顔面神経麻痺
概要
片側性または両側性の顔面神経機能喪失で、耳・唇の垂れ下がりや瞬きの障害を引き起こします。
主な症状
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臨床徴候
犬における顔面神経麻痺の臨床徴候は罹患部位(前脳・脳幹・小脳・脊髄・末梢神経)により局在化所見を示す。前脳: 発作・行動変化・盲目・周徊・運動失調。脳幹: 脳神経障害・運動失調・意識障害。小脳: 企図振戦・低測定運動失調・広基歩行。脊髄: 四肢麻痺/対麻痺・排尿障害・反射異常(病変高位で異なる)。末梢神経: 筋萎縮・反射低下・遠位部優位の弛緩性麻痺。
原因
顔面神経(第VII脳神経)の機能障害による。犬では特発性が最も多い。ほかに中耳・内耳炎の波及、甲状腺機能低下症、外傷や術後損傷、腫瘍が原因となり、特発性前庭疾患と併発することがある。中高齢に多い。
病態生理
顔面神経麻痺は顔面神経(CN VII)の機能喪失により支配筋の麻痺を生じる神経障害。特発性(最多、甲状腺機能低下症関連を含む)、中耳炎波及性、外傷性、腫瘍性に分類される。片側性の口唇下垂・耳介下垂・瞬目不能・流涎が主徴で、角膜露出により乾燥性角膜炎を続発する。コッカースパニエル、キャバリアに発症報告が多い。特発性は3-6週で自然回復する例が多いが、角膜保護(人工涙液・タルソラフィー)が不可欠。
診断
顔面神経麻痺の診断は罹患側の耳介下垂、眼瞼閉鎖不全、口唇下垂、食物の罹患側からの落下から臨床的に行う。眼瞼反射消失、威嚇瞬目反射消失(視覚は正常)。シルマー涙液試験で涙液分泌低下(乾性角結膜炎の併発リスク)。MRIで顔面神経経路(内耳道〜顔面神経管〜茎乳突孔)の病変検索。中耳炎/内耳炎の合併を評価(CT側頭骨)。甲状腺機能検査。EMGで顔面筋の脱神経所見。原因:特発性(最多)、中耳炎、甲状腺機能低下症、腫瘍、外傷。鑑別:中枢性顔面神経麻痺(前頭部は保持)、末梢前庭疾患の合併。特発性は6-8週間で自然回復が期待される。角膜保護(人工涙液)が必須。
治療
基礎疾患の治療。特発性(最多):4-6週で自然回復の場合あり。中耳炎関連:適切な抗菌薬+中耳洗浄。甲状腺機能低下症:レボチロキシン(0.02 mg/kg PO q12h)。腫瘍性:外科/放射線。角膜保護が重要(閉瞼不能):人工涙液q2-4h、タルソラフィ(一時的瞼縫合)。ステロイド(プレドニゾロン0.5 mg/kg PO q12h短期)は炎症性に。
予防
犬における顔面神経麻痺の予防は原因病態によって異なる。感染性脳炎: 適切なワクチネーション(特に狂犬病・ジステンパー・FIP予防)と媒介動物制御。特発性てんかん: 遺伝性素因品種の繁殖管理。認知機能不全症候群: 知的刺激の提供、適度な運動、抗酸化サプリメント、SAMe等の補完療法。外傷性脳脊髄損傷: 交通事故・落下事故予防、適切な飼育環境。中毒予防: 環境管理。
予後
犬における顔面神経麻痺の予後は病因と神経学的重症度(特に深部痛覚の有無)により異なる。早期診断と病態に応じた適切な治療・モニタリングにより多くの症例で良好な経過が期待できるが、進行例・合併症を伴う例では予後が悪化しうる。
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