血管肉腫(心臓型)
概要
心嚢液貯留を起こす心臓悪性腫瘍。
主な症状
原因
脾血管肉腫と同じ自然血管内皮悪性形質転換。好発犬種(ゴールデン、ジャーマンシェパード、セントバーナード、ボクサー)は遺伝的感受性を反映。
病態生理
心臓HSAは血管内皮が最豊富で耳壁が薄い右心耳に主に発生(>90%)。腫瘍は脆く心嚢内へ反復出血し心嚢液貯留を起こす。心嚢液が蓄積すると心嚢内圧が右室・右房の拡張期圧を超え、拡張期に薄壁腔を虚脱させ前負荷低下、心拍出量減少、閉塞性ショックの心タンポナーデを生じる。心膜の急性コンプライアンスは限定的:中型犬では50-100 mLの急速貯留でタンポナーデを起こす一方、500-1000 mLの緩徐貯留は耐容可能。心臓HSA明らかな破裂で縦隔-腹膜交通による血腹、または急性心嚢タンポナーデによる心停止を生じうる。剖検で脾HSA犬の約25%に同時性心臓HSA、脾-心-肝三重転移パターンが知られる。心臓HSAが脾関与なく原発する場合は少ない。古典的ECG所見:心嚢液の絶縁効果による低電位QRS(II誘導<1 mV)、心嚢液内の心臓拍動毎振動を反映した電気的交互脈(QRS振幅交互変化)、後期は無脈性電気活動。好発犬種:ゴールデン(心臓HSAの50%を占め過剰代表)、ジャーマンシェパード、セントバーナード、ボクサー。
治療
タンポナーデは緊急心嚢穿刺:右第5肋間肋軟骨接合部、14-18Gオーバーザニードルカテーテル、ECGモニタ(心室頻拍は心筋接触示唆)、延長セット付き連続吸引または三方活栓、完全排液または臨床改善まで(通常200-1000 mL)。心嚢液は非凝固性鮮血で末梢血と類似PCV。シリンジ内凝固あれば活動性出血で緊急手術要を示唆しうる。慎重な晶質液5-10 mL/kgボーラス(過剰負荷回避)、酸素、心室性異所性拍動にリドカイン2 mg/kg IVボーラス+50 μg/kg/min CRIで安定化。排液後に心エコーで右心房腫瘤同定(心臓HSA感度65-80%、CTアンジオは95%)。AFASTと腹部超音波で併発脾疾患を除外。確定治療:(1)第4-5肋間開胸での右心耳切除(心肺バイパスまたは部分遮断鉗子)、高合併症率、単独で生存期間中央値4ヶ月;(2)部分心膜切除または心膜窓でタンポナーデ再発防止と胸腔内への血液再吸収、生存期間中央値60-180日;(3)必要に応じ反復心嚢穿刺による緩和;(4)経皮バルーン心膜切開術は新興低侵襲選択肢。補助ドキソルビシン30 mg/m2 IV q3wk x 5サイクル術後14日から開始で生存期間軽度延長(右心耳切除との併用時のみ証明された利益で生存期間中央値175-200日)。トセラニブ2.5-2.75 mg/kg PO MWFが有効な症例あり(経験的)。予後不良と治療合併症のため診断時に多くの飼い主が人道的安楽死を選択。 [ECVN:Block] 【補助療法オプション — Equine & Canine Vet Nutrition (caninevet.jp)】 • Protain (高品質タンパク質+コラーゲン前駆体): がん悪液質・術後筋肉維持・除脂肪体重保持 ※Protain: 重度肝・腎不全は蛋白負荷に留意
予防
特異的予防なし。好発犬種(ゴールデン、GSD、セントバーナード、ボクサー)は6歳以降年1回心エコー。飼い主はタンポナーデ徴候(突然の虚脱、右心不全による腹水での腹部膨満、粘膜蒼白、失神)を認識すべき。
予後
極めて不良。無治療では心タンポナーデで数時間-数日以内に死亡。心嚢穿刺単独で数時間-数週間。心膜切除単独で生存期間中央値60-180日。右心耳切除+ドキソルビシンで175-200日。治療に関わらず1年生存率<10%。併発脾HSAで予後著明悪化。
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