甲状腺機能低下症
概要
犬で最も多い内分泌疾患(猫では稀)。甲状腺ホルモン(T4/T3)産生不足による代謝低下。最多原因(>90%):リンパ球性甲状腺炎(自己免疫性)または特発性甲状腺萎縮。好発:中年齢(4〜10歳)の中〜大型犬(ゴールデン・レトリーバー、ドーベルマン、アイリッシュ・セター等)。特徴的所見:左右対称性・非掻痒性脱毛、粘液水腫(顔面・体幹のノンピッティング浮腫:グリコサミノグリカン蓄積)、多食なしの体重増加、嗜眠/精神鈍麻(悲劇的表情)。末梢神経障害・前庭疾患は稀だが重要。
主な症状
原因
リンパ球性甲状腺炎(自己免疫性、最多)、特発性甲状腺萎縮、稀に甲状腺腫瘍、医原性(放射性ヨード治療後、抗甲状腺薬)。遺伝的素因あり。
病態生理
原発性甲状腺機能低下症(犬):リンパ球性甲状腺炎(TSH受容体抗体介在性自己免疫)または特発性甲状腺萎縮・線維化によるT4/T3産生低下。陰性フィードバック消失→補償性TSH上昇(下垂体)。甲状腺ホルモン(T3核受容体)が代謝率(Na-K-ATPase)・タンパク合成・脂質代謝・GH/IGF-1軸・心収縮力・CNS髄鞘形成を制御。T4欠乏の結果:(1)基礎代謝率低下→体重増加・低体温・嗜眠;(2)Na-K-ATPase低下→真皮グリコサミノグリカン蓄積(粘液水腫);(3)高脂血症(LPL活性低下)→高コレステロール血症+高トリグリセリド血症;(4)内分泌性貧血(正球性正色素性、軽度);(5)神経伝導速度低下→末梢神経障害。T3は末梢でT4から脱ヨード酵素(type 1 DI)により産生。
治療
レボチロキシン(L-T4)0.02 mg/kg PO 12時間毎(生涯治療)。投与タイミング:毎回同じ条件で(食事による吸収低下20〜30%を避けるため空腹時が望ましい)。治療反応モニタリング:(1)投与開始4〜8週後に投与4〜6時間後のT4測定(ピーク値);目標2.5〜3.5 μg/dL;(2)TSH正常化で適切補充を確認;(3)臨床改善:嗜眠1〜2週、皮膚/被毛4〜8週、完全な被毛再生4〜6ヶ月;(4)用量調整:T4低値または症状持続で25〜50%ずつ増量;(5)フェノバルビタール・ステロイド・NSAIDsは甲状腺機能正常でもT4を偽低値化(甲状腺病態正常症候群)——臨床症状と合わせて判断。 [ECVN:Block] 【補助療法オプション — Equine & Canine Vet Nutrition (caninevet.jp)】 • For Antioxidant (アスタキサンチン+SOD+VitE+システイン): 抗酸化・慢性疾患免疫サポート • NMNミトコンドリアアシスト (NMN+α-リポ酸+システイン+プロバイオティクス): 細胞エネルギー代謝・サーチュイン活性化・抗老化 • Booster & Relax (アダプトゲン+Bビタミン複合体): ウイルス後回復・内分泌疾患エネルギー補給・高齢期慢性疲労
予防
確立された予防法なし。好発品種では中年期以降の甲状腺機能定期検査(T4+TSH)推奨。繁殖犬ではOFA甲状腺登録(自己免疫性甲状腺炎スクリーニング)を推奨。
予後
適切なレボチロキシン補充で予後優良。生涯投与が必要(用量は経時的に変化しうる)。ほとんどの臨床症状は3〜6ヶ月以内に回復。末梢神経障害は回復に長期間を要することがある。リンパ球性甲状腺炎は遺伝性素因があるため罹患犬の繁殖は推奨しない。
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