動脈管開存症(PDA)
概要
出生後の動脈管閉鎖不全による大動脈から肺動脈への持続的左右シャント。犬で最多の先天性心疾患(全先天性心疾患の約28%)。好発品種:プードル・ビションフリゼ・ジャーマン・シェパード・コリー・シェットランド・シープドッグ・マルチーズ・ラブラドール・ポメラニアン。性差:雌が3〜4倍多い。臨床症状はシャント量に依存:小型--無症状(偶発的心雑音);中型--運動不耐性・頻脈・咳;大型--左心不全(肺水腫)・呼吸困難・体重減少。特徴:連続性(機械音性)心雑音--左心基底部で全心周期を通じて聴取。無治療では64%が1年以内に死亡。逆転PDA(アイゼンメンガー症候群):肺高血圧症発症後に右左シャントへ逆転--手術不能。
主な症状
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臨床徴候
犬における動脈管開存症(PDA)の臨床徴候は心機能低下の程度により段階的に進行する。代償期(無症候): 心雑音が唯一の所見、聴診で発見される。早期心不全: 運動不耐性・咳(左心不全)・腹水(右心不全)。進行性心不全: 呼吸困難・チアノーゼ・失神・夜間咳。末期: 起座呼吸・肺水腫・心原性ショック。猫では FATE(大動脈血栓塞栓症)として急性後肢麻痺・冷感・疼痛・パルス消失で発症することがある。
原因
先天性--動脈管壁の平滑筋分化不全。遺伝的素因(プードルの血統研究)。雌優位の理由は不明。環境要因(母体の疾患)は少数。
病態生理
胎生期生理:動脈管は肺動脈と下行大動脈を接続し胎児肺(液体充填)を迂回。出生後12〜24時間以内に以下により閉鎖:(1)PaO2上昇(肺拡張)--酸素が動脈管壁平滑筋を直接収縮;(2)PGE2の低下--胎盤が主要産生源(出生時に除去);(3)内膜クッション増殖(2〜4週で恒久閉鎖)。病的閉鎖不全:動脈管壁の平滑筋減少(PDA犬の組織学的所見)--酸素/プロスタグランジンシグナルへの反応不全。開存した動脈管が全心周期を通じて体循環-肺循環(左右)圧較差を生成→連続的な左右シャント(収縮期最大)。血行動態的影響:(1)肺循環過多:肺血管への過剰血液量→左房拡大→LV容量負荷→偏心性LV肥大(数ヶ月〜数年代償);(2)左心不全:LV非代償→左房圧上昇→肺静脈高血圧→肺水腫;(3)RAAS活性化によるNa/水貯留(容量負荷悪化);(4)肺動脈リモデリング:慢性増加流量→肺動脈高血圧→RV圧がLVを超える→シャント逆転(右左=逆転PDA/アイゼンメンガー):後方チアノーゼ・多血症。機械音性雑音:全心周期を通じて大動脈圧がPA圧を超えるため連続性。
診断
動脈管開存症(PDA)の診断は心エコーと聴診に基づく。聴診: 左心基部の連続性雑音(machinery murmur / continuous murmur)が特徴的 — PDAを強く示唆。心エコー(カラードプラ): 大動脈から肺動脈への連続的短絡血流、左房・左室容量負荷。胸部X線: 左心房拡大、左室拡大、肺血管過灌流、大動脈弓突出(ductus bump)。心電図: 左室肥大パターン。逆シャントPDA(アイゼンメンジャー症候群): 差次的チアノーゼ(後肢のみ)、PCV上昇、バブルスタディ。好発: マルチーズ、ポメラニアン、シェットランドシープドッグ、GSD。雌犬に多い(3:1)。先天性心疾患で最多。
治療
確定的閉鎖(左右PDA--遅延しない):(1)経動脈コイル塞栓術(TACE/ACDO):心臓カテーテル(大腿動脈アクセス)経由の介入的心臓学;多くの症例で第一選択(低侵襲・成功率>95%);ほとんどの導管径に適用;全麻下30〜90分。(2)外科的結紮(胸骨切開):左側胸骨切開・動脈管の環状剥離と二重結紮;高い成功率(>95%);TACEが実施不可能な症例(非常に大きな動脈管・体重<2 kg・解剖学的問題)に予備。術周期管理:CHF合併時:フロセミド2〜4 mg/kg IV・ピモベンダン0.2〜0.3 mg/kg PO q12h・エナラプリル;酸素補給。逆転PDA(アイゼンメンガー):閉鎖禁忌--適応機序(右左シャント)を除去するとRV不全を招く;多血症管理(PCV<65%まで定期採血);肺高血圧にシルデナフィル;予後は慎重。
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予防
好発品種での遺伝子スクリーニング。罹患犬の繁殖禁止。罹患親からの仔犬の心エコー検査スクリーニング。
予後
左右PDA+閉鎖成功:優秀--不可逆的左心不全または肺高血圧症前の閉鎖で正常寿命。6ヶ月前の閉鎖:ほぼ正常の心臓リモデリング。既存CHF合併での閉鎖:術前CHF管理で良好。閉鎖失敗または逆転PDA:慎重〜不良;逆転PDAの緩和管理での生存期間中央値1〜3年。
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