精巣捻転
概要
精巣の回転により血流遮断され急激な痛みを伴う、停留精巣で多発。
主な症状
原因
停留精巣(最多素因、腹腔内精巣が犬精巣捻転の90%)、精巣腫瘍(セルトリ細胞腫、精上皮腫、間質細胞腫)、外傷、停留精巣犬の激しい運動、精巣導帯固定の先天欠損。
病態生理
精巣捻転は精索の長軸周囲回転により精巣血流遮断を起こす状態。解剖学的に2型:(1)鞘膜外捻転(犬で多い)は鞘膜が陰嚢に付着したまま精索全体が鞘膜上方で捻転;(2)鞘膜内捻転(bell-clapper deformity)では精巣が鞘膜内で自由懸垂し回転素因。停留精巣(特に腹腔内)は精索固定欠如と可動性増加により陰嚢内精巣より遥かに捻転しやすい;停留精巣は腫瘍化(セルトリ細胞腫、精上皮腫)リスクも高く、大型腫瘍化精巣は重く捻転素因。捻転経過:初期は静脈閉塞(動脈圧より低圧)によるうっ血と浮腫、続いて動脈流入閉塞による虚血。完全動脈閉塞4-8時間で不可逆的壊死。手術的整復時の再灌流障害でTNF-α、IL-6、ROSなど炎症メディエーター放出、全身炎症反応症候群の可能性。両側精巣はpampiniform plexus結合を介し血流共有のため、片側長時間捻転で対側精巣稔性も損なう可能性あり。
治療
緊急精巣摘出が選択治療、12時間以降は救済率ほぼ0%。安定化:均衡晶質液10-20 mL/kg/hr輸液、オピオイド鎮痛(メサドン0.2-0.5 mg/kg IVまたはヒドロモルフォン0.1 mg/kg IV)、制吐(マロピタント1 mg/kg IV)。画像診断:陰嚢超音波で拡大低エコー精巣+カラードプラ血流欠如/低下(陰嚢捻転のゴールドスタンダード)、腹部超音波で停留精巣捻転は拡大腹腔内精巣+血流低下/消失。術前検査:CBC(白血球増多多い)、生化学、凝固検査、胸部X線(腫瘍時の転移確認)。手術:腹腔内捻転は腹部正中切開(膀胱・鼠径輪近傍尾部腹部に精巣同定)、鼠径停留は鼠径切開、陰嚢内は陰嚢/鼠径横切開。捻転部位より近位で精索を二重結紮(結紮前に整復すると炎症メディエーター塞栓シャワーの可能性のため整復しない)。再発防止と対側停留精巣除去のため同術中に対側精巣摘出。停留精巣捻転の40-50%に併発腫瘍があるため病理組織検査必須。抗生剤:導入時セファゾリン22 mg/kg IV、壊死組織あれば継続、なければ術後24時間で中止。術後NSAIDs(カルプロフェン4.4 mg/kg PO SID)で抗炎症。
予防
停留精巣犬はOHE相当年齢(6-12ヶ月)で日常的去勢実施で捻転と腫瘍リスク両方を排除。対側リスクもあるため片側停留精巣摘出より両側精巣摘出を優先。停留精巣犬の繁殖を避ける(遺伝形質)。
予後
罹患精巣の迅速な摘出で予後極めて良好(生存率>95%)。停留精巣捻転の予後は併発腫瘍に依存:良性で95%、転移を伴うセルトリ細胞癌で不良。長時間捻転で対側精巣稔性低下の可能性あるが、停留精巣犬では繁殖はほぼ問題なし(元々不妊)。術後再灌流SIRSは稀だが回復期延長の原因になりうる。
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