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犬 (Dog) 眼科 軽度

流涙症

Epiphora (Watery Eyes) / 流涙症

概要

涙が顔面に溢れ出る状態。原因は涙の過剰産生(刺激による反射性流涙)または鼻涙管系を通る排涙の障害のいずれか。涙に含まれるポルフィリン色素により、特徴的な眼周囲被毛の赤褐色着色(涙やけ)を生じる。流涙症は単一の疾患ではなく臨床徴候であり、根本原因の特定と治療が不可欠。

主な症状

目やに 目の充血

原因

産生過剰:睫毛重生・異所性睫毛・睫毛乱生・眼瞼内反・外反・第三眼瞼腺脱出(チェリーアイ)・眼瞼腫瘤・結膜炎・角膜潰瘍・環境アレルゲン/刺激物(花粉・埃・煙)・乾性角結膜炎(質的涙液不足)・緑内障・前部ブドウ膜炎。排出障害:涙点閉鎖/狭窄(先天性)・鼻涙管閉塞または狭窄・涙嚢炎・涙管内異物(植物芒)・短頭種体型(浅い眼窩・内眼角眼瞼内反・涙丘睫毛乱生)。好発犬種:短頭種(ブルドッグ・パグ・ペキニーズ・シーズー・ボクサー)・プードル・マルチーズ・コッカースパニエル(涙点閉鎖)・ベドリントンテリア。

病態生理

正常な涙液は涙点(上下の内眼角)から涙小管・涙嚢・鼻涙管を経て鼻孔へ排出される。流涙症は産生と排出の不均衡で生じる。(1)産生過剰(反射性流涙):睫毛異常(睫毛重生・異所性睫毛・睫毛乱生)、眼瞼位置異常(眼瞼内反・外反)、異物、角膜潰瘍、結膜炎、ブドウ膜炎、緑内障、アレルゲンによる眼表面刺激が三叉神経を介した反射性流涙を誘発。(2)排出障害:涙点閉鎖(先天性涙点欠損--コッカースパニエル・ベドリントン/ゴールデンレトリバーに多い)、涙点狭小、後天性の涙点・涙小管閉塞(涙嚢炎・debris・異物)、または浅い眼窩と内眼角眼瞼内反/涙丘睫毛乱生を伴う短頭種での鼻涙管系の解剖学的圧迫。慢性的に湿った眼周囲皮膚は湿性皮膚炎と二次的な細菌/マラセチア感染の素因となる。

治療

原則:流涙症は徴候であり、根本原因を診断・治療する。涙やけ(美容上の着色)のみで全身性抗菌薬を投与することは推奨されない。(A)排出障害:(1)鎮静/全身麻酔下での鼻涙管洗浄・カニュレーション--22〜24Gの涙管カニューレを上涙点に挿入し滅菌生理食塩水で洗浄してdebris/粘液を除去、鼻孔での開通を確認。(2)涙点閉鎖:外科的開放--拡張で膨隆させた涙点上の結膜を拡大下で切開、術後は局所ステロイド・抗菌薬(ネオマイシン・ポリミキシン・デキサメタゾン q8h)で再狭窄を防止;再発例では一時的鼻涙管ステント。(3)難治性/破壊された涙管:結膜鼻腔吻合術・結膜口腔吻合術への紹介。(4)涙嚢炎:培養、全身+局所広域抗菌薬(アモキシシリン・クラブラン酸12.5〜25 mg/kg PO q12h)と反復涙管洗浄。(B)産生過剰--誘因の是正:睫毛重生→凍結/電気脱毛;異所性睫毛→結膜一塊切除/凍結;眼瞼内反→Hotz-Celsus法;眼瞼外反→眼瞼短縮術;チェリーアイ→腺整復(ポケット法/Morgan法、切除しない);眼瞼腫瘤→切除;角膜潰瘍/結膜炎→各プロトコルで治療;KCS→シクロスポリン0.2%点眼 q12h。(C)アレルギー/刺激性:アレルゲン曝露の最小化;抗ヒスタミン薬(セチリジン1 mg/kg PO q12〜24h、またはロラタジン);アトピー犬にはオクラシチニブ(アポキル)0.4〜0.6 mg/kg POまたはロキベトマブ(サイトポイント)SC;フルオレセインで角膜潰瘍を除外した上での局所抗炎症薬の短期使用。(D)緑内障/ブドウ膜炎:眼圧測定、適応に応じてIOP低下/抗炎症療法。(E)衛生/涙やけ管理:眼周囲の被毛を短く刈る;ぬるま湯または獣医用アイワイプで毎日清拭;二次性の眼周囲湿性皮膚炎には局所抗菌・抗真菌薬;美容目的のみでのタイロシン/メトロニダゾールの長期経口投与は避ける(抗菌薬適正使用上の懸念、承認適応なし)。 [ECVN:Block] 【涙やけ・流涙の補助栄養 — Equine & Canine Vet Nutrition (caninevet.jp)】 まず根本原因の治療が前提。以下は反射性流涙に関与する眼表面の酸化ストレス・炎症を軽減する目的の支持的オプション。 • For Antioxidant(アスタキサンチン+メロンSOD+ビタミンE+システイン):眼表面の酸化ストレス・炎症の軽減。 • CPパウダー(プレ/プロバイオティクス+サイリウム):gut-eye axisを介した眼表面炎症の調整、眼周囲・皮膚の衛生サポート。 • MSM+アミノコンプリート(MSM+必須アミノ酸):MSMの抗炎症作用+眼周囲の皮膚・被毛サポート。 エビデンス水準は低〜間接的:アスタキサンチンを含む経口抗酸化サプリはヒトのドライアイで涙液・眼表面所見を改善し(二重盲検プラセボ対照RCT, PMID 27274185, 2016;アスタキサンチン総説 Front Nutr 2021, PMC8792747)、プロバイオティクス/プレバイオティクス(シンバイオティクス)はgut-eye axisを介して涙液分泌と眼表面炎症を改善する(二重盲検RCT Clin Exp Optom 2025;総説 J Clin Med 2024, PMC11432523)。ただし犬の流涙症そのものを対象とした対照試験はなく、根本治療の代替ではなく補助療法として位置づける。

予防

好発犬種(短頭種・涙点閉鎖素因犬種)の繁殖前スクリーニング、眼周囲被毛の定期的なトリミングと清拭、睫毛・眼瞼異常の早期外科矯正、慢性的な眼表面刺激(異物・アレルゲン)の回避。涙やけの放置による二次性皮膚炎の予防が重要。

予後

流涙症の予後は重症度、診断の迅速さ、治療への反応に依存する。早期発見と適切な介入が転帰を改善する。

関連する薬品

💊 アモキシシリン 💊 アモキシシリン・クラブラン酸 💊 メトロニダゾール 💊 タイロシン 💊 デキサメタゾン 💊 オクラシチニブ(アポキル) 💊 ネオマイシン 💊 セチリジン 💊 ロキベトマブ(サイトポイント) 💊 ロキベトマブ(サイトポイント)

※ 薬品辞書で詳細な投与量・副作用情報を確認できます

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