猫ヘルペスウイルス性角膜炎
概要
猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)による、猫で最も一般的な感染性角膜疾患。初感染(多くは子猫)では結膜炎と樹枝状角膜潰瘍を生じ、その後ウイルスは三叉神経節に生涯潜伏する。ストレスで再活性化し、再発性の樹枝状・地図状潰瘍、免疫介在性の実質性角膜炎、慢性の眼表面疾患を引き起こす。
主な症状
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臨床徴候
猫ヘルペスウイルス性角膜炎の臨床徴候は感染部位と病原体特性により多様だが、共通所見として発熱・元気消失・食欲不振・体重減少が認められる。局所感染では発赤・腫脹・疼痛・排膿を、全身感染では脱水・敗血症・多臓器不全に進展しうる。幼若・高齢・免疫抑制状態は重症化リスクが高く、早期介入が予後改善に直結する。
原因
猫ヘルペスウイルス1型(アルファヘルペスウイルス)。初感染、または三叉神経節に潜伏したウイルスの再活性化による。再活性化の誘因:ストレス(ペットホテル・新しい同居動物・分娩/授乳)、併発疾患、コルチコステロイド投与。
病態生理
FHV-1は結膜・角膜上皮に向性を持つアルファヘルペスウイルスである。初感染では上皮細胞での細胞溶解性複製により病的特徴である樹枝状(分枝状)潰瘍を形成する。ウイルスは三叉神経を逆行性に移動して神経節に生涯潜伏し、再活性化(ストレス・コルチコステロイド・併発疾患)により再発性の上皮病変を生じる。実質性角膜炎はウイルス抗原に対する遅延型過敏反応(免疫介在性)として発症し、角膜血管新生と細胞浸潤を来す。慢性化により角膜分離症(sequestrum)、瞼球癒着(symblepharon)、好酸球性角膜炎、涙液の質的・量的低下の素因となる。
診断
猫ヘルペスウイルス性角膜炎の診断はローズベンガル染色で樹枝状潰瘍(dendritic ulcer)を検出(猫FHV-1に特異的な所見)。フルオレセイン染色で上皮欠損の評価。角膜スワブからFHV-1 PCR検査。細隙灯検査で角膜間質の浮腫・血管新生・角膜黒色壊死症の合併を確認。慢性例では角膜間質性角膜炎(免疫介在性)を呈する。シルマー涙液試験で神経麻痺性角膜炎の合併を評価。鑑別:好酸球性角膜炎、角膜腐食症、外傷性潰瘍。治療:ファムシクロビル PO+局所抗ウイルス薬(シドフォビル、イドクスウリジン)。
治療
抗ウイルス点眼:シドフォビル0.5% q12h(1日2回で利便性が高く第一選択)またはイドクスウリジン0.1%/トリフルリジン q4-6h。全身性抗ウイルス薬:ファムシクロビル90 mg/kg PO q8-12h(中等度〜重度・再発例の経口第一選択)。L-リジン250-500 mg/頭 PO q12h(効果には議論があり一貫したエビデンスは乏しい)。上皮性(樹枝状)潰瘍:抗ウイルス薬+二次感染予防の広域抗菌点眼+反射性毛様体痙攣に対するアトロピン。免疫介在性の実質性角膜炎:活動性の上皮潰瘍を除外(フルオレセイン陰性)し、かつ全身性抗ウイルス薬併用下でのみ、シクロスポリン0.2%点眼または低力価ステロイド点眼を慎重に使用。支持療法:人工涙液、ストレス軽減、併発疾患の治療。再活性化は生涯リスク — 飼い主教育が重要。
予防
猫ヘルペスウイルス性角膜炎の予防にはワクチン接種(利用可能な場合)、新規・病気動物の隔離、厳格なバイオセキュリティ対策、適切な消毒プロトコル、既知のキャリアや汚染環境との接触回避が含まれる。
予後
猫ヘルペスウイルス性角膜炎の予後: ウイルスの種類と宿主の免疫状態による。ワクチン予防可能な疾患は予防が最善。支持療法で多くが回復可能。
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