心房細動
概要
心疾患を有する大型犬に多い不整脈で、心機能低下を引き起こします。
主な症状
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臨床徴候
犬における心房細動の臨床徴候は心機能低下の程度により段階的に進行する。代償期(無症候): 心雑音が唯一の所見、聴診で発見される。早期心不全: 運動不耐性・咳(左心不全)・腹水(右心不全)。進行性心不全: 呼吸困難・チアノーゼ・失神・夜間咳。末期: 起座呼吸・肺水腫・心原性ショック。猫では FATE(大動脈血栓塞栓症)として急性後肢麻痺・冷感・疼痛・パルス消失で発症することがある。
原因
DCM(最多の基礎疾患)、進行したMMVD、先天性心疾患、甲状腺機能亢進症(稀)。大型犬・超大型犬(心房が大きく維持しやすい):アイリッシュウルフハウンド、グレートデーン、ニューファンドランド、ドーベルマン。小型犬では孤立性AFは極めて稀。
病態生理
心房の電気的リモデリング→心房内の多数のリエントリー回路→心房の無秩序な電気活動→心房の有効な収縮喪失→不規則で通常は速い心室応答(HR 160〜250/min)→心拍出量低下→うっ血性心不全の悪化。基礎心疾患(DCM・MMVD・先天性心疾患)の合併がほぼ必発。大型犬では孤立性AFもあり。
診断
心電図で不整なRR間隔、f波(P波消失)、正常QRS幅を確認。ホルター心電図(24時間)で持続性vs発作性を判定。心エコーで左房拡大(LA/Ao>1.6)、基礎疾患(DCM、MMVD、先天性心疾患)を評価。心室レート測定(>160bpmで高レートAF)。甲状腺機能検査(T4/TSH)で甲状腺機能亢進を除外。大型犬(アイリッシュウルフハウンド、グレートデーン)にlone AFとして発生。胸部X線で肺うっ血・心拡大を評価。
治療
基礎心疾患の治療が根本。レートコントロール(心室応答数の低減)が主な治療目標。ジルチアゼム(0.5-1.5 mg/kg PO q8h — カルシウムチャネル遮断薬)第一選択。ジゴキシン(0.005-0.01 mg/kg PO q12h — 狭い治療域、血中濃度モニタリング必須 目標1.0-2.0 ng/ml)。併用療法:ジルチアゼム+ジゴキシンが最も効果的。β遮断薬:アテノロール(0.25-1 mg/kg PO q12h)は心不全がない場合のみ。うっ血性心不全合併:フロセミド(2-4 mg/kg PO q8-12h)+ピモベンダン(0.25 mg/kg PO q12h)+エナラプリル(0.5 mg/kg PO q12-24h)。lone AF(基礎心疾患なし、大型犬に多い):レートコントロール単独。目標安静時心拍数:<160 bpm。Holterモニタリングで評価。好発犬種:大型犬(アイリッシュウルフハウンド、グレートデーン、ドーベルマン)。参考文献: Gelzer AR et al. JVIM 2009; Pedro B et al. JVIM 2018.
予防
確実な予防法はない。基礎心疾患の早期管理、定期的な心臓聴診・心電図。レート管理(ジルチアゼム・ジゴキシン)で心室応答を制御。
予後
犬における心房細動の予後は基礎心疾患の種類と心不全の進行度により異なる。早期診断と病態に応じた適切な治療・モニタリングにより多くの症例で良好な経過が期待できるが、進行例・合併症を伴う例では予後が悪化しうる。
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