下部気道感染症(肺炎)
概要
下気道および肺の感染症で、重度の呼吸困難を引き起こす。
主な症状
原因
細菌(Pasteurella, Bordetella, Streptococcus等)、ウイルス(パラインフルエンザ、アデノウイルス等)、または真菌の気道への感染が原因である。環境ストレス(温度変動、換気不良、粉塵)、免疫抑制、過密飼育、上気道の常在菌バランスの破綻が発症を促進する。日和見感染として複数病原体の混合感染も多い。
病態生理
病原体が宿主の防御機構を突破して組織に定着すると感染が成立する。病原体の毒素産生、組織侵入、細胞内寄生により直接的な組織障害が生じる。同時に宿主の免疫応答(炎症反���・補体活性化・サイトカインカスケード)が活性化されるが、過剰な免疫応答自体が組織損傷の原因となる場合がある。全身性炎症反応症候群(SIRS)から敗血症性ショック・多臓器不全への進行が最も危険な病態である。
治療
セキセイインコの下部気道感染症(肺炎) — 肺、気嚢、またはその両方の感染(肺炎/気嚢炎)。【緊急】: 鳥は呼吸器疾患が進行するまで代償する — 尾振り呼吸と開口呼吸が出現した時点で疾患は重度。ストレス/ハンドリング最小化(呼吸困難鳥では急性死を引き起こしうる)。【即座の酸素】: チャンバーまたはフローバイで吸入O2 40-60%。保温28-30°C。【診断ワークアップ】: 全身X線(AP・側面 — 肺野と気嚢混濁を評価)、気管洗浄または気嚢洗浄の細胞診+培養感受性、グラム染色、クラミジアPCR、真菌疑いにアスペルギルス抗原/抗体、CBC/生化学。【細菌性肺炎】: エンロフロキサシン15 mg/kg PO/IM q12h(第一選択 — 優秀な肺移行性)×14-21日間。代替: トリメトプリム・スルファメトキサゾール30 mg/kg PO q12h。嫌気性菌要素疑いにメトロニダゾール20-50 mg/kg PO q12h追加。重症例: エンロフロキサシン+アモキシシリン・クラブラン酸125 mg/kg PO q12hでグラム陽性/陰性を広域カバー。【アスペルギルス症】: イトラコナゾール5-10 mg/kg PO q12h 4-8週間(第一選択全身抗真菌薬)。ネブライズドアムホテリシンB(滅菌水に1 mg/mL)15分q12h — 抗真菌薬を呼吸器に直接送達。テルビナフィン10-15 mg/kg PO q12h — イトラコナゾールと相乗効果。アスペルギルス肉芽腫は気嚢内視鏡下で外科的減量が必要な場合あり。【クラミジア肺炎】: ドキシサイクリン25-50 mg/kg PO q24h×45日間(必須期間)。【ネブライゼーション】: 生食±F10(1:250)またはゲンタマイシン(生食10mLに50mg)q8-12h 10-15分 — 気嚢加湿に不可欠(鳥類気嚢には粘液線毛エスカレーターがない)。【支持療法】: 加温SC/IO輸液50-100 mL/kg/日(過輸液回避 — 肺水腫悪化)。メロキシカム0.5-1 mg/kg PO q12-24h。食欲不振時Harrison's Recovery Formulaでそ嚢チューブ給餌。【モニタリング】: X線を1・2・4週で反復。細菌感染では3-5日以内に臨床改善が期待される。気嚢混濁の消退は臨床改善に遅れる。【予後】: 要注意 — 鳥類呼吸器解剖(一方向性気流、気嚢系)のため下部気道感染は哺乳類より深刻。早期積極的治療で予後改善。参考: Tully TN (2009) Vet Clin North Am Exot Anim Pract; Phalen DN (2006).
予防
適切なワクチネーションプログラムの実施、衛生的な飼育環境の維持、新規導入動物の検疫期間の設定が基本的予防策である。過密飼育の回避、適切な栄養管理による免疫力の維持、ストレス軽減も重要である。感染動物との接触を避け、汚染された器具や環境の消毒を徹底する。定期的な健康診断による早期発見と早期治療が蔓延防止に不可欠である。
予後
適切な抗菌薬療法と感染源制御で予後良好。慢性または深部感染は長期管理が必要。免疫不全の個体はより予後要注意。
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