GME+プレドニゾロン単独:生存期間中央値30〜120日。プレドニゾロン+シタラビン組み合わせ:一部の研究で中央値2〜3年。限局性GME:播種性より良好;外科+免疫抑制で長期寛解の可能性。視神経型GME:視力予後不良(永久失明が多い)。NME(壊死性):古典的GMEより一般的に悪化。ステロイドテーパー時に再発が多い--ほとんどの犬で生涯免疫抑制が必要。
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