猫後部癒着
概要
虹彩後面が水晶体前嚢に癒着した状態で、原発疾患ではなく慢性・重度の前部ぶどう膜炎の後遺症である。癒着は瞳孔を変形させ(瞳孔不正=dyscoria)可動性を損なう。広範(全周性)の後部癒着は瞳孔からの房水流出を遮断し、虹彩膨隆(iris bombe)と続発性緑内障を招きうる。基礎にあるぶどう膜炎の特定と制御が最優先である。
主な症状
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臨床徴候
猫後部癒着の臨床徴候は感染部位と病原体特性により多様だが、共通所見として発熱・元気消失・食欲不振・体重減少が認められる。局所感染では発赤・腫脹・疼痛・排膿を、全身感染では脱水・敗血症・多臓器不全に進展しうる。幼若・高齢・免疫抑制状態は重症化リスクが高く、早期介入が予後改善に直結する。
原因
慢性・重度のぶどう膜炎に続発する虹彩-水晶体前嚢の癒着。基礎ぶどう膜炎の代表的原因はFIP、FeLV、FIV、トキソプラズマ、水晶体起因性炎症など。
病態生理
ぶどう膜炎で血液房水関門が破綻すると、房水中にフィブリンと炎症性滲出物が漏出する。これが虹彩後面と水晶体前嚢の間で器質化し、線維性の癒着(後部癒着)を形成する。癒着が瞳孔縁の一部に生じると瞳孔変形を、全周性に生じると瞳孔ブロックを来し、後房圧が上昇して虹彩が前方へ膨隆(iris bombe)する。これにより隅角が閉塞し続発性緑内障に至る。早期に散瞳薬で瞳孔を動かし癒着形成を防ぐことが重要である。
診断
虹彩と水晶体前嚢の癒着による瞳孔変形(不整瞳孔)を認める。前部ぶどう膜炎の続発症として発生。細隙灯検査で癒着部位を詳細に確認。散瞳薬(トロピカミド)投与で瞳孔の不完全散瞳を確認(癒着部位は散瞳しない)。眼圧測定で瞳孔ブロック緑内障を評価(360°癒着時は眼圧上昇)。超音波検査で後嚢癒着・水晶体変位を確認。基礎疾患(FIP、トキソプラズマ、リンパ腫)の検索。白内障、水晶体脱臼との鑑別が必要。
治療
1) 散瞳薬: アトロピン1%点眼 q8-12h(瞳孔散大による癒着剥離・予防)。2) 抗炎症: プレドニゾロン酢酸エステル1%点眼 q4-6h(急性ぶどう膜炎制御)。3) 全身性抗炎症: プレドニゾロン1-2mg/kg PO q24h(重症例)。4) 基礎疾患治療: FIP(GS-441524)、FeLV、トキソプラズマ(クリンダマイシン12.5mg/kg PO q12h)等の検索。5) 緑内障合併時: ドルゾラミド/チモロール点眼 q8-12h。6) 眼圧・眼底検査による定期モニタリング。重度の癒着・瞳孔閉鎖には外科的虹彩切開を検討。
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予防
猫後部癒着の予防: 定期的な健康診断。適切な栄養管理。ストレスの軽減。清潔な飼育環境の維持。異常の早期発見・早期受診。
予後
猫後部癒着の予後: 早期発見と適切な治療で多くの疾患は予後良好。慢性疾患は定期的モニタリングと治療調整で長期管理可能。
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