気嚢ダニ症
概要
気管吸啜ダニの呼吸器寄生で、呼吸困難を引き起こす。
主な症状
原因
寄生虫(線虫・条虫・吸虫・原虫・外部寄生虫)の感染が直接的な原因である。感染経路には経口摂取、経皮侵入、節足動物媒介、中間宿主の捕食など極めて多様な様式がある。過密飼育、衛生管理不良、免疫抑制、定期的予防投薬の未実施が感染リスクを上昇させる。宿主の免疫状態と寄生虫負荷量が臨床症状の発現と重症度を決定する。
病態生理
寄生虫は宿主組織に物理的損傷を与え、栄養を奪取し、免疫応答を修飾する。消化管寄生虫は粘膜損傷・吸血・栄養吸収障害を引き起こす。組織移行期の幼虫は機械的組織破壊と好酸球性炎症を惹起する。寄生虫の分泌排泄産物は宿主免疫をTh2応答に偏向させ、Treg誘導により免疫回避を達成する。大量寄生では貧血・低蛋白血症・腸閉塞などの重篤な合併症が生じる。
治療
セキセイインコの気嚢ダニ症(気管吸啜ダニ/Sternostoma tracheacolum) — 気管・鳴管・気管支・気嚢に寄生する絶対呼吸器寄生虫。セキセイインコとコキンチョウが最も多く罹患。【診断】: 透照法(腹側頸部の羽毛を湿らせペンライトを当てると気管内に暗い移動する点=ダニが見える)。聴診でクリック音/喘鳴。剖検では気管/気嚢表面に黒点が可視。【第一選択治療】: イベルメクチン0.2 mg/kg SC(胸筋)またはPO、q10-14日で3-4回反復し全ライフサイクルをカバー(卵→幼虫→若虫→成虫 約21日間)。代替投与法: イベルメクチン0.02 mg/mLを飲水に3日間連続、3週間休薬、2-3サイクル反復。モキシデクチン0.2 mg/kg PO/局所(頸背部皮膚)q10-14日×2-3回 — イベルメクチンより持続時間が長い。セラメクチン(レボリューション)6-12 mg/kg 頸背部に局所塗布 — 残効性が長いため単回で十分な場合あり、症状持続なら30日後に再投与。【注意】: 衰弱鳥でのイベルメクチン毒性 — 正確な用量を確保(小型インコには1%製剤を0.1 mg/mLに希釈)。重度衰弱鳥にはイベルメクチンを使用しないこと — 大量のダニ死滅が気道内残骸による急性呼吸閉塞を誘発しうる。【支持療法】: 重度呼吸困難に酸素補給。治療後の気道残骸除去にF10消毒薬または生食でネブライゼーション。保温28-30°C。【群管理】: 臨床症状に関係なく接触鳥全羽を治療 — 無症候性キャリアが多い。環境清掃(ダニは宿主外で短期間生存)。直接接触と親子間給餌が主要感染経路。【モニタリング】: 各治療来院時に呼吸音と透照法で再評価。慢性重度感染は気管/鳴管に永久的損傷を残しうる。参考: Spicer GS (1987) J Med Entomol; Schrader L et al. (2018) Vet Parasitol.
予防
定期的な予防的駆虫プログラムの実施が最も効果的な予防策である。フィラリア予防薬の通年または季節的投与、ノミ・マダニ予防薬の定期使用、環境中の糞便の速やかな除去、中間宿主との接触制限が重要である。新規導入動物の糞便検査と駆虫処理、飼育環境の衛生管理、過密飼育の回避により寄生虫感染リスクを大幅に低減できる。
予後
適切な駆虫薬治療で予後良好。環境管理なしでは再感染の可能性あり。
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