ハエウジ症(フライストライク)
概要
ウサギにおける寄生虫性の皮膚疾患。ハエウジ症(蠅蛆症)は適切な診断と治療管理が重要である。早期発見と適切な介入が予後改善の鍵となる。
主な症状
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臨床徴候
ウサギにおけるハエウジ症(蠅蛆症)の臨床徴候は感染部位と病原体特性により多様だが、共通所見として発熱・元気消失・食欲不振・体重減少が認められる。局所感染では発赤・腫脹・疼痛・排膿を、全身感染では脱水・敗血症・多臓器不全に進展しうる。幼若・高齢・免疫抑制状態は重症化リスクが高く、早期介入が予後改善に直結する。
原因
ウサギにおけるハエウジ症(フライストライク)の原因: キンバエやクロバエなどの双翅目昆虫が湿った汚染された皮膚・被毛に産卵し、孵化した幼虫(ウジ)が生体組織を侵食する。会陰部の糞便・尿汚染が最大のリスク因子であり、下痢(盲腸便軟化症)、肥満による自己グルーミング不能、尿失禁、歯科疾患による流涎が素因となる。高温多湿の夏季に好発し、屋外飼育のウサギで特にリスクが高い。
病態生理
ハエの成虫が湿潤・汚染された皮膚に産卵し、数時間以内に孵化した幼虫が表皮を貫通して皮下組織を侵食する。幼虫の分泌する消化酵素とアンモニアが組織壊死を急速に進行させる。広範な組織破壊により毒素が血中に吸収され、エンドトキシンショック・敗血症・多臓器不全に至る。ウサギは疼痛とストレスに極めて敏感であり、ショック状態への移行が速い。
診断
臀部・会陰部の悪臭・湿潤創傷から疑診。視診で蛆虫(主にLucilia sericata)を創傷内に確認。体表の徹底的な検査で蛆虫の範囲と深達度を評価。肥満・歯科疾患による盲腸便付着が素因。CBC/生化学でPCV低下(失血・毒素吸収)、BUN上昇(脱水)、低体温・ショック所見。ウサギは疼痛で急性ストレス性ショック→心停止のリスクが高い。鎮静はV-gel挿管準備下で実施。素因疾患(肥満、関節炎、歯科疾患、尿路感染)の精査が再発予防に必須。
治療
ハエウジ症(フライストライク)は緊急疾患であり即座の介入が必要。ミダゾラム0.5-1.0 mg/kg IM+ブトルファノール0.1-0.5 mg/kg IMで鎮静(安定していればイソフルラン)。鉗子で全てのウジ虫を丁寧に手作業除去 — 幼虫は皮下組織や体腔深部に潜入しうる。温生理食塩水で創部を十分に洗浄。壊死組織のデブリードマン。疼痛管理: メロキシカム0.3-0.5 mg/kg SC q24h+ブプレノルフィン0.02-0.05 mg/kg SC q6-8h(マルチモーダル鎮痛必須 — ウサギは極めて疼痛感受性が高い)。二次感染にエンロフロキサシン10-20 mg/kg PO/SC q12hまたはTMS 30 mg/kg PO q12h。経口ペニシリンは絶対禁忌(致死的腸内細菌叢破壊)。ショックにIV晶質液(10 mL/kgボーラス後10 mL/kg/hr)。フェイスマスクで酸素投与。体温維持のため積極的加温(35.5-38.5℃目標 — 低体温=予後不良徴候)。Critical Care(Oxbow)q6-8hでシリンジ給餌。医療用ハチミツまたはスルファジアジン銀で局所創傷管理。広範な組織欠損・体腔穿通・敗血症性ショックの重症例では安楽死を率直に検討。基礎疾患の治療: 肥満・歯科疾患・盲腸内細菌叢異常/下痢・尿失禁・関節炎によるグルーミング不能。フィプロニルは絶対禁忌(ウサギに致死的)、ペルメトリンも毒性あり。イベルメクチン0.2-0.4 mg/kg SCで残存幼虫駆除。シロマジン(Rearguard)外用で高リスク期の予防。参考文献: Harcourt-Brown (2002), Varga (2014) 2nd ed.
予防
ウサギにおけるハエウジ症(蠅蛆症)の予防は適切なワクチネーションプログラムの実施が中核である(利用可能な場合)。衛生的飼育環境の維持、新規導入動物の検疫期間設定(最低14日、感染症によっては60日以上)、過密飼育の回避、適切な栄養管理による免疫力維持、ストレス軽減が重要。感染動物との接触回避、汚染器具・環境の消毒(次亜塩素酸・アルコール系・第四級アンモニウム製剤を病原体に応じて選択)を徹底する。定期的健康診断による早期発見と治療が蔓延防止に寄与する。
予後
早期発見・早期治療で予後はやや良好〜良好。広範な組織壊死やショック状態に至った重症例では予後不良〜絶望的であり、安楽死の検討が必要。回復後も再発リスクが高く、基礎疾患(肥満・下痢・歯科疾患)の管理と夏季の臀部チェック徹底が不可欠。
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