慢性涙嚢炎
概要
鼻涙管・涙嚢の長期にわたる炎症と閉塞で、通常は歯科疾患(伸長した上顎歯根による鼻涙管圧迫)が原因。持続的な流涙、反復する白い眼脂、内眼角と前肢の被毛の固着を生じる。慢性例は、基礎の歯科/鼻涙管閉塞を解除しない限り感染が再発するため難治で、鼻涙管が永久的に狭窄することもある。
主な症状
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臨床徴候
ウサギにおける涙嚢炎(鼻涙管閉塞)の臨床徴候は病態と進行段階により異なる。慢性腎臓病: 多飲多尿・体重減少・食欲不振・嘔吐・口臭・脱水(早期は無症候)。急性腎障害: 無尿/乏尿・嘔吐・元気消失・電解質異常。下部尿路疾患(FLUTD/FIC): 頻尿・排尿困難・血尿・排尿時痛・不適切排尿、雄では尿閉(緊急)。尿路感染: 頻尿・血尿・濁尿・発熱(腎盂腎炎時)。
原因
ウサギにおける涙嚢炎(鼻涙管閉塞)の原因はネフロンの進行性損傷、尿路の閉塞・感染、または特発性の下部尿路炎症反応である。加齢、慢性脱水、腎毒性物質曝露(NSAID・抗凍液・ユリ・特定の抗菌薬)、全身性高血圧、糖尿病性腎症、免疫複合体性糸球体腎炎、遺伝性腎構造異常、ストレス関連の神経内分泌障害が主要リスク因子。早期は無症候性に進行するため、定期的な腎機能スクリーニング(SDMA・尿比重・尿蛋白)が重要となる。(ウサギは経口β-ラクタム抗菌薬禁忌、GI stasis予防が必須)
病態生理
持続的な鼻涙管閉塞(多くは上顎歯根の伸長による鼻涙管の変形)が慢性的な涙液うっ滞と反復性の細菌定着(通常Pasteurella)を招く。炎症の反復が鼻涙管壁を肥厚・瘢痕化させ、涙石が蓄積して閉塞を持続させる。経過とともに鼻涙管は不可逆的に狭窄しうるため、管理には感染の制御(反復的な鼻涙管洗浄、培養に基づく抗菌薬)と歯科的原因への対処の両方が必要となる。
診断
慢性流涙・内眼角の膿性眼脂・眼瞼周囲皮膚炎から疑診。涙嚢部圧迫で膿性排液の逆流を確認。鼻涙管フラッシュ(生理食塩水注入)で閉塞部位を特定(ウサギの鼻涙管は蛇行が強く閉塞しやすい)。頭部X線/CTで上顎臼歯根尖膿瘍による鼻涙管圧迫を評価(最多原因)。涙液排出液の培養(Pasteurella multocida)。フルオレセイン染色で角膜潰瘍を除外。造影鼻涙管撮影(ダクリオシストグラフィ)で閉塞部位を描出。
治療
滅菌生理食塩水による鼻涙管の反復洗浄(初期はしばしば週1回)、培養に基づく抗菌点眼(シプロフロキサシン0.3%またはクロラムフェニコール0.5% q6-8h)、必要に応じ全身抗菌薬(エンロフロキサシン5-10mg/kg PO q12h)。最も重要なのは基礎の歯科疾患の同定と治療(頭部X線/CT)— 臼歯・切歯の歯根伸長を矯正しない限り再発する。不快感にはメロキシカム0.3-0.6mg/kg PO q24h。経口ペニシリン系は絶対禁忌。長期にわたる間欠的な鼻涙管洗浄を要することがある。
予防
ウサギにおける涙嚢炎(鼻涙管閉塞)の予防は腎機能の早期スクリーニングと環境管理が中心。定期的健康診断(7歳以上は年1回、10歳以上は半年に1回)でクレアチニン・SDMA・尿比重・尿蛋白・血圧を評価。水分摂取量増加(ウェットフード・循環式給水器)、腎毒性物質(NSAID過量・抗凍液・ユリ・特定抗菌薬)の管理。FLUTD予防: ストレス軽減・低マグネシウム食・複数トイレ提供。歯科ケアによる細菌の腎播種予防。
予後
根治は要注意だが管理は良好。治癒は歯科/鼻涙管閉塞の解除に依存し、永久狭窄した鼻涙管では眼脂を管理可能に保つため継続的な間欠洗浄を要することがある。
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