歯肉炎・歯周病
概要
猫の約70%が3歳以上で何らかの歯周疾患を有する。歯面へのバイオフィルム形成→歯肉炎→歯周炎(歯根膜・歯槽骨破壊)と段階的に進行。猫では犬と異なり歯頸部吸収病変(FORL/tooth resorption)が30-70%に併発し、疼痛の主因となる。口臭・流涎・食欲低下が主徴。全身麻酔下の歯科X線と歯周プロービングが診断に必須で、進行例では抜歯が根治的治療。口腔内細菌の血行性播種による心臓・腎臓・肝臓への影響も懸念される。
主な症状
原因
病原体(細菌・ウイルス・真菌・原虫)の感染が直接的な原因であり、宿主の免疫力低下、過密飼育、不衛生な環境、慢性的ストレス、栄養不良、併発疾患が感染リスクを著しく増大させる。病原体の毒力と宿主の免疫応答のバランスが発症と重症度を決定する。若齢・老齢個体や免疫抑制状態では感染が重篤化しやすい傾向にある。
病態生理
病原体が宿主の防御機構を突破して組織に定着すると感染が成立する。病原体の毒素産生、組織侵入、細胞内寄生により直接的な組織障害が生じる。同時に宿主の免疫応答(炎症反���・補体活性化・サイトカインカスケード)が活性化されるが、過剰な免疫応答自体が組織損傷の原因となる場合がある。全身性炎症反応症候群(SIRS)から敗血症性ショック・多臓器不全への進行が最も危険な病態である。
治療
歯科スケーリング+ポリッシング: 全身麻酔下。歯石除去(超音波スケーラー)、 歯肉縁下キュレッタージ、研磨。重度歯周病: 罹患歯の抜歯(猫では保存療法より抜歯が推奨されることが多い)。 FORL Type 1: 全抜歯。Type 2: 歯冠切断術(Crown amputation)。 根尖膿瘍: 抜歯+膿瘍ドレナージ。抗菌薬(重度感染時): クリンダマイシン5.5-11 mg/kg PO q12h × 7-10日。 アモキシシリン-クラブラン酸12.5-25 mg/kg PO q12h。疼痛管理: メロキシカム0.05 mg/kg PO/SC q24h(短期)、 ブプレノルフィン0.02 mg/kg OTM q8-12h(周術期)。家庭ケア: 歯磨き(酵素歯磨き粉)、デンタルダイエット(VOHC認定製品)。予後: 定期的な歯科処置で管理可能。FCGS併発例は全臼歯抜歯が必要な場合あり。 [ECVN:Block] 【補助療法オプション — Equine & Canine Vet Nutrition (caninevet.jp)】 • カミデミルク (消化吸収しやすい流動性栄養): 食欲不振・クリティカルケア・経管栄養 ※カミデミルク: 完全腸閉塞は禁忌; 重症膵炎は低脂肪配合
予防
適切なワクチネーションプログラムの実施、衛生的な飼育環境の維持、新規導入動物の検疫期間の設定が基本的予防策である。過密飼育の回避、適切な栄養管理による免疫力の維持、ストレス軽減も重要である。感染動物との接触を避け、汚染された器具や環境の消毒を徹底する。定期的な健康診断による早期発見と早期治療が蔓延防止に不可欠である。
予後
予後は病原体の種類、感染の重症度、宿主の免疫状態、治療開始の時期に大きく依存する。早期に適切な抗微生物療法が開始されれば多くの感染症で良好な転帰が期待できる。免疫抑制状態の動物や重度の敗血症を呈する症例では予後不良となりうる。慢性感染では完治が困難な場合があり、長期的な管理と再発防止策が必要となる。
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