💉 フクロモモンガの鎮静・麻酔プロトコル
Sugar Glider — 9プロトコル
概要:フクロモモンガは非常に小型(80-160g)で麻酔リスクが高い。低体温・低血糖が主な合併症。有袋類のため薬物代謝が胎盤哺乳類と異なる可能性がある。イソフルラン吸入が最も安全。ストレスに非常に弱く、自咬症のリスクあり。
⏱ 絶食・絶水:2-4時間絶食のみ(低血糖リスク)。
鎮静 Sedation
鎮静(検査・軽処置)
低リスク
| 薬品 | 用量 | 経路 | 備考 |
|---|---|---|---|
| イソフルラン(チャンバー) | 3-5% induction → 1-2% mask maintenance | Inhalation (chamber/mask) | 小型のため吸入チャンバーでの鎮静が最も安全。マスク維持に速やかに移行。 |
| ミダゾラム+ブトルファノール | 0.5 mg/kg + 0.2 mg/kg | IM | 軽度鎮静。拮抗可能。トルポール(擬死)との鑑別に注意。 |
📝 フクロモモンガは攻撃的になることがあるため、鎮静が検査に必要な場合が多い。トルポール(低体温・低血糖時の擬死状態)との鑑別を必ず行う。滑空膜を傷つけないよう注意。
前投薬 Premedication
前投薬
低リスク
| 薬品 | 用量 | 経路 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ミダゾラム+ブプレノルフィン | 0.5 mg/kg + 0.01-0.03 mg/kg | IM/SC | 小型のため用量計算を特に正確に。インスリン用シリンジ使用。 |
📝 フクロモモンガは社会的動物。可能であれば、同居個体を近くに置いてストレス軽減。膜翼(滑空膜)を傷つけないよう注意。
導入 Induction
吸入麻酔(推奨)
中リスク
| 薬品 | 用量 | 経路 | 備考 |
|---|---|---|---|
| イソフルラン(チャンバー+マスク) | Induction: 3-5%, Maintenance: 1-3% | Inhalation | 最も推奨される方法。小型チャンバーで導入後、マスク維持。 |
📝 フクロモモンガは皮膚が薄く、IVアクセスは外側尾静脈(lateral tail vein)。IOアクセス(脛骨)が代替。
注射麻酔(IV確保困難時)
中リスク
| 薬品 | 用量 | 経路 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ケタミン+メデトミジン | 10-20 mg/kg + 0.05-0.1 mg/kg | IM/SC | アティパメゾールで拮抗。筋肉量が少ないためSCが安全。 |
| アルファキサロン | 5-10 mg/kg | IM/SC | IM投与可。吸入への移行を推奨。 |
📝 術後の自咬症予防のためエリザベスカラー(小型)を装着。ストレス軽減のためポーチ(袋)を回復環境に提供。
維持 Maintenance
維持(吸入麻酔)
中リスク
| 薬品 | 用量 | 経路 | 備考 |
|---|---|---|---|
| イソフルラン | 1-2.5% | Mask | 気管挿管は困難。マスク維持が標準。非常に小型(100-160g)のため薬用量計算に注意。 |
📝 低体温・低血糖のダブルリスク。保温環境(28-30°C)と術中輸液(維持量の1.5-2倍)で管理。膜翼(滑空膜)を広げた状態で固定しない。
局所・区域麻酔 Local/Regional
局所麻酔
低リスク
| 薬品 | 用量 | 経路 | 備考 |
|---|---|---|---|
| リドカイン | Max 4 mg/kg | Local infiltration | 0.5%に希釈。自咬症(self-mutilation)の創傷デブリードマンや腫瘤切除に。膜翼(パタジウム)を傷つけないよう注意。 |
📝 フクロモモンガの自咬症は術後ストレスで悪化することがある。局所麻酔で術後痛を軽減し、自咬リスクを低減。エリザベスカラーの検討。
モニタリング Monitoring
モニタリング・回復
低リスク
📝 覚醒後は暗く暖かいポーチに入れ、蜂蜜水を提供(低血糖予防)。術後鎮痛: メロキシカム0.2-0.5 mg/kg PO/SC q24h。
覚醒 Recovery
覚醒・回復
中リスク
📝 低体温・低血糖のダブルリスク。28-30°Cの加温環境で管理。覚醒後は果物や蜂蜜水など高カロリー食を少量提供。自咬症(self-mutilation)の既往がある個体は術後のエリザベスカラー着用を検討。覚醒時のパラシュート反射(四肢を広げる)は正常。
緊急対応 Emergency
緊急対応
高リスク
| 薬品 | 用量 | 経路 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ドキサプラム | 5-10 mg/kg | SC/IP | 呼吸停止時の第一選択。 |
| エピネフリン | 0.003-0.01 mg/kg | IP/IO | CPA時。有袋類特有の薬物代謝差を考慮。 |
📝 フクロモモンガのCPR: 非常に小型のため指先で穏やかに胸骨圧迫。トルポール(低体温休眠)と死亡の鑑別が重要(加温+刺激で反応確認)。覚醒後は自咬症予防のためエリザベスカラー装着。暗いポーチで回復。
📚 参考文献(フクロモモンガ全般)
- Longley LA. Anaesthesia of Exotic Pets. Saunders Elsevier; 2008.
- Johnson-Delaney CA. Sugar gliders. In: Quesenberry KE et al., eds. Ferrets, Rabbits, and Rodents. 4th ed. Elsevier; 2020:385-400.
- Carpenter JW. Exotic Animal Formulary. 6th ed. Elsevier; 2023.
フクロモモンガの鑑別診断・薬用量を確認する
症状チェッカーを使う他の動物種の麻酔プロトコル
※ 本ページの麻酔プロトコル・用量は獣医学的参考資料であり、麻酔管理の代替ではありません。各症例のASA分類・併存疾患を評価し、必ず獣医師の判断のもとで実施してください。
VetDict は獣医師(DVM)が開発した臨床支援ツールです。
VetDict は獣医師(DVM)が開発した臨床支援ツールです。