高血圧性網膜症
概要
全身性高血圧による眼の標的臓器障害で、高齢猫の急性・しばしば両側性失明の最多原因。眼底所見は網膜浮腫・出血・血管蛇行・水疱状(滲出性)網膜剥離で、前房出血を伴うことが多い。高血圧はほぼ常にCKDや甲状腺機能亢進症に続発するため、血圧測定と全身検索が急務である — 剥離後24-48時間以内に降圧治療を開始すれば視力回復が見込める。
主な症状
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臨床徴候
猫における高血圧性網膜症の臨床徴候は罹患部位(角膜・結膜・前房・水晶体・網膜)と病態により異なる。結膜炎: 結膜充血・分泌物・流涙・眼瞼痙攣。角膜潰瘍: 流涙・眼瞼痙攣・羞明・角膜混濁(蛍光染色陽性)。緑内障: 急性眼痛・角膜浮腫・散瞳・眼球膨大・視覚消失。白内障: 水晶体混濁による進行性視覚障害。網膜疾患: 夜盲先行の進行性視覚障害(PRA等)・急性視覚消失(網膜剥離)。
原因
全身性高血圧(最多はCKDまたは甲状腺機能亢進症に続発)に続発。持続的高血圧が網膜細動脈を傷害し、出血・浮腫・網膜剥離を引き起こす。
病態生理
持続的な全身性高血圧により網膜・脈絡膜の細動脈に血管壁の硝子様変性・壊死とオートレギュレーションの破綻が生じ、血管透過性が亢進する。その結果、網膜浮腫・点状〜斑状出血・滲出液の網膜下貯留が起こり、神経網膜が網膜色素上皮から剥離する(水疱状/滲出性剥離)。脈絡膜虚血と網膜外層の低酸素が光受容体を障害し、剥離が長期化すると不可逆的な失明に至る。前房やぶどう膜の血管破綻を伴うと前房出血を生じる。基礎にCKDや甲状腺機能亢進症があり、これらが高血圧を介して網膜障害を引き起こす点が本態である。
診断
猫高血圧性網膜症の診断は血圧測定(ドプラ法/オシロメトリック法、>160 mmHgで有意)と眼底検査の組み合わせ。眼底所見:網膜血管の蛇行、網膜出血、網膜浮腫、漿液性網膜剥離。散瞳・対光反射消失は両側性網膜剥離を示唆。超音波で網膜剥離の範囲を評価。原因検索:T4(甲状腺機能亢進症、最多原因)、BUN/Cre/SDMA(CKD)、心エコー(心肥大)。標的臓器障害(TOD)の評価:心臓、腎臓、脳、眼。鑑別:FIP性脈絡網膜炎、リンパ腫性浸潤。アムロジピン0.125-0.25 mg/kg SIDが第一選択。
治療
アムロジピン0.625mg/頭 PO q24h(効果不十分なら1.25mg)。収縮期血圧160mmHg以下を目標。基礎疾患(CKD/甲状腺機能亢進症)の管理。網膜変化は不可逆の場合あり。
予防
高血圧性網膜症の予防: 定期的な健康診断。適切な栄養管理。ストレスの軽減。清潔な飼育環境の維持。異常の早期発見・早期受診。
予後
高血圧性網膜症の予後: 早期発見と適切な治療で多くの疾患は予後良好。慢性疾患は定期的モニタリングと治療調整で長期管理可能。
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