肝細胞癌(巨大型)
概要
犬で最頻発の原発性肝腫瘍、巨大型は外科的予後が最良。
主な症状
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臨床徴候
犬における肝細胞癌(巨塊型)の臨床徴候は罹患臓器と腫瘍の種類により多様。一般的所見: 進行性の腫瘤形成・体重減少・食欲不振・元気消失・貧血。体表腫瘤では触知可能な腫脹・疼痛を、内臓腫瘍では腹部膨満・嘔吐・下痢・呼吸困難・リンパ節腫大などの非特異的症状を呈する。傍腫瘍症候群として高カルシウム血症(リンパ腫・肛門周囲腺癌)や低血糖(インスリノーマ)を合併することがある。
原因
肝細胞の自然悪性転化、慢性肝炎(特に素因犬種の銅関連)、アフラトキシン曝露(カビ穀類のマイコトキシン—歴史的懸念)、外因性副腎皮質ステロイド(稀な関連)、特発性。犬では既知の感染原因なし(ヒトのB/C型肝炎と異なる)。
病態生理
肝細胞癌(HCC)は犬で最頻発の原発性肝腫瘍、原発性肝新生物の50-65%を占める。予後が大きく異なる3形態:(1)巨大型(症例の53-83%)—単一肝葉(典型的に左または右外側葉)に限局した大型単発腫瘍、境界明瞭で外科切除可、(2)結節型—複数葉に多発離散結節、外科オプション少ない、(3)びまん型—肝全体に浸潤、非切除。慢性傷害、再生、異形成から悪性転化に至る肝細胞由来、根底の肝硬変は犬でヒトより少ないが慢性肝炎(特に銅蓄積素因犬種:ベドリントン、ラブラドール、ドーベルマン、ウェスティ、スカイテリア)が素因可能性。アフラトキシン汚染が歴史的リスク。腫瘍が隣接肝の圧排、胆管閉塞(稀)、門脈圧亢進(稀)、稀に腫瘍随伴症候群—低血糖(インスリン様因子)、赤血球増加(EPO産生)、高Ca血症を起こす。他の癌より転移は少ない(形態により診断時5-37%):リンパ節(肝、腰下)、腹膜(癌症)、肺。大型腫瘤あってもビリルビンとALTは通常軽度上昇のみ、ALPとGGTがより上昇しうる。巨大型HCCの30-50%でインスリン様成長因子2(IGF-2)とブドウ糖消費増加による腫瘍随伴性低血糖。診断時平均年齢10-12歳、犬種素因なしだがスコティッシュテリアとジャーマンシェパードが過剰代表の可能性。
診断
巨塊型肝細胞癌(HCC massive)の診断は腹部超音波/CTでの肝臓単一葉に占拠する巨大腫瘤の検出。造影CTで腫瘤の血管分布パターン、門脈・肝静脈との関係、他の肝葉への浸潤、遠隔転移の有無を評価。FNAによる細胞診は出血リスクあり注意。確定診断は切除後の病理組織検査。AFP(α-フェトプロテイン)上昇は補助的。生化学:ALP・ALT著増、低血糖(傍腫瘍症候群)。CBC:赤血球増加症(EPO産生腫瘍)。腹部X線で肝腫大・腫瘤陰影。転移検索:胸部X線3方向、腹部リンパ節評価。巨塊型は外科切除で中央生存>1,460日と予後良好。結節型・びまん型との鑑別が重要。
治療
巨大型には肝葉切除が選択治療—完全切除で予後極めて良好。術前病期分類:胸部X線3方向と腹部超音波で転移または対側関与同定、腹部CT推奨(血管解剖、リンパ節、衛星病変)、CBCと網状赤血球(赤血球増加)、生化学(ALP/GGT/血糖)、凝固検査(肝機能不全のためPT/aPTT延長多い、異常あれば術前にビタミンK1 5 mg/kg SC q12h x 2-3日で補正)、超音波ガイド下FNA細胞診(決定的でないことあり、確定診断にtrue-cut生検または切除検体組織が必要)。術前血液バンク:交差適合全血を準備(大型肝血管からの術中出血リスク有意)。手術:腹部正中切開、ステープリングデバイス(TA-90または胸腹部オートスーチャー)または手結び実質圧迫+mass結紮、または血管シーリングデバイス(LigaSure)使用の制御肝葉切除。十分なマージンで病理組織検査に提出。腹腔全体を衛星病変、腹膜転移、リンパ節腫脹について検査。術後ケア:24-48時間ICU監視で出血、肝機能不全、低血糖、低アルブミン血症対応、慎重輸液(third spacing回避)、鎮痛(メサドン0.2 mg/kg IV q4h後経口移行)、肝胆道汚染あれば予防的抗生剤(セフォキシチン30 mg/kg IV q6hまたはアモキシシリン-クラブラン酸)、SAMe 20 mg/kg PO SIDで肝支持。補助化学療法議論あり—HCCの奏効率不良(5-15%)。ドキソルビシン30 mg/m2 IV q3wk x 4-5サイクル、ゲムシタビン、トセラニブ2.5-2.75 mg/kg PO MWFが試行、現エビデンスでは完全切除巨大型HCCの常用補助化学療法支持なし。非切除結節型/びまん型:緩和ケア、支持療法(SAMe、ウルソジオール、肝臓食)、低血糖に低用量デキサメタゾン、頻回食。
予防
素因犬種(ベドリントン、ラブラドール、ドーベルマンの銅関連)の慢性肝炎早期対処:5-7歳で胆汁酸、ALT、ALPでスクリーニング、異常あれば銅生検、銅性肝症にキレート療法(D-ペニシラミン、亜鉛)。手作り食のカビ穀類回避(アフラトキシン)。慢性グルココルチコイド使用制限。高齢犬(>10歳)の年1回腹部超音波スクリーニングで切除可能段階の無症候巨大型HCC検出。
予後
巨大型完全切除で予後極めて良好—生存期間中央値1500日超(>4年)、多くの犬が再発なく術後5年以上生存。再発率13%。結節型で生存期間中央値270日。びまん型で75日。巨大型予後因子:完全切除(最良)、腫瘍径<10 cmが大型より良好、血管侵襲なし。来院時腫瘍随伴性低血糖は持続例で予後不良。巨大型HCC長期生存者は加齢で非腫瘍関連死多い。
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