素嚢真菌症
概要
抗生物質や免疫抑制に続発する素嚢の真菌増殖。
主な症状
原因
皮膚糸状菌(Microsporum canis、Trichophyton mentagrophytes等)の感染が原因である。感染動物との直接接触、汚染環境中の関節胞子(アルスロスポア)への曝露が主要な感染経路である。幼若・高齢・免疫不全個体で感受性が高い。高温多湿環境、過密飼育、皮膚の微小外傷が発症を促進する。人獣共通感染症である。
病態生理
真菌感染の病態生理は真菌の組織侵入と宿主免疫応答の相互作用に基づく。真菌細胞壁成分(β-グルカン・マンナン)がパターン認識受容体を介して自然免疫を活��化する。糸状菌は菌糸伸長により組織を物理的に破壊し、プロテアーゼ分泌により細胞外マトリックスを分解する。宿主の防御には好中球とマクロファージによる貪食、Th1/Th17応答が中心的役割を果たす。免疫抑制状態では防御機構の破綻により日和見感染が成立する。
治療
素嚢真菌症(カンジダ症)はセキセイインコで最も一般的な真菌疾患で、特に手差しヒナと免疫不全の成鳥に多い。診断: 素嚢洗浄液の細胞診 — グラム染色でグラム陽性出芽酵母と仮性菌糸(カンジダ)を確認。第一選択: ナイスタチン300,000 IU/kg PO q12h 7-14日間(全身吸収されない — 素嚢で局所作用)。難治性/全身性: フルコナゾール5-10 mg/kg PO q24hまたはイトラコナゾール5-10 mg/kg PO q12h 14-21日間。アムホテリシンB 100 mg/kg PO q12h経管投与(重度粘膜疾患)。食事矯正: 過剰な糖/デンプンを排除(カンジダ増殖を助長)。抗菌薬使用中: 可能なら中止(正常フローラを破壊、酵母過増殖を促進)。プロバイオティクス(Lactobacillus)で素嚢フローラを回復。手差しフォーミュラは正しい温度(40-42°C)と粘度(素嚢停滞予防→カンジダ症素因)。給餌器具は給餌間に希釈クロルヘキシジンで洗浄。リンゴ酢1 mL/飲水100 mLで素嚢を酸性化(カンジダに不利な環境)。素嚢運動をモニタリング — 素嚢停滞を同時治療。参考文献: Gerlach 2001, Phalen 2006。
予防
清潔で乾燥した飼育環境の維持が基本的予防策である。感染動物との直接接触の回避、汚染された環境の徹底的な消毒、過密飼育の回避が重要である。免疫抑制状態にある動物では特に注意が必要であり、長期ステロイド投与中は真菌感染のリスクが上昇する。新規導入動物の検疫と皮膚糸状菌培養検査の実施が集団発生の予防に有効である。
予後
疾患の重症度、治療開始の早さ、治療反応により異なる。早期の適切な治療介入で一般に予後改善。
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