エタノール中毒
概要
アルコール飲料・発酵パン生地(胃内でエタノールを産生)・発酵/腐敗果物の摂取によるエタノール中毒。犬はヒトより感受性が高い—エタノール半減期は短いがCNS効果はより顕著。症状:運動失調・CNS抑制・低体温・低血糖・代謝性アシドーシス。発酵パン生地は特に危険(継続的なエタノール産生+CO2によるGDVリスク)。犬の致死量:5.5〜7.9 g/kg(40%スピリッツで約14 mL/kg)。小型犬では驚くほど少量で中毒になりうる。
主な症状
原因
アルコール飲料(ビール・ワイン・スピリッツ—甘口/フルーティなカクテル・ワインの香りに犬が引き寄せられる)。未焼成の発酵パン生地(生生地の摂取→温かい胃内で発酵継続)。発酵/腐敗果実(リンゴ・梨・ベリー—特に秋)。アルコール含有マウスウォッシュ・香水/コロン(イソプロパノールも毒性あり)。ラム酒浸しレーズンやアルコールチョコレート(エタノール+ブドウの二重毒素)。ビール風味トリート。
病態生理
エタノールはGI管から急速に吸収(胃+小腸)→全体液に分布。CNS:GABA-A受容体の増強(麻酔様)+NMDA受容体阻害→用量依存的CNS抑制(鎮静→運動失調→意識消失→呼吸抑制→死亡)。代謝:エタノール→ADH→アセトアルデヒド→酢酸—糖新生阻害→低血糖(特に小型/若齢犬でグリコーゲン貯蔵が限られている)。代謝性アシドーシス(糖新生障害による乳酸アシドーシス+アセトアルデヒド)。末梢血管拡張による低体温。発酵パン生地:酵母が炭水化物をエタノール+CO2に変換→胃内でのエタノール継続産生+胃拡張(GDVリスク)→横隔膜圧迫による低換気。
治療
消化管除染:摂取後30〜60分以内かつCNS抑制なしに意識明瞭の犬のみ(鎮静した犬での嘔吐は誤嚥危険)。アポモルヒネ0.03 mg/kg IV。活性炭:エタノール(水溶性・急速吸収)への有効性は限定的—通常非推奨。パン生地摂取の場合:胃内冷水洗浄(低温で酵母活性を低下)+胃内減圧(GDV発症の場合は胃管)。血糖補正(最重要):50%ブドウ糖0.5〜1 mL/kg IV(25%に希釈)→2.5〜5%ブドウ糖CRI(LRS中)でBG 80〜150 mg/dL維持;6〜12時間は1〜2時間毎にBG確認。体温管理:外部加温(温毛布・加温IV輸液)(過剰加温禁忌—反跳性高体温)。代謝性アシドーシス:pH<7.2なら炭酸水素ナトリウム0.5〜1 mEq/kg IV。呼吸サポート:O2補充;SpO2<90%なら挿管+機械換気。IV輸液(LRS 3〜5 mL/kg/h)+ブドウ糖。制吐薬(マロピタント1 mg/kg SC)は気道を保護できるほど意識が回復してから。補充なしでBGを維持し完全に歩行可能になるまでモニタリング(通常用量/体格に応じて6〜24時間)。 [ECVN:Block] 【補助療法オプション — Equine & Canine Vet Nutrition (caninevet.jp)】 • For Antioxidant (アスタキサンチン+SOD+VitE+システイン): 抗酸化・慢性疾患免疫サポート • CPパウダー (プレバイオ+プロバイオ+サイリウム): 腸内細菌叢正常化・腸管バリア強化・腸腎連関 • Booster & Relax (アダプトゲン+Bビタミン複合体): ウイルス後回復・内分泌疾患エネルギー補給・高齢期慢性疲労 ※CPパウダー: 完全腸閉塞は禁忌
予防
全てのアルコール飲料をペットの届かない場所に保管。犬にアルコールを絶対与えない(ビールの「冗談」を含む)。発酵中のパン生地はペットが届かない場所(蓋付き容器や高い場所)に保管。庭に落ちた発酵果実を除去。人間の食物を共有する前にアルコール含有を確認。
予後
軽度〜中等度(運動失調・低血糖なし・歩行可能):優良—最終摂取後4〜12時間で回復。重度(低体温・BG<40 mg/dL・呼吸抑制):積極的ブドウ糖補充+加温+呼吸サポートで慎重。パン生地:GDV発生時は慎重。致死量摂取(>5 g/kg)で呼吸サポートなし:絶望的。重要:低血糖は小型犬と子犬において最も危険な合併症—積極的なBGモニタリングと補正が治療の基盤。
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