放線菌症
概要
穿通創から慢性的な排膿管と膿瘍を形成する細菌感染症です。
主な症状
原因
真菌(糸状菌・酵母・二形性真菌)の感染が原因であり、環境中の胞子の吸入または皮膚バリア破綻部位からの侵入により発症する。免疫抑制状態、高温多湿環境、長期抗菌薬投与による常在菌叢の撹乱が感染リスクを増大させる。環境中の真菌胞子への曝露量と宿主の細胞性免疫能が発症の有無を左右する最も重要な決定因子である。
病態生理
真菌感染の病態生理は真菌の組織侵入と宿主免疫応答の相互作用に基づく。真菌細胞壁成分(β-グルカン・マンナン)がパターン認識受容体を介して自然免疫を活��化する。糸状菌は菌糸伸長により組織を物理的に破壊し、プロテアーゼ分泌により細胞外マトリックスを分解する。宿主の防御には好中球とマクロファージによる貪食、Th1/Th17応答が中心的役割を果たす。免疫抑制状態では防御機構の破綻により日和見感染が成立する。
治療
放線菌症(Actinomyces spp.)。嫌気性グラム陽性桿菌の深部組織感染。感染経路: 外傷(草の芒など植物異物の刺入が最多 — 猟犬・アウトドア犬)、 歯周病(口腔内常在菌 — 歯根膿瘍から波及)、咬傷。臨床像: 皮下膿瘍、瘻管形成(排膿不良 — 治療抵抗性の draining tract)。 胸腔(膿胸)、腹腔(腹膜炎)、骨(骨髄炎)に波及。 sulfur granules(硫黄顆粒 — 黄白色の小結節)が排液中に見られることあり。診断: 細胞診: 硫黄顆粒 + フィラメント状グラム陽性菌。 嫌気性培養(長期培養7-14日必要 — 通常培養では検出不能)。 組織生検: 化膿性肉芽腫性炎症 + 放線菌コロニー(PAS/GMS染色)。 画像: CT/MRI(深部病変の範囲評価)、胸部X線(膿胸評価)。治療(長期抗菌薬 + 外科的ドレナージが原則): 第一選択: アモキシシリン・クラブラン酸20-25 mg/kg PO q12h × 最低6-12週。 代替: アンピシリン22 mg/kg IV q8h(入院初期)→ 経口切替。 重症: ペニシリンG 22,000-40,000 IU/kg IV q6h × 2-4週 → アモキシシリン長期経口。 クリンダマイシン11 mg/kg PO q12h(ペニシリンアレルギー時)。 Nocardia混合感染: TMS 15-30 mg/kg PO q12h追加(好気性放線菌との鑑別重要)。外科: 膿瘍ドレナージ、異物除去(植物芒の完全除去が再発予防の鍵)、瘻管切除。 膿胸: 胸腔ドレーン留置 + 洗浄。予後: 適切な長期抗菌薬(3-6ヶ月)+ 異物除去で良好。深部感染・骨髄炎では長期化。
予防
清潔で乾燥した飼育環境の維持が基本的予防策である。感染動物との直接接触の回避、汚染された環境の徹底的な消毒、過密飼育の回避が重要である。免疫抑制状態にある動物では特に注意が必要であり、長期ステロイド投与中は真菌感染のリスクが上昇する。新規導入動物の検疫と皮膚糸状菌培養検査の実施が集団発生の予防に有効である。
予後
予後は真菌の種類、感染部位、宿主の免疫状態、治療への反応性に依存する。表在性真菌感染は適切な抗真菌療法により予後良好であるが、深在性・全身性真菌感染では治療が長期化し予後が慎重となる。免疫抑制動物では治療反応が乏しく再発率が高い。完全な治癒には数週間から数ヶ月の継続治療が必要であり、培養陰性化の確認が治療終了の指標となる。
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