猫上部呼吸器感染症
概要
くしゃみや鼻水、目やにを引き起こす上気道のウイルスまたは細菌感染症です。
主な症状
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臨床徴候
猫上部呼吸器感染症の臨床徴候は気道閉塞・換気障害の部位により異なる。上気道: いびき・吸気性ストライダー・運動不耐性・吸気性チアノーゼ(短頭種気道症候群)。気管: 短く乾性の発作的咳(gander-honk)・ストライダー(気管虚脱)。下気道: 慢性咳・呼気性呼吸困難・喘鳴・換気不全(喘息・COPD様病態)。突発的悪化はストレス・運動・気温変化で誘発される。
原因
猫上部呼吸器感染症(猫風邪)は接触・飛沫感染性で、主病原体は猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)と猫カリシウイルス(FCV)で約80-90%を占め、Chlamydia felis・Bordetella・Mycoplasma が関与する。過密・多頭・シェルター環境、ストレス、未ワクチンでリスクが上昇する。FHV-1は回復後も三叉神経節に潜伏し、ストレスで再活性化する。
病態生理
猫上部呼吸器感染症(URI/猫風邪)はFHV-1(猫ヘルペスウイルス1型、全URIの40-50%)とFCV(猫カリシウイルス、30-40%)が主要原因で、Chlamydia felis、Bordetella bronchiseptica、Mycoplasma spp.が単独または混合感染する。FHV-1は三叉神経節に潜伏感染し、ストレス時に再活性化→反復性の結膜炎・鼻炎を引き起こす。FCVは口腔粘膜に親和性が高く、舌・口蓋の潰瘍を形成する。virulent systemic FCV(VS-FCV)は高致死率(>50%)の全身性血管炎を引き起こす変異株。多頭飼育・シェルター環境での感染圧が高く、子猫(移行抗体消失後の5-12週齢)は特に重症化しやすい (Thiry E et al. JFMS 2009;11:547-555)。
診断
猫上部呼吸器感染症(URI/猫かぜ)の診断は臨床所見が中心。多くは臨床診断で特異的検査不要。PCR検査(結膜/鼻腔スワブ): FHV-1(猫ヘルペスウイルス)、FCV(猫カリシウイルス)、Chlamydia felis、Bordetella、Mycoplasma felisの同定。培養: 二次性細菌感染の評価(慢性/難治例)。蛍光抗体法: Chlamydia felis(結膜スワブ)。CBC: 通常正常、重症例で好中球増多。胸部X線: 下部気道への波及(肺炎合併)の評価。FeLV/FIV検査: 免疫不全の評価(再発性URI)。原因の90%: FHV-1(40-45%)+ FCV(40-45%)。シェルター環境・多頭飼育で高発生率。子猫・未ワクチン猫に重症化リスク。
治療
酸素療法と保温と安静。ネブライゼーション(生理食塩水)。アモキシシリン-クラブラン酸12.5-25 mg/kg PO q12h(感染性の場合)。メロキシカム0.1 mg/kg PO q24hで疼痛管理。輸液(乳酸リンゲル40-60 mL/kg/日IV/SC)。栄養支持(食欲増進剤:ミルタザピン1.88 mg/cat q48h)。ストレス軽減と安静。
予防
猫上部呼吸器感染症の予防は環境因子の管理が中心。タバコの煙・室内塵・化学香料・粉塵への曝露回避。短頭種気道症候群: 適正体重維持、暑熱環境回避、必要に応じた外科的気道形成術。気管虚脱: 適正体重維持、ハーネス使用(首輪回避)、誘発因子(興奮・暑熱・脱水)の管理。喘息(猫): アレルゲン特定と回避、室内環境改善。
予後
免疫機能正常な成猫では多くが7-10日で自然回復し、予後良好。子猫・FIV/FeLV陽性猫では二次細菌感染→重度肺炎のリスクがあり予後注意。FHV-1は潜伏感染が生涯持続し、ストレス時の再活性化による反復性症状が続く。FCV口腔潰瘍は通常2-3週間で治癒。VS-FCVは致死率>50%で予後不良(施設レベルのアウトブレイクを引き起こす)。3種混合ワクチン(FHV-1/FCV/FPV)が重症化予防に有効 (Thiry E et al. JFMS 2009;11:547-555)。
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