横隔膜ヘルニア
概要
外傷による横隔膜の裂傷を通じて腹腔臓器が胸腔内に入り込む状態です。
主な症状
※ 症状をクリックすると、その症状を示すうさぎの他の疾患を確認できます
臨床徴候
ウサギにおける横隔膜ヘルニアの臨床徴候は病態と進行段階により多様である。一般的非特異的所見(食欲不振・元気消失・体重減少)に加え、罹患臓器・系統に特異的な症状が顕在化する。病歴聴取と詳細な身体検査により症状パターンを把握し、補助検査で確定診断に至る。早期発見と適切な介入が予後改善の鍵となる。
原因
消化器系組織への物理的外傷が原因。転落・ケージ損傷・取扱い事故・同居個体や捕食者からの咬傷・環境危険物が一般的原因。ウサギの解剖学的特性が特定の損傷タイプへの素因となりうる。二次合併症として感染・治癒遅延・慢性疼痛がある。
病態生理
ウサギの消化器系組織への外傷性損傷は、挫傷・裂傷・骨折を含む直接的な機械的組織損傷を引き起こす。急性炎症反応により浮腫・出血・疼痛が生じる。二次合併症として細菌汚染・感染・治癒遅延がある。ウサギでは損傷からのストレスが追加の全身合併症を引き起こしうる。
診断
胸部X線で横隔膜ラインの消失・腹腔臓器の胸腔内脱出を確認。超音波検査で横隔膜の断裂部位と脱出臓器を同定。CT検査で詳細な解剖学的評価。血液ガス分析で低酸素血症・高炭酸ガス血症を確認。外傷歴(落下・踏みつけ)の聴取。ウサギは絶対的鼻呼吸動物であり、胸腔容積の減少は急速に致死的な呼吸不全を引き起こす。安定化後に外科的修復を実施。
治療
緊急 — 横隔膜ヘルニアは安定化後に外科的修復が必要。初期安定化: フェイスマスクまたはフローバイで酸素供給(保定ストレスを避ける)、前体部を挙上して胸腔への腹腔臓器圧迫を軽減。最小限のハンドリング — ウサギはストレスに極めて敏感。緊張性気胸または著明な胸水があれば胸腔穿刺。胸部X線で診断(横隔膜シルエット消失、腹腔臓器の胸腔内存在)。外科的修復: 腹部正中切開アプローチ、脱出臓器を腹腔内に愛護的に還納、臓器生存性を評価(腸管、肝臓、脾臓)、吸収性モノフィラメント縫合糸で横隔膜裂孔を閉鎖。開胸手術中は間欠的陽圧換気(IPPV)が必要。N2Oは使用しない。修復後に著明な気胸があれば胸腔ドレーン留置。周術期抗菌薬: エンロフロキサシン 10-20 mg/kg SC(経口ペニシリンは絶対禁忌)。疼痛管理: ブプレノルフィン 0.01-0.05 mg/kg SC/IM q6-8h + メロキシカム 0.3-1.0 mg/kg SC q24h。術後のGI stasis予防が極めて重要: チモシー牧草を直ちに提供、摂食しなければ強制給餌、メトクロプラミド 0.5-1.0 mg/kg SC q6-8h。保温(20-24℃)。呼吸数と呼吸努力を48-72時間注意深く監視。術後24時間および7日目に胸部X線。参考文献: Harcourt-Brown (2002), Quesenberry & Carpenter (2020).
予防
予防には適切な飼育管理(適切な食事・清潔な環境・最適な温湿度);定期的な獣医師の健康診断;新規動物の検疫;ストレス軽減;種特異的予防措置が含まれる
予後
外傷の予後は損傷の重症度と合併症の有無に依存する。軽度外傷は適切な創傷管理で予後良好。重度外傷、多発骨折、脊髄損傷は予後慎重〜不良。早期治療と適切な疼痛管理が回復を促進する。
関連する薬品
※ 薬品名をクリックすると詳細な投与量・副作用情報を確認できます
呼吸器の他の疾患(うさぎ)
VetDictでうさぎの鑑別診断を行う
症状チェッカーを使う関連する疾患
VetDict は獣医師(DVM)が開発した臨床支援ツールです。