音響恐怖症
概要
雷・花火・銃声などの音に対する極度の恐怖反応です。
主な症状
原因
遺伝的素因(牧羊犬・猟犬種に多い)、社会化期の音響暴露不足、過去のトラウマ体験、疼痛・認知機能低下との併存。好発:ボーダーコリー、ジャーマンシェパード、オーストラリアンシェパード。
病態生理
大きな音→扁桃体の過剰活性化→交感神経系亢進→頻脈・パンティング・振戦・逃避行動。反復暴露で感作が進行(脱感作ではなく増悪)。雷恐怖症では気圧変化・静電気も条件刺激となる。加齢に伴い悪化する傾向。
治療
急性期管理:トラゾドン(3-5 mg/kg PO イベント1-2時間前)+ シレオ(デクスメデトミジン口腔粘膜ジェル 125 μg/m² 経粘膜 — 犬の騒音恐怖症にFDA承認; Korpivaara 2017)。ガバペンチン(10-20 mg/kg PO 2時間前)。アルプラゾラム(0.02-0.1 mg/kg PO PRN — 短時間作用型、逆説的興奮の可能性があり慎重投与)。長期管理:フルオキセチン(1-2 mg/kg PO q24h)またはセルトラリン(1-2 mg/kg PO q24h)を騒音シーズン中毎日維持。行動修正:録音音源を用いた系統的脱感作(閾値以下から開始、数週間かけて音量漸増)。高価値トリーツによる反条件付け。環境整備:安全な部屋・巣穴、ホワイトノイズ/音楽、圧迫ラップ(ThunderShirt — エビデンスは限定的)。DAP(Adaptil)フェロモン。メラトニン(中型犬3-6 mg PO)。アセプロマジンは禁忌(不安を軽減せず鎮静のみ — 犬は恐怖を感じたまま動けなくなる; AVSAB 2015)。予後:多角的アプローチで良好。急性期薬物療法の有効率75%(Korpivaara 2017)。参考文献: Korpivaara M et al. Veterinary Record 2017; Crowell-Davis SL et al. Vet Therapeutics 2003; Sherman BL & Mills DS. BSAVA Manual 2008; AVSAB Position Statement 2019.【サプリメント】CBD(カンナビジオール)2 mg/kg PO q12h(不安軽減の補助療法。McGrath et al. 2019: てんかん犬でのCBD安全性確認。Morris et al. 2020: 行動への予備的エビデンス。肝酵素モニタリング推奨)。L-テアニン(Anxitane)5-10 mg/kg PO q12h(GABA様作用による鎮静化)。αカソゼピン(Zylkene)15 mg/kg PO q24h(カゼイン由来デカペプチド、ベンゾジアゼピン様の不安軽減)。Adaptil(DAP犬用フェロモン)カラーまたはディフューザー。omega-3 DHA/EPA(神経保護・抗炎症)。L-トリプトファン(セロトニン前駆体)。Solliquin(L-テアニン+αカソゼピン+ホエイプロテイン配合)。 [ECVN:Block] 【補助療法オプション — Equine & Canine Vet Nutrition (caninevet.jp)】 • Relax & CBD (フルスペクトラムCBD): 慢性疼痛・不安・難治性てんかん・緩和ケア ※Relax & CBD: 肝代謝(CYP450)薬物相互作用に注意
予防
子犬期(3〜14週齢)の段階的な音響暴露・脱感作、安全な避難場所の確保、興奮時の過度な慰め(恐怖の強化)の回避。
予後
予後は疾患の種類、重症度、診断時期、治療への反応性、個体の全身状態により異なる。早期発見と適切な治療介入により多くの疾患で良好な転帰が期待できる。慢性疾患では長期的な管理計画の策定と飼い主のコンプライアンスが予後に大きく影響する。定期的な経過観察と治療計画の再評価が最適な治療成績の達成に不可欠である。合併症の予防と生活の質の維持が長期管理の目標である。
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