突発性後天性網膜変性症(SARDS)
概要
初期には網膜変化なく突然の完全失明を起こす疾患で、治療法はありません。
主な症状
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臨床徴候
犬における突発性後天性網膜変性症(SARDS)の臨床徴候は罹患部位(角膜・結膜・前房・水晶体・網膜)と病態により異なる。結膜炎: 結膜充血・分泌物・流涙・眼瞼痙攣。角膜潰瘍: 流涙・眼瞼痙攣・羞明・角膜混濁(蛍光染色陽性)。緑内障: 急性眼痛・角膜浮腫・散瞳・眼球膨大・視覚消失。白内障: 水晶体混濁による進行性視覚障害。網膜疾患: 夜盲先行の進行性視覚障害(PRA等)・急性視覚消失(網膜剥離)。
原因
原因不明。免疫介在性の網膜視細胞破壊が疑われる。中高齢の雌犬(平均8.5歳)に好発。ダックスフンド・ミニチュアシュナウザー・パグに報告多い。視神経炎との鑑別が重要(MRI+ERGで鑑別)。
病態生理
網膜視細胞(桿体・錐体)の急性のアポトーシス→数日〜数週間で完全失明。初期は眼底検査正常(視細胞の機能喪失が構造変化に先行)。ERG(網膜電図)で消失型(flat ERG)が確定診断。数週〜数ヶ月で網膜萎縮が眼底に出現。免疫介在性の機序が示唆されるが確定されていない。多飲多尿・体重増加等のクッシング様症状を伴うことが多い。
診断
急性(数日~2週間)の完全失明で受診。散瞳(対光反射消失)だが眼底は初期正常。ERG(網膜電図)で消失型(flat ERG)が確定診断—最も重要な検査。眼底検査は初期正常→数週~数ヶ月後にタペタム反射亢進、血管狭細化、視神経乳頭蒼白。全身症状(多飲多尿、多食、肥満)を30-50%で伴う→副腎機能検査でCushing様を除外。中高齢の雌犬(ダックスフンド、ミニチュアシュナウザー、パグ)に好発。視力回復なし。
治療
突発性後天性網膜変性症(SARDS)。急性の両側性失明(数日-数週で完全失明)。好発: 中年(中央8-10歳)、雌、肥満犬。ダックスフンド、ミニチュアシュナウザー、パグ。臨床像: 急性失明(両側性 — 数日-2週間で進行)。 散瞳(両側)、対光反射消失。 全身症状(副腎皮質機能亢進類似 — 50-70%): 多飲多尿、多食、体重増加。 — ACTH刺激試験は正常(真のクッシングではない — SARDS特有の代謝変化)。診断: 眼底検査: 初期は正常(網膜変性が眼底に反映されるまで数週-数ヶ月のlag)。 — 慢性期: 網膜血管細小化、tapetal hyperreflectivity、視神経乳頭萎縮。 網膜電図(ERG — 確定診断): 明所・暗所ともに消失(flat ERG — extinguished)。 — 視神経炎との鑑別(視神経炎はERG正常)。 MRI: 視神経・視交叉正常(視神経炎/腫瘍の除外)。 血液検査: 肝酵素↑、コレステロール↑、ALP↑(代謝変化 — クッシング類似)。治療(確立された治療法なし — 不可逆性失明): 免疫抑制療法(研究段階 — Grozdanic 2019): IVIg(静注免疫グロブリン)0.5 g/kg IV × 1回 + ミコフェノール酸 20 mg/kg PO q12h。 — 早期(発症2週以内)に開始した場合のみ部分的視覚回復の報告あり。 — エビデンスレベルは低い(症例報告・小規模研究)。 代謝異常の管理: 多飲多尿は通常数ヶ月で自然改善。 環境適応支援(盲目犬のQOL維持): 家具配置を変えない、声掛けによるコミュニケーション。 散歩ルートの固定、階段・プールへのゲート設置。 Halo vest(頭部保護装具 — 衝突防止)。予後: 視覚回復は期待できない。全身状態は通常良好で寿命に影響なし。 盲目犬の多くは数週-数ヶ月で環境適応し良好なQOL維持。
予防
確実な予防法・治療法はない。免疫抑制療法(IVIg)の有効性の報告があるが、エビデンスは限定的。犬は視力以外の感覚で適応できるため、環境の一貫性維持でQOLは保たれる。
予後
犬における突発性後天性網膜変性症(SARDS)の予後は早期復位・原因治療で視覚温存が可能な場合がある。
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