滑脳症
概要
脳表面に正常なひだがない先天性脳奇形で、けいれんと行動異常を引き起こします。
主な症状
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臨床徴候
犬における滑脳症の臨床徴候は罹患部位(前脳・脳幹・小脳・脊髄・末梢神経)により局在化所見を示す。前脳: 発作・行動変化・盲目・周徊・運動失調。脳幹: 脳神経障害・運動失調・意識障害。小脳: 企図振戦・低測定運動失調・広基歩行。脊髄: 四肢麻痺/対麻痺・排尿障害・反射異常(病変高位で異なる)。末梢神経: 筋萎縮・反射低下・遠位部優位の弛緩性麻痺。
原因
犬における滑脳症の原因は多岐にわたり、感染性(脳炎・髄膜炎)、免疫介在性、変性性、腫瘍性、外傷性、血管性、代謝性、毒性、遺伝性、特発性(特発性てんかん)に分類される。品種特異的好発性(コリーのCDS、ボーダーコリーのストーム不安、特発性てんかんの素因犬種)も重要な背景因子。急性発症は外傷・血管障害・中毒を、慢性進行性は変性・腫瘍・代謝性を、再発性発作は特発性てんかんを示唆する。
病態生理
滑脳症は大脳皮質の正常な脳回・脳溝形成が欠如する先天性脳奇形で、神経細胞遊走障害が本態。リスエンセファリー遺伝子(LIS1等)の変異が原因。ラサアプソ、ワイヤーヘアフォックステリアに犬種特異的な常染色体劣性遺伝が報告されている。生後数週〜数ヶ月で難治性けいれん、視覚障害、行動異常、学習能力の低下を呈する。MRIで平滑な大脳表面と皮質の肥厚を確認。根治療法はなく抗てんかん薬で対症管理。予後不良。
診断
MRIで大脳皮質の脳溝・脳回の欠如(agyria)または減少(pachygyria)を確認。皮質の肥厚・平滑化。CT/MRIで水頭症の合併を評価。EEGで異常脳波パターン(てんかん性放電)を確認。神経学的検査で視覚障害、行動異常、学習能力低下を評価。血液検査は概ね正常。リャサ・アプソ、ワイヤーヘアード・フォックス・テリアに好発。先天性で幼若齢から症状。
治療
滑脳症:根治療法なし。先天性大脳皮質形成異常(neuronal migration defect)。発作管理:レベチラセタム 20-60 mg/kg PO q8h(第一選択)、フェノバルビタール 2-5 mg/kg PO q12h(肝機能モニタリング)。急性重積→ジアゼパム 0.5-2 mg/kg IV/IN。QOL評価(発作頻度・重症度に基づく)。MRI/CTで確定。好発:ラサアプソ、ワイヤーヘアフォックステリア、アイリッシュセッター。(Platt & Olby, Manual of Canine and Feline Neurology 4th ed)
予防
犬における滑脳症の予防は原因病態によって異なる。感染性脳炎: 適切なワクチネーション(特に狂犬病・ジステンパー・FIP予防)と媒介動物制御。特発性てんかん: 遺伝性素因品種の繁殖管理。認知機能不全症候群: 知的刺激の提供、適度な運動、抗酸化サプリメント、SAMe等の補完療法。外傷性脳脊髄損傷: 交通事故・落下事故予防、適切な飼育環境。中毒予防: 環境管理。
予後
犬における滑脳症の予後は病因と神経学的重症度(特に深部痛覚の有無)により異なる。早期診断と病態に応じた適切な治療・モニタリングにより多くの症例で良好な経過が期待できるが、進行例・合併症を伴う例では予後が悪化しうる。
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