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犬 (Dog) 眼科 軽度

突発性後天性網膜変性症(SARDS)

Sudden Acquired Retinal Degeneration (SARDS) / 突発性後天性網膜変性症(SARDS)

概要

初期には網膜変化なく突然の完全失明を起こす疾患で、治療法はありません。

主な症状

不安行動 多飲 隠れる 体重増加

原因

原因不明。免疫介在性の網膜視細胞破壊が疑われる。中高齢の雌犬(平均8.5歳)に好発。ダックスフンド・ミニチュアシュナウザー・パグに報告多い。視神経炎との鑑別が重要(MRI+ERGで鑑別)。

病態生理

網膜視細胞(桿体・錐体)の急性のアポトーシス→数日〜数週間で完全失明。初期は眼底検査正常(視細胞の機能喪失が構造変化に先行)。ERG(網膜電図)で消失型(flat ERG)が確定診断。数週〜数ヶ月で網膜萎縮が眼底に出現。免疫介在性の機序が示唆されるが確定されていない。多飲多尿・体重増加等のクッシング様症状を伴うことが多い。

治療

突発性後天性網膜変性症(SARDS)。急性の両側性失明(数日-数週で完全失明)。好発: 中年(中央8-10歳)、雌、肥満犬。ダックスフンド、ミニチュアシュナウザー、パグ。臨床像: 急性失明(両側性 — 数日-2週間で進行)。 散瞳(両側)、対光反射消失。 全身症状(副腎皮質機能亢進類似 — 50-70%): 多飲多尿、多食、体重増加。 — ACTH刺激試験は正常(真のクッシングではない — SARDS特有の代謝変化)。診断: 眼底検査: 初期は正常(網膜変性が眼底に反映されるまで数週-数ヶ月のlag)。 — 慢性期: 網膜血管細小化、tapetal hyperreflectivity、視神経乳頭萎縮。 網膜電図(ERG — 確定診断): 明所・暗所ともに消失(flat ERG — extinguished)。 — 視神経炎との鑑別(視神経炎はERG正常)。 MRI: 視神経・視交叉正常(視神経炎/腫瘍の除外)。 血液検査: 肝酵素↑、コレステロール↑、ALP↑(代謝変化 — クッシング類似)。治療(確立された治療法なし — 不可逆性失明): 免疫抑制療法(研究段階 — Grozdanic 2019): IVIg(静注免疫グロブリン)0.5 g/kg IV × 1回 + ミコフェノール酸 20 mg/kg PO q12h。 — 早期(発症2週以内)に開始した場合のみ部分的視覚回復の報告あり。 — エビデンスレベルは低い(症例報告・小規模研究)。 代謝異常の管理: 多飲多尿は通常数ヶ月で自然改善。 環境適応支援(盲目犬のQOL維持): 家具配置を変えない、声掛けによるコミュニケーション。 散歩ルートの固定、階段・プールへのゲート設置。 Halo vest(頭部保護装具 — 衝突防止)。予後: 視覚回復は期待できない。全身状態は通常良好で寿命に影響なし。 盲目犬の多くは数週-数ヶ月で環境適応し良好なQOL維持。

予防

確実な予防法・治療法はない。免疫抑制療法(IVIg)の有効性の報告があるが、エビデンスは限定的。犬は視力以外の感覚で適応できるため、環境の一貫性維持でQOLは保たれる。

予後

変性疾患の多くは進行性かつ不可逆的であり、完治は困難である。しかし適切な疼痛管理、体重管理、リハビリテーション、環境改善により疾患の進行を遅延させ、生活の質を長期にわたり維持することが可能である。早期介入が機能温存に重要であり、マルチモーダルな疼痛管理プロトコルが推奨される。定期的な再評価により治療計画を最適化する。

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