乳び胸
概要
胸腔内にリンパ液(乳び)が貯留し、呼吸困難を引き起こす疾患です。
主な症状
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臨床徴候
犬における乳び胸の臨床徴候は気道閉塞・換気障害の部位により異なる。上気道: いびき・吸気性ストライダー・運動不耐性・吸気性チアノーゼ(短頭種気道症候群)。気管: 短く乾性の発作的咳(gander-honk)・ストライダー(気管虚脱)。下気道: 慢性咳・呼気性呼吸困難・喘鳴・換気不全(喘息・COPD様病態)。突発的悪化はストレス・運動・気温変化で誘発される。
原因
特発性(最多、犬では60〜70%)。二次性:心疾患(右心不全、心膜炎)、縦隔腫瘍(リンパ腫)、外傷、胸管奇形。好発犬種:アフガンハウンド、柴犬(日本の報告で多い)。中高齢犬に多い。
病態生理
胸管またはその分枝の損傷・閉塞・圧迫→乳び液の胸腔内漏出→胸水貯留→肺の圧排→呼吸困難。慢性乳び胸→線維性胸膜炎(constrictive pleuritis)→肺の拡張障害(不可逆的)。乳び液はトリグリセリド高値(>100mg/dL)・コレステロール低値が特徴。
診断
呼吸困難、運動不耐性、咳嗽。胸部X線: 両側性胸水貯留。胸水穿刺: 乳白色混濁液、TG>100mg/dL(胸水TG>血清TGが診断的)。胸水のスーダンIII染色で脂肪滴。リンパ球優位の細胞診(慢性では好中球増加)。原因検索: 心エコー(心膜心筋症、先天性心疾患)、胸部CT/リンパ管造影で胸管の走行、前縦隔腫瘤(リンパ腫、胸腺腫)。特発性が約50%。アフガンハウンド、柴犬に好発。
治療
内科治療(初期試行4-8週):低脂肪食+中鎖脂肪酸(MCT)、ルチン(50 mg/kg PO q8h — リンパ管吸収促進)。胸腔穿刺で呼吸困難緩和。外科:胸管結紮術(thoracic duct ligation)+心膜切除術(pericardectomy)の併用が最良の成績。cisterna chyli ablation。乳び胸が持続する場合は胸膜癒着術(pleurodesis)。原因精査:心疾患、縦隔腫瘍、外傷。好発:アフガンハウンド、柴犬。
予防
確実な予防法はない。基礎疾患(心疾患・縦隔腫瘍)の管理。低脂肪食(MCTオイル食)で乳び産生を減少。内科不応例は胸管結紮+心嚢膜部分切除術。
予後
犬における乳び胸の予後は気道・肺病変の部位と重症度、基礎疾患により異なる。早期診断と病態に応じた適切な治療・モニタリングにより多くの症例で良好な経過が期待できるが、進行例・合併症を伴う例では予後が悪化しうる。
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