股関節形成不全
概要
犬で最も多い遺伝性骨格疾患。寛骨臼-大腿骨頭の不適合→関節弛緩→亜脱臼→二次性OA。大型〜超大型犬(ジャーマンシェパード、ラブラドール、ゴールデンレトリーバー、セントバーナード、ロットワイラー、ニューファンドランド)に好発。多因子遺伝(遺伝率0.2〜0.6)。繁殖選択にOFA/PennHIP評価が用いられる。
主な症状
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臨床徴候
犬における股関節形成不全の臨床徴候は罹患部位と病態の急性/慢性により異なる。急性外傷: 跛行(非荷重)・腫脹・疼痛・変形(骨折・脱臼)。慢性変性: 起立困難・運動不耐性・跛行(運動後悪化・寒冷で悪化)・関節腫脹(OA等)。発達性異常: 子犬期から軽度跛行(股関節・肘関節形成不全)。感染性: 発熱を伴う関節腫脹・疼痛(敗血症性関節炎)。
原因
多因子遺伝(遺伝率0.2〜0.6)。環境因子:急速な成長、過剰カロリー摂取、成長期の過剰Ca補充、子犬期の不適切な運動。大型犬種に圧倒的に多い;超大型犬(>45 kg)が最高リスク。
病態生理
寛骨臼-大腿骨頭の不適合→関節包の弛緩(若齢犬でのオルトラニ徴候陽性)→大腿骨頭の亜脱臼→関節軟骨の摩耗→軟骨下骨の硬化・骨棘形成→進行性OA。子犬の急速な成長が弛緩を悪化させる。慢性OA疼痛は滑膜炎・骨同士の接触・周辺筋の萎縮(後肢周径の左右差で計測可能)による。
診断
犬の股関節形成不全(HD)の診断はX線検査で行う。標準X線(VD伸展位): 寛骨臼被覆率、Morgan line(DAE — 大腿骨頸部の骨増殖)、関節適合性評価。OFA評価: Excellent/Good/Fair/Borderline/Mild/Moderate/Severe(2歳以上で正式評価)。PennHIP法: 弛緩度指数(DI)測定 — DI>0.3でリスク増(16週齢から評価可能)。Ortolani徴候: 鎮静下で大腿骨頭の亜脱臼→整復のクリック音を触知(若齢犬の弛緩度評価)。CT: 三次元的関節評価、手術計画(DPO/TPO)。臨床徴候: バニーホップ歩行、起立困難、筋萎縮。好発: ジャーマンシェパード、ラブラドール、ゴールデンレトリバー、ロットワイラー。遺伝性多因子疾患。
治療
保存療法(軽症〜中等症):体重管理(最重要—BCS 4〜5/9)、制御的低負荷運動(水泳・リードウォーク、フェッチ・階段を避ける)、NSAIDs(カルプロフェン4.4 mg/kg SID またはメロキシカム0.1 mg/kg SID、6ヶ月毎の腎/肝機能モニタリング)、関節サプリメント(グルコサミン/コンドロイチン、EPA/DHA 40〜100 mg/kg/日)。ベジンベトマブ(リブレラ)0.5 mg/kg SC 月1回—NSAIDs代替または慢性疼痛への追加。理学療法(水中運動・治療的運動・レーザー療法)。ガバペンチン5〜10 mg/kg BID—神経障害性疼痛成分。外科:若齢(<16週)—JPS(予防的恥骨癒合術、Ortolani陽性子犬での進行予防);若齢犬(12〜18ヶ月、OA最小)—DPO/TPO(寛骨臼の被覆方向矯正);重篤なOAの成犬—人工股関節全置換術(THR—ゴールドスタンダード、95%近正常機能)または大腿骨頭頸部切除術(FHNE—サルベージ、<20 kg犬またはTHRが不可能な場合)。
予防
繁殖スクリーニング:PennHIP(16週〜)またはOFA(24ヶ月〜)—正常スコアの犬のみ繁殖。大型犬子犬用フード(制御されたCa/P、制御されたカロリー密度)。過剰給餌回避(成長速度制限)。子犬の制御的運動(反復衝撃運動を避ける)。8〜16週でのOrtolaniスクリーニングにより予防的JPSが可能。
予後
保存療法:軽症例では生涯の体重/運動管理で許容できるQOLを維持。中等症〜重症(手術なし):進行性OA→慢性疼痛。THR:90〜95%の近正常機能、優れた長期成績。DPO/TPO(若齢犬、OA最小):早期施行でOA進行を80〜90%で予防。FHNE:集中的リハビリで70〜80%が許容できる機能。保存的管理犬での長期QOLを最も左右するのは体重管理。
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