猫前房出血
概要
眼の前房内への出血で、虹彩前方に沈降した、またはびまん性の血液として認められる。猫では孤立性の眼外傷よりも、CKDや甲状腺機能亢進症に続発する高血圧など全身疾患の徴候であることが多く、全身検索(血圧・凝固・腫瘍スクリーニング)が必須である。血液は視軸を遮り、房水流出を妨げて続発性緑内障を起こしうる。
主な症状
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臨床徴候
猫前房出血の臨床徴候は血液成分異常の種類により異なる。貧血: 粘膜蒼白・元気消失・運動不耐性・頻脈・呼吸促迫(重度では失神・心雑音)。出血傾向: 紫斑・粘膜出血・血尿・血便・関節血腫(凝固障害・血小板異常)。血栓症: 急性肢痛・麻痺(FATE等)・呼吸困難(肺塞栓)。白血球減少: 発熱・敗血症・反復性感染。溶血性貧血: 黄疸・暗色尿・脾腫。
原因
前房内への出血の原因: 全身性高血圧(猫で最多)、外傷、凝固障害、ぶどう膜炎、網膜剥離、眼内腫瘍。高齢猫では高血圧性網膜症が主因。
病態生理
高血圧・血管炎・新生血管(虹彩ルベオーシス)・腫瘍浸潤・外傷などにより、ぶどう膜の脆弱な血管が破綻して前房内に出血する。赤血球とフィブリンが線維柱帯(房水流出路)を機械的に閉塞し、また凝血塊が瞳孔ブロックを起こすことで眼圧が上昇し続発性緑内障を来す。長期に貯留した血液は赤血球の崩壊産物(ゴースト細胞)やヘモジデリンとして角膜・線維柱帯に沈着する。出血量が多いと眼底観察が不能となり、超音波での網膜剥離・腫瘤の評価が必要となる。
診断
前房内の出血(赤色沈殿物〜前房全体の赤染)を認める。外傷歴の確認。細隙灯検査で出血量・凝血塊を評価。眼圧測定で続発性緑内障を確認。超音波検査で水晶体脱臼・眼球内腫瘤・網膜剥離を検索。CBC/凝固系検査(PT/APTT/血小板数)で出血素因を評価。血圧測定で全身性高血圧を確認(CKD、甲状腺機能亢進症関連)。FeLV/FIV検査。ぶどう膜炎、眼球内腫瘍、外傷性出血、凝固障害の鑑別が重要。
治療
原因検索が最優先(血圧測定・凝固系・眼内/全身腫瘍の除外)。安静(ケージレスト)。アトロピン点眼1% q12-24h(瞳孔ブロック予防・疼痛緩和)。角膜潰瘍がなければプレドニゾロン酢酸エステル1%点眼 q6-8hで前部ぶどう膜炎を抑制。全身性高血圧にはアムロジピン0.625-1.25mg/cat PO q24hで収縮期血圧<160mmHgを目標。続発性緑内障の眼圧をトノメトリーで監視し、上昇時はドルゾラミド/チモロール点眼。再出血や難治例、視力予後不良例では眼科専門医へ紹介。
予防
猫前房出血の予防は限定的であるが、ホルモン依存性腫瘍軽減のための避妊・去勢手術、既知の発癌物質の回避、早期発見のための定期健診、適正体型の維持、該当する場合は遺伝的素因軽減のための責任ある繁殖が含まれる。
予後
猫前房出血の予後: 早期発見と適切な治療で多くの疾患は予後良好。慢性疾患は定期的モニタリングと治療調整で長期管理可能。
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