糖尿病
概要
猫の糖尿病は90%以上が2型(インスリン抵抗性 + 膵島アミロイド沈着による進行性β細胞機能低下)。症状: 多飲多尿、多食、体重減少、後肢の蹠行(糖尿病性ニューロパチー)。新規診断猫の25-85%で糖尿病寛解(remission)が達成可能 — これは犬にはない猫特有の特徴である。
主な症状
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臨床徴候
猫における糖尿病の臨床徴候はホルモン異常または代謝障害の種類により特異的パターンを示す。糖尿病: 多飲多尿・多食・体重減少。甲状腺機能亢進: 体重減少・多食・多動・心拍数上昇。クッシング症候群: 腹部膨満・脱毛・多飲多尿・薄い皮膚。アジソン病: 元気消失・嘔吐・下痢・電解質異常。低血糖: 振戦・痙攣・意識低下。早期は無症候性に進行することが多く、定期的内分泌スクリーニングが早期発見の鍵。
原因
90%以上が2型糖尿病で、インスリン抵抗性と膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)沈着による進行性β細胞機能低下が原因。リスク因子: 肥満(3-5倍リスク)、加齢(>10歳)、雄(2倍リスク)、バーミーズ種(遺伝的素因)、運動不足、グルココルチコイド投与、末端肥大症(hypersomatotropism — 猫糖尿病の25%、Niessen et al. JFMS 2015)、甲状腺機能亢進症、慢性膵炎、副腎皮質機能亢進症。
病態生理
猫の糖尿病は主に2型であり、インスリン抵抗性と膵島へのアミロイド(膵島アミロイドポリペプチド)沈着による進行性のβ細胞機能障害を特徴とする。慢性的な高血糖はグルコース毒性を引き起こし、β細胞機能とインスリン分泌をさらに障害する。持続的な高血糖は浸透圧利尿による多尿・多飲、多食にもかかわらず体重減少を引き起こし、未治療では糖尿病性ケトアシドーシスに進行する可能性がある。
診断
猫の糖尿病の診断は持続性高血糖・糖尿・フルクトサミン上昇の組み合わせに基づく。血糖値: >300 mg/dL の持続で確定的。猫はストレス高血糖(最大300-400 mg/dL)を呈するため単回測定では不十分。フルクトサミン: >400 μmol/L で過去2-3週間の持続的高血糖を確認(ストレス高血糖との鑑別に必須)。尿検査: 糖尿(閾値>300 mg/dL)、ケトン尿(DKA評価)。血液ガス: DKA時の代謝性アシドーシス。血液生化学: 高コレステロール、高TG、肝酵素上昇。膵炎合併の評価: fPLI。猫は2型糖尿病(インスリン抵抗性)が80-95%。好発: 肥満猫、雄猫、バーミーズ。ステロイド・プロゲステロン誘発性に注意。寛解(diabetic remission)の可能性あり。
治療
猫糖尿病の治療: ① 食事療法を最優先:高蛋白・低炭水化物処方食(PurinaProPlan DM、Royal Canin Diabetic、Hill's m/d 等。乾質量カーボ <12%)。② インスリン療法:プロジンク(PZI)0.25-0.5 IU/kg SC q12hまたはグラルギン 0.25-0.5 IU/kg SC q12h を第一選択。低用量から開始し7日毎に再評価。③ 血糖曲線(在宅Freestyle Libre連続血糖測定を推奨)で12時間最低血糖120-180 mg/dL目標。④ 寛解率20-40%(早期食事介入+グラルギン/PZIで最大化)。⑤ ベルガリフロジン(経口SGLT2阻害薬、AAHA 2023承認)は新規ケトーシスがない症例で代替選択肢。ストレス高血糖との鑑別にフルクトサミン(>400 µmol/L)またはHbA1c使用。DKA合併時は規ュラーインスリンCRI 0.05-0.1 IU/kg/h IV+K補正+輸液で集中治療。AAFP/ISFM 2022 ガイドライン参照。— 猫の第一選択(最高の寛解率、Roomp & Rand JFMS 2009)。代替: プロタミン亜鉛インスリン(ProZinc) 0.2-0.5 IU/kg SC q12h、デテミル(レベミル) 0.25-0.5 IU/kg SC q12h。【食事療法(寛解の鍵)】 高蛋白・低炭水化物食(炭水化物 <12% ME)— Hill's m/d、Royal Canin Diabetic、Purina DM等。Bennett JFMS 2006: 低炭水化物食 + インスリンで寛解率68%(高炭水化物食41%)。【新規SGLT2阻害薬(2022-2024 FDA承認)】 ベクサグリフロジン(ベクサキャット®、Bexacat) 15 mg/匹 PO q24h、ベラグリフロジン(センベルゴ®、Senvelgo) 1 mg/kg PO q24h — 新規診断・非ケトーシス猫に対して経口投与で血糖管理可能(インスリン不要)。ただしDKAリスクあり — ケトン体監視必須、既存ケトン症例には禁忌。【血糖モニタリング】 12時間血糖曲線 q1-2週間(安定化期)、目標nadir 80-150 mg/dL。フルクトサミン q2-4週間(目標 <450 μmol/L)。FreeStyle Libre フラッシュグルコース測定(連続血糖測定)が普及 — Corradini et al. JVIM 2016で猫での精度・有用性を確認。在宅血糖測定(耳穿刺)を強く推奨。【寛解誘導戦略】 早期の積極的血糖管理(診断後6ヶ月以内)が寛解率を最大化。寛解の徴候(持続的低血糖傾向)でインスリンを段階的に減量・中止。Somogyi効果(インスリン誘発性高血糖)の鑑別に注意。【併発疾患の検索】 末端肥大症(IGF-1測定 — 猫DMの25%)、膵炎(fPLI)、甲状腺機能亢進症(T4)、副腎皮質機能亢進症の除外。【DKA移行の監視】 嗜眠、嘔吐、アセトン臭、尿ケトン陽性 → 緊急対応。
予防
適正体重の維持(肥満は最大の修正可能リスク因子で糖尿病リスクを3-5倍に増加)。定期的な運動。不必要なグルココルチコイド使用の回避。7歳以降の年次シニア健康診断。素因を持つ品種(バーミーズ)のモニタリング。
予後
適切な管理下で予後良好。寛解率25-85%(早期診断 + グラルギン + 低炭水化物食で最大、Roomp & Rand JFMS 2009)。診断後の生存期間中央値17ヶ月(Goossens et al. 1998)— ただし現代の管理法により大幅に改善。永続的糖尿病でも1日2回インスリン + 食事管理で長期管理可能。
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📚 参考文献
Based on articles retrieved from PubMed
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