流行性カタル性腸炎(ECE)
概要
流行性カタル性腸炎(ECE、「緑色下痢病」):フェレット腸管コロナウイルス(FECV)による極めて伝染性の高い病毒性腸炎。急性発症の粘液性/緑色下痢、脱水、吸収不良で発症。重症度は年齢に依存:若齢/成蟲フェレットは自然治癒することが多い(5-10日);高齢フェレット(>6歳)は集約的支持療法なし下では頻繁に致死的。特徴的「緑色スライム」便は病的特異的。多頭飼育フェレット世帯・繁殖コロニーでの流行は一般的。
主な症状
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臨床徴候
フェレットにおける流行性カタル性腸炎の臨床徴候は消化管病変の部位と病態により異なる。上部消化管: 嘔吐・吐血・食欲不振。小腸: 下痢(小腸性: 量多・回数少・体重減少を伴う)・嘔吐・腹痛。大腸: 下痢(大腸性: 量少・回数多・粘液・血便・テネスムス)。急性腹症: 強い腹痛・嘔吐・ショック徴候・腹部触診で腫瘤や緊張感(GDV・腸捻転・腸閉塞)は緊急評価が必要。
原因
フェレット腸管コロナウイルス(FECV);ネココロナウイルスが交差感染する可能性あるが、FECVが主原因。便-口ルートで極めて伝染性高い;シェルター・ブリーダーからの新規導入フェレットが一般的な感染源。密接接触、食器共有、多頭飼育で急速感染。ストレス(輸送、環境変化、併存疾患)が感受性・重症度を増加。
病態生理
第1相(1-2日目):FECVが小腸絨毛上皮で増殖→粘膜腫脹・絨毛萎縮。第2相(3-5日目):上皮障害から腸管透過性増加;細菌易位の可能性。栄養/水吸収障害→分泌性・浸透圧性下痢(胆汁色素混在による特徴的緑色スライム)。第3相(5-14日目):若齢フェレット:免疫応答でウイルス排除;粘膜治癒で下痢消失。高齢フェレット:不完全な免疫排除・遷延性絨毛萎縮・慢性炎症・肉芽腫性/全身型コロナウイルス(FRSCV)への進行の可能性。激しい下痢相での電解質喪失(K+、Mg2+、Cl-);重度脱水時には代謝性アシドーシス。若齢フェレットの低血糖リスク。
診断
特徴的な緑色粘液便(「green slime disease」)と急性の食欲低下から臨床的に推定。RT-PCRで糞便中のフェレット腸管コロナウイルスRNAを検出。CBC・血液生化学で脱水(PCV・TP上昇)・電解質異常・肝酵素上昇を評価。腹部X線・超音波で腸管ガス貯留・腸管壁肥厚を確認。糞便培養で細菌性腸炎(Salmonella・Campylobacter等)を除外。高齢フェレット(>3歳)は重症化リスクが高く脱水・低血糖(インスリノーマ合併時GLU<60 mg/dL)に注意。新規導入個体からの感染が多いため飼育歴を確認
治療
支持療法が中心;特異的抗ウイルス薬なし。1. 輸液・電解質補充:皮下LRまたはバランス電解質液50-100mL/kg/日(2-3回に分割)。嘔吐が重度または脱水度>10%なら:IV液ボーラス50-60mL/kg/4時間、その後維持。尿量・粘膜色・皮膚ツルゴル毎日評価。2. 栄養補給:高カロリー回復食のシリンジ給餌(ダックスープ:加熱鶏胸肉+卵黄+フェレットキブル混合)q4-6h。カロリー摂取目標≥70kcal/kg/日。食欲回復まで看護継続。3. 消化器保護:スクラルフェート25mg/kg PO q8h(他の薬から1時間間隔で投与);保護バリア形成。代替:ファモチジン0.5-1mg/kg PO q24h(酸分泌抑制)。4. プロバイオティクス:ラクトバシラス/ビフィドバクテリウムサプリメントq24h(腸内叢復帰を促進;エビデンス限定的)。5. 隔離:発症後2-3週間の厳密隔離(便排泄は>21日続く可能性)。食器・水碗・清掃用具を分離。スタッフは動物間で手洗い。6. モニタリング:脱水・食欲・便頻度を毎日評価。入院24-48時間で血糖をチェック(特に若齢フェレット;<80mg/dLなら補充)。改善なければ48-72時間で CBC・化学再チェック。7. 二次感染予防:広域スペクトラム抗生物質(例:エンロフロキサシン5-10mg/kg PO q12h)は発熱/敗血症が疑わしい場合のみ;ルーチン予防ではない。
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予防
予防は隔離・飼育管理を介して: 1. 新規フェレット隔離プロトコル:2-3週間を別室で隔離(食器・水・寝具・飼育者専用)。ECE陰性証明(便PCR検査必須)迄は同居禁止。2. 繁殖コロニー管理:繁殖親を年1回コロナウイルス検査;可能ならECE陰性サブコロニー確立。3. シェルター/レスキュー慣行:来館フェレットを全て隔離;採用前2週間観察。採用者に伝播リスク教育。4. 世帯慣行:フェレットがECE発症なら即隔離。食器・水ボトル(漂白剤1:10液)を消毒。フェレット取り扱い間に手洗い。5. ワクチンは利用不可。6. ストレス軽減:可能ならハンドリング・輸送最小化。安定温度(65-75°F、18-24℃)・定期光周期維持。
予後
年齢に依存した予後。急性相は典型的に5-14日。若齢フェレット(1-4歳):適切な支持療法で>90%回復;死亡率<5%(重度脱水/二次的敗血症除く)。治療遅延(>48時間)で死亡率増加。成蟲フェレット(4-6歳):70-85%回復;死亡率10-25%。高齢フェレット(>6歳):積極的なICU級ケアなし30-50%回復;未治療例または遅発症例で死亡率50-70%。慢性保有者:感染フェレット5-10%が慢性下痢(数週~数ヶ月)で経過(ECE慢性型);高齢フェレットでFRSCV(肉芽腫型)への進行リスク(慢性感染の10-15%)。単純例での完全回復:下痢消失7-14日、食欲回復3-7日、体重増加2-4週。抗体持続低いため再感染可能性あり。
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