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犬 (Dog) その他 軽度

雌犬不妊症(受胎困難・不妊症)

Female Canine Infertility / 雌犬不妊症(受胎困難・不妊症)

概要

規則的な発情周期と交配があるにもかかわらず受胎できない状態。一次性(経産経験なし)と二次性(以前は妊娠経験あり)に分類。

主な症状

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原因

【背後に隠れた感染症を必ず除外】受胎低下・不妊の最重要鑑別として無症候性の感染症を見逃さないことが肝要。①ブルセラ・カニス(Brucella canis):犬の繁殖障害の主要原因の一つ。外見上健康な雌でも早期胚死・妊娠中後期の流産・受胎不成立を起こす無症候性キャリアが珍しくない。届出義務のある人獣共通感染症であり、すべての不妊・受胎低下症例で血清学(RSAT/2-ME-RSAT・AGID)+PCRによる除外が必須(Keid 2017; Santos 2021)。②無症候性(亜臨床性)細菌性子宮内膜炎(E. coli、β溶血性連鎖球菌):子宮内膜スワブの培養・細胞診で同定、子宮内膜の受容性低下で受胎率が低下。③犬ヘルペスウイルス1型(CHV-1):胚・胎子死。④マイコプラズマ/ウレアプラズマ。これら感染性原因は明らかな全身症状を欠くことが多く「隠れた」受胎低下の主因となる。【非感染性】一次不妊:卵巣機能不全(黄体機能不全)、輸卵管閉塞、先天性生殖器異常。二次不妊:子宮内膜瘢痕化(反復性pyometra・内膜炎)。ホルモン異常(LH不足、progesterone低下)。高齢(7才以上で妊娠維持率低下)。栄養不良。甲状腺機能低下症。肥満。過去の難産・帝王切開。交配技術的問題(交配時期の誤り)。

病態生理

受胎困難のメカニズムは多因子:(1)排卵障害→受精卵がない、(2)輸卵管障害→精子輸送不全・受精卵移動障害、(3)受精卵着床不全→子宮内膜受容性低下、(4)子宮内膜病変→着床環境不適切、(5)免疫学的因子→反復着床失敗、(6)オスの精子問題、(7)交配時期の誤り。【感染性機序(見逃されやすい「隠れた」原因)】Brucella canisは胎盤栄養膜・生殖器上皮に親和性を持ち胎盤炎・胚吸収・流産をきたすが、雌は発熱等の全身症状を欠くことが多く『受胎しない』ことのみが唯一の主訴となりうる(無症候性キャリア)。亜臨床性子宮内膜炎は明らかな膣分泌物を伴わずに子宮内膜の受容性を低下させ着床環境を悪化させる。完全な精査後も約15-20%の不妊症は医学的に説明できない。

治療

【感染症スクリーニング(最優先・隠れた原因の除外)】Brucella canis 血清学(RSATでスクリーニング→陽性はAGID/試験管凝集/PCRで確認)を全不妊・受胎低下症例で必須実施。亜臨床性かつ届出義務のある人獣共通感染症のため、陽性雌はさらなる不妊精査より繁殖からの除外を優先。子宮内膜スワブの好気培養+子宮内膜細胞診(亜臨床性細菌性子宮内膜炎)。必要に応じCHV-1・マイコプラズマ/ウレアプラズマ検査。【診断】膣細胞診(keratinization度)& 血清progesterone serial(LH surge day 0→prog <3ng/mL, day 7→15-25ng/mL)。子宮卵巣超音波(排卵確認、形態異常検索)。卵管通通性検査(子宮卵管造影)。子宮内膜細胞診・培養。【排卵誘発】GnRH(Cystorelin 10μg IM)or hCG(1000IU IM)on day 5-7 post-LH surge。【ホルモン補充】Progesterone 25-50mg IM q24-48h × 28-30日(妊娠維持目的)。【交配管理】progesterone測定に基づく最適交配日の決定。複数回交配(day 3, 5, 7 post-LH surge)。人工授精の検討。【オスの評価】精液検査(濃度、運動性、奇形率)が重要。

予防

毎交配前に両親(雄雌)のBrucella canis血清検査を行い、新規導入犬は隔離・再検査することが予防の要(受胎低下の隠れた原因の排除+ヒトへの感染防止;Keid 2017)。健全な繁殖個体選定(検査基盤不妊症なし)。適切な交配管理(serial progesteroneでLH surge day +3-5が最適)。高栄養食・適正体重維持。子宮感染の予防・早期治療。高齢妊娠の回避(5-6才以前に繁殖終了推奨)。Reference: Concannon PW (2011) Theriogenology.

予後

原因依存。Brucella canis:治療は再発率が高く、感染犬は不妊手術し繁殖から除外するのが原則(妊孕性回復の予後は不良;Santos 2021)。亜臨床性細菌性子宮内膜炎:不可逆的な子宮内膜線維化に至る前に培養に基づく抗菌薬で治療すれば良好。排卵・交配時期の問題のみ:管理是正で60-80%受胎率。二次不妊(子宮内膜瘢痕化):妊娠率<30%。一次性卵巣機能不全:予後不良で避妊推奨。若齢初期治療が最良。

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